黒尾
「は?」「う゛、そんなガン見しないで」「それはシャワー浴びてバスタオル一枚の今言うセリフじゃありません」「ごめんて。……やっぱ重いよね」処女が重いなんてよく聞く話。だから言いたくなかったけど、手練れであろう鉄朗に隠しきれる自信がなかった。でも目を見開いて驚く彼を見たら言わない方がよかったんじゃないかという感情がふつふつと湧いてくる。「……こっち来なさいよ」彼は自分の膝をトントンと叩く。おずおずと近づくと、彼の膝の上に向かい合って座らせられた。「好きな子の初めてをもらえるって、すごーく嬉しいことだから」何の記事を読んだかはわからないけど、とそこまで見透かされている。「〇〇のえっちな顔は俺だけで独占させてもらいマス」胸に顔を埋め、上目遣いでこちらを見る彼に心臓が壊れそうなくらい脈打っている。
孤爪
「そう」「……それだけ?」意を決して伝えたのになんだか拍子抜けしてしまった。「だっておれもだし」「研磨、も?」「知ってるでしょおれの性格」飄々と告げる彼とは裏腹に"そういう研磨"を知るのが私だけだと思うとなんだか嬉しくて。最初に抱えてた不安は少しだけ小さくなった。「それで、何を気にしてたの」「……痛いかなとか、下手くそって思われたらとか考えたら不安になっちゃって」あはは、と笑って誤魔化す私の顔を彼はじっと見つめる。「……大丈夫」前髪を寄せ、おでこに唇が触れた。「おれも知識としてしか持ってない、だから少しでも〇〇が痛くないように準備はしたよ」「……ありがと、研磨」優しく抱き締めてくれる彼の体温に不安は溶けて、一緒にベッドへと沈んだ。
灰羽
「まじ!?」「……まじだよ」なんでらんらんとした目でこちらを見るのか。こっちは一世一代のカミングアウトだというのに。「嬉しいなー初めては俺だなんて」「うわ、経験ないのかよって思わなかった?」「全然。だって他の奴は〇〇のやらしー顔知らないってことでしょ?」「言い方」「……俺だけしか知らない顔、早く見せて欲しい」ぎらりと獲物を見つけた猫のような目で、押し倒される。「り、リエーフ……だから、あの、痛くしないでね」「う゛……その言い方は狡い、抑えがきかないかも」「え」リエーフは自分の胸元をぎゅっと掴んで悶えている。「……なーんて。大切な〇〇の初めて、優しくするからな」そう言って、頬にキスを落とした。
及川
「ちょっと待って」口元を押さえ目を逸らす彼を見て、伝えたのは失敗だったかもしれないと考えがよぎる。いつものように軽く流してくれる、そう思っていたのでこの反応は予想外だった。「ご、ごめん……やっぱ嫌だよね、いまだに経験ないなんて」複雑な気持ちを押し殺してそう告げると、彼は慌てた表情でこちらへ振り返る。「え?何を勘違いしてるのかわからないけど違うよ」「……え」ベッドに腰掛けていた私を優しく寝かし、覆いかぶさるように跨る。「嬉しいんだよ。俺を見るこの目も、唇も、これから見せてくれるあられもない姿は全部俺だけのものでしょ。……嬉しい」髪を掬って口付ける。「だから、〇〇も俺だけを見て、夢中になって」
二口
「へぇ」「恥ずかしながら、ですね」「何を気にしてんの」「いやさ、引くとか重いとか記事で見たわけですよ、私も」「で?」「かと言って堅治相手に手練です!なんて言っても秒でバレるじゃん」「ぶはっ、お前が手練れとかないわ」それは流石に酷過ぎないか。言わないけど。「だからあの……どうすればいいのかわかんないので、そこはご了承願いたく……」「はぁ?」何言ってんだと言う顔で顎を掬われる。白状したのに何故ガンをつけられているのか。「いいんだよ、〇〇は俺に流されとけば。経験あったってなくったって、主導権握らせねーし?」そう意地悪く笑い、深く唇を重ねた。
北
「そうか、俺もや」「信介も?……一気に力抜けた」「そんな緊張することないやろ」「こんな歳まで経験ないのかって思われないか心配で」「俺やて〇〇と付き合うまで知識はあっても興味はあらへんかったしな」「信介、って感じだわ」「なんやそれ」そう言って笑う彼を見ていたら、先程まであった緊張は溶けてなくなった。「俺も自信があるわけでもないし、実際してみんとわからん」「……うん」大きな手が、小さい子を宥めるように私の頭を撫でる。「でも、二人で一緒に気持ち良うなろな」「ふふ、そうだね」頭を撫でていた手は背中に回され、それが合図のように優しく押し倒された。
侑
「先に言うとけやー!」「だから今、言ったじゃん」「こんな寸前に言うことないやろ」「や、だってこんな歳まで経験ないとか恥ずかしいし……」引かれるとやだなって思って言わなかったけど、寸前になって未知の世界が少しだけ怖くなってぽろりと口から出てしまった。「ごめん」「まぁ言うてくれてよかったわ」「引いてない?」「引くわけないやろ」「そっか」少し、安心した。「言われんかったら抱き潰そう思うてた」「抱き……っ!?」その言葉を聞いてヒュッと息を呑んだ。前言撤回、誰だ安心なんて言ったのは。「まぁ初めてでもそうやなくても」優しく私の髪を梳いてから、後頭部に手を回し唇を重ねた。「俺なしじゃ生きていけへんくらい丁寧に、大事に抱いたるわ」
治
「それで、どうして欲しいん」「どうも……というか、少しびびってる」「そ」ベッドの淵に腰掛け、おいでおいでと手招きする彼に近づく。すると突然手を引かれ、驚きから何もないのに躓いてそのままベッドにダイブした。「……っちょ、何すんの!」「ははっ、緊張は解けたん?」「いや今別の意味で心臓バクバクしてるわ」「そらよかった」ギシ、とベッドに乗り、治は私へ覆いかぶさるように押し倒した。「なーんも怖いことあらへん」そう言って頬を撫でる彼の手があたたかくて、優しくて、安心する。「無理にも痛くもせん。もし嫌やったらちゃんと言うてや」瞼に軽く唇を落とす彼へと身を委ねた。