その前もこの先も
俺とヒカリは物心ついた頃から一緒にいる。それが今となっては当たり前になっちまってて、まぁ幼馴染ってやつだ。
俺らがまだアカデミー生だった頃、母ちゃんからヒカリの一族が全員亡くなったと聞いて、血の気が引いたあの感覚は今でも忘れられねぇ。ヒカリだけ生き残ったって知って安堵のため息が漏れた。幼かった俺はヒカリが無事でよかった。そう思うことしかできなかった。
後日、ヒカリの病院へ向かった。どうやら数日眠りっぱなしだったらしいし、その後も検査やらで面会は一切出来なくてよ、こんなに会わねぇのは初めてじゃねぇかってくらい。
ベッドに座っているヒカリは、多少顔色は悪い気がしたけど、そこまで変わらねぇな、と思った、はずだった。
「ヒカリ、起きてて大丈夫かよ」
「……?」
言葉も発せず、首を傾げている。
「ごめんなさい、誰……っすか?」
愕然とした。
毎日のように一緒にいたヒカリが、俺がわからねぇなんてことある訳がねぇ。悪い冗談だと思いたかった。「シカマル騙されててだせぇっすね」なんて言うんじゃないかって、その言葉を待ってるっつうのに。
立ち尽くしちまった俺は、三代目が後ろにいることにも気付かずに、混乱する頭を整理しようと必死だった。出来るはずもねぇのによ。
"ヒカリは記憶喪失"
三代目がゆっくりとした口調で俺にその事実を告げて、ただそれを簡単に理解できるほど、冷静な思考でいられるはずもねぇ。
「何も覚えてねぇのか……?」
「どうやら事件の記憶は鮮明に覚えているようじゃが、それ以前のことはさっぱりらしい」
全部、忘れちまったっていうのかよ。一緒に雲を眺めたことも、授業めんどくせぇーってサボったことも、お前と姉ちゃんが喧嘩した時、泣いてるお前を迎えに行ったことも、全部、全部。
「あの、ごめん。名前、なんすか……?」
「シカマル、だけど」
「シカマル……なんでかわかんねぇですけど、なんか懐かしい響きっすね」
「!」
俺だけだったってよ。記憶をなくしてから懐かしいって感じたのは。それに辛くも嬉しくもあった俺は、どうやら重症らしい。
「当たり前だ、ずっと一緒にいたんだからよ」
「ずっと一緒……」
「そんでこれからもだ、忘れちまった分取り返せるくらい、一緒にいてやるからよ」
「!」
そん時の驚いたような嬉しそうな、あいつのアホ面はいつまで経ってもたまに浮かんでくるんだよな。特に寂しそうな顔してっとよ。
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