街コンの帰りに出くわす◎


「おう、○○やん」「……あ、噂の宮侑くんだ。久しぶり」「なんや噂って。イケメンで噂のやろ」街コンの帰りにばったり会ったのは、私が転校して通っていた稲荷崎高校時代の同級生だった。かつて好意を寄せていたこともあったが、数年前のことなのにすっかり昔のことのように感じる。テレビで見かける彼は別世界の人のように感じていたけれど、いざ会って話すとそうでもなかった。侑本人は高校時代のまま。「可愛え格好やのに疲れた顔しとんな」息するように褒めるじゃん、びっくりした。ほんとに侑か?「あー友達と街コン行った帰りで」「……え、街コン?今○○彼氏おらんの、結婚相手探しとるん?」いや恥ずかしいからそこに食いつくな。「まあ……彼氏はしばらくいないかも。いい人いたらラッキーくらいで行ってみたけど今回は残念な感じかな」「……ここにおるやん」「え?」手首を掴まれ彼の方へと引き寄せられ顔がぐっと近づく。「ええ男ならここにおるやろ」「え、あつ」「ずっと好きやってん」その距離の近さと突然の告白ともとれる言葉に心臓が駆け足で動いた。



孤爪
「不発だった……初めての街コン」街コンというノリがわからず、気が合いそうな人も見つけられないまま終わってしまいとぼとぼ帰るところだ。「○○?」「あ、研磨。外出てるの珍しいね買い物?」「……まぁそんなとこ、きみは」「今ねー……街コンの帰り」研磨の目が思い切り開いたような気がしたけど、気のせいだろうか。「や、気の合いそうな人って数時間で分かるものじゃないね」はは、と笑えば彼が私の頬に手を添える。「もう行かないで」「……へ?」「おれなら気、合うんじゃないの」「いやまあ、お互いオタク気質だし気兼ねなく話せるけど……」正直そういう風になれたらな、なんて考えてたこともあった。でも、彼の隣は居心地が良すぎてそれ以上は踏み込まないようにしていたのかもしれない。関係が崩れたら嫌だからと。でも改めて言われると……研磨ってこんなに背高かったっけ、思っていたより手が大きいななんて思考に陥ったら、彼から目が離せなくなる。「そんなのに行かないでさ、おれにしてよ」そう目を細めて切なく笑う研磨に落ちるまで、あと数秒。



及川
「や、これから予定があって」『じゃあそこまで送ってくよ。ね?』予定なんかないから。精一杯の優しさを見せながら拒否してるのをわかってほしい。「ごめん、待たせたね」「及川、くん?」なんてベターな、とも思ったが渡りに船とはこのことだ。「大丈夫だよ」「こっちの人は?」『……っ、冷やかしで参加するんじゃねーよ!』前触れもなく現れた彼を見て諦めたのか、怒って行ってしまった。まあこのイケメンを前にしたら大抵の人は敵わないよね。「ありがとう及川くん、久しぶり。こっち戻って来たの?」連絡は取っていたものの、彼は海外にいると認識していたので今ここにいることに驚いた。「一時的にね。で、何参加って」「あー、街コン」「街コン!?ちょっと待って一旦冷静になろう」「私はいたって冷静だけど……」「だって俺○○ちゃんの彼氏になる気満々だったんだよ!?」「……え、は?」思いもよらない言葉に開いた口が塞がらない。「もっと頼りがいのある男になってからって思ったけど……」及川くんは私の手を取って優しく握る。「どこの馬の骨かもわからないやつより、俺にしよ?」



国見
『今彼氏とケンカしてるんでしょ?気分転換に面白いとこ行こうよ!』……なんて友達に連れてこられたのはまさかの街コンで、全く気分転換になんてならなかった。ただ疲れと後ろめたさが募っただけだ。まだ途中だけど友達を残し逃げるように会場から抜け出した。もちろん声はかけてきたけど。……そもそもケンカはしたけど英と別れるつもりもないし。蒸し暑い会場から一転、ひんやりとした空気が頬を撫でぶるりと背中を震わせた。「はあ、帰ろ」「……どういうこと」「……英っ!?」後ろから急に腕を掴まれ、驚いて振り向けば数日振りの彼氏の姿。「どういうことって聞いてるんだけど」「何が」「……さっき、街コンの会場から出て来たでしょ」やばい、見られていた。でも結局途中で離脱したし、やましいことは何もしてないけれど。「そうだけど連れてこられただけで別に何も……っ」間近に感じる彼の香りに驚いた。こんな公衆の面前で英の腕にすっぽり収まるなんて思ってもみなかったから。いつもの英なら絶対、しない。「ごめん。俺○○のこと離す気ないから」