さぁ、次の問題は?

「征十郎くん!お迎えに上がりましたーっ」

まさに天真爛漫という言葉が似合う笑顔でオレの名前を呼ぶ。何故ここまで無邪気にオレに懐いてくれるのだろう。


「図書室へ移動しようか」
「うん、勉強といえば図書室だよね!」
「……そうだね」


勢いに少し圧倒されながらも廊下を肩を並べて歩く。オレと同じか少し小さいくらいの身長。苦手な科目について話すその横顔を盗み見れば、彼を初めて見た時みたいに視線を離すことが出来なくなって、「ん?征十郎くん?」と首をかしげる姿に何とも言えない気持ちになった。この心のざわめきを言葉で表現することが出来なくて、ただ一つ言える事は、美しいものは人を惑わす。ということだ。


テスト直前ということもあり図書室には勉強に取り組む生徒達が比較的多くいた。


「ここでいいかな?」
「うん、ぽかぽかで気持ちいい」

窓際の陽が当たる席に向かい合う。まだ綺麗な問題集を取り出して、少しだけ嫌そうに眉が動いた。

その後は彼がわからないと言う問題を理解してもらえるように噛み砕いて伝える。教科書に書かれているような難しい表現をやめて、優しい言葉で伝えれば割りとすぐに納得している様子だった。


「ねぇねぇ」
「どうした?」
「結構前から思ってたんだけど、視線痛くない?」
「あぁ、薄々感じてはいた」
「やっぱ征十郎くんって目立つんだね」
「橙田を見ているんだろう」
「え、絶対征十郎くんだよ」

夕日に照らされて綺麗なオレンジが輝いて、その白い肌がさらに際立つ。問題集に落とされた視線のせいかまつ毛の長さがよく目立つ。そんな橙田に目を奪われない訳がない。


「さぁ、次の問題は?」


自分の訴えを認めてもらえず少し不満そうなのを無視してそう告げれば、また君は問題に夢中になる。その姿を見ていてオレの問題集がまっさらなことにきっと君は気付いていない。