影山
『もう帰っちゃうの?』「彼氏が近くまで迎えに来てるから」『え、見たい!』「だめでーす」『お前の彼氏どんだけイケメンなんだよ』「少なくともあんたみたいに軽くはない」『ひでぇ……』『どんまい』居酒屋を出ると、そのすぐ脇に人だかりができている。そこから頭ひとつ覗かせている人物に思わず二度見した。「ちょ、飛雄!?」「あ、終わったのか」「いや待って、なんでここにいるの!?」「待ち合わせ場所忘れて、すまん」忘れたならメッセージ送りなさいよ!『……え、〇〇の彼氏って影山飛雄?』『マ?』既に飛雄を囲んでいるファンだけでなく、私の友達までざわつく始末。こうなるから人気の少ないところを指定したのに……!ファンの子の隙間を縫ってするりと飛雄のとこまで辿り着く。今ばかりは小柄なことに感謝した。彼の手を握りすみませんと言いながらその場を抜け出す。「こうなると思ったから待ち合わせにしたのに……」「すまん。でもよ」「なに」「そのお陰でさっきいた男には牽制できただろ」なんて口角を上げ言う飛雄。偶然なのか狙ってしたのかが解らず、私は口をはくはくさせるしかなかった。
治
同窓会に出るべく、治との小旅行を兼ねて久しぶりに東京へと足を運び、懐かしい顔ぶれを前に思い出話に花を咲かせた。「じゃあ彼氏と待ち合わせしてるから私はここで」『え、彼氏どこ?』『私も気になる、イケメン?』「えーふふ、かっこいいよ」『んだよ、ワンチャンあるかもって思ってたのに』「彼女いるのに最低だな」『いやいやお互い別れたらな?残り物同士付き合おうぜ』『こいつの彼女超可愛いのにこの調子』「お前は……まぁ、私は」「別れることなんて今後一切あらへんから」突如ずしりと肩や背中にかかる重みに思わず見上げた。タイミングがいいのか悪いのか、むっとした顔の治が後ろからすっぽりと私を抱きかかえている。「わぁ……治」「絶対別れへん結婚するんやもん」「わかってるわかってる」そんなことを口にする治が珍しくて、両手を上げて頬を挟んだ。「結婚までしてくれるしてくれるみたいだからごめんね」『……ッス』「じゃあまた」『こいつは絞めておくから安心してね、ばいばーい』ビビってる男友達を横目にその場を後にした。先程の言葉を思い出し、自然と上がる口角を抑えられることができなかった。
及川
三次会の話をしている中、どうしようかぼんやり考えていると突然後ろから腕を掴まれ思わず振り向いた。「なに……ちょ、え、なんでいるの?」「いちゃ悪い?」その手の主は今ここにいる筈がない彼。「びっくりさせようと思ってたのに、連絡はつかないし家にはいないし」「……あ、ほんとだ連絡きてたごめん。ってか何でここが」思い当たる節があり徹と反対側を向けば、こちらを静観する彼。「国見?」「……知らねー」「まだ何も言ってないんだけど!」逃げようとすると国見の服の裾を鷲掴みにする。「ちょ、服離せ伸びるだろっ」「なんで逃げるの」「はいはーい、〇〇は俺と行こうね。じゃあ連れて帰るからあとはよろしく国見ちゃん」徹の力により強制的に手を離され、連れて行かれる。「……ごめん」「どうしたの徹、感情の起伏がすごい」「……ほんとバカなんだけど。〇〇が楽しそうなところ見たら、離れてる俺なんか忘れられるんじゃないかって変に焦ってさ」力のない声でそう言って、私の肩におでこを乗せる彼。「あーかっこわる」「ふふ、そんなこと言うなら早く私も連れて行ってよ」徹の頭を撫でながらそう言えば「……今すぐ攫いたいくらいだよ」と後ろから優しく包まれた。
二口
"もう少しで二次会も終わるみたい"とメッセージを送れば"こっちもそろそろ着く"と返ってきた。幹事の人にお金を送金した人から順に外へ出て、みんなが集まるのを待つ。『次行く?』「私はもう帰るつもりだよ」「おー、みんな久しぶり」聞き慣れたその声に振り向けば、堅治の姿が目に入った。どうやら一旦帰宅して着替えてから来てくれたらしい。『今から一緒に行くか?』「あー俺そいつ迎えに来ただけなんだわ」横目でこちらを見る彼の隣まで行き、袖を掴む。「堅治お疲れ」『は、お前ら付き合ってたの!?』『〇〇言ってよ!』「ごめんごめん」『えーどこが好きなの?』「好きなの?」ニヤニヤしながら聞いてくる友達に、堅治まで悪ノリをする。「……顔」『他には?』「顔」「俺顔だけ!?」「もういいから、帰るよ。じゃあまた集まろうねー」堅治の袖を引っ張り、逃げるようにその場を後にした。ちらりと隣を見上げれば、拗ねて唇を尖らす彼。それがなんだか可愛くて、思わず笑ってしまう。「何笑ってんの」「んー、可愛いなと思ってさ」「はぁ?それはお前だろ」思わぬところで不意打ちをくらい言葉が出てこない。顔だけじゃなく、彼の可愛いところも優しいところも全部好きだけど。見えないところは全部私だけの秘密だ。