オタク女子と侑の話11

告白からもう四日が過ぎた。今のところ私がシフトに入っている日に彼の家はお弁当を買いに来ていない。
そして私の答えはいまだ決まらないまま。……誰かに聞いて欲しいけど、こんな我儘で矛盾した考え恥ずかしくて言えない。ソシャゲにも身が入らないまま日だけが過ぎていった。

『どうしたん、元気ないんとちゃう?』
「え、私めちゃくちゃ元気ですよ」
『そんならええけど……帰りお弁当持って帰り。おばあちゃん特製の作っとくわ!』
「いいんですか?作ってくれるお弁当全部美味しいから嬉しいです」
『せやろ』

もう少しで勤務も終わりの時間、おばあちゃんから元気がないと言われ驚いた。モヤモヤしているだけで、決して元気がないわけではない。でもそう見えてしまったのであればお弁当のレジをしている以上気を引き締めないと。
気合いを入れ直し、丁度開いた扉の方へ元気に声をかけた。

「いらっしゃいませー」
「よかった、まだ弁当残っとる」
「お、治くん」
「……ツムならここにはおらんで」

元気に挨拶をすればそこに入って来たのは治くん。今侑くんに会ったら気まずいと、彼の後ろをちらりと確認したが誰もいない。それに気づいてか、侑くんはいないと聞くよりも先に教えてくれ胸を撫でおろした。
……この状況を作り出したのは自分なのに、少し寂しいと思っている自分もいる。本当に矛盾してばかりだ。
治くんはすぐにお弁当を選び終わり会計をする。ありがとうございましたと袋に入れたお弁当を手渡そうとすれば、受け取る直前にピタリと止まった。

「なぁ、今日何時に終わる?」
「もうすぐだけど」
「待っとるから、ちょっと付き合うて」

そう言って私の返事も聞かず、お弁当を受け取り外へと出てしまった。
恐らく侑くんのことだろう。あれから時間も経っているのに連絡すらないから、もう告白の返事なんて要らないと言われてしまうのだろうか。
それとも私のことを好きだったのは勘違いだったと治くん伝いで言われてしまうのだろうか。そんなネガティブなことばかりが脳裏を過る。

間もなく終業時間になり、おばあちゃんから『いっぱい食べて元気を出しや』とお弁当を渡された。私の大好きなものばかり入れてあるからねと。お礼とあいさつをしてその場を後にした。
外に出るとガードパイプに腰を掛ける治くんが目に入る。何を言われるんだろうと、心臓がどくどくと大きく音を立てた。緊張が伝わらないよう、深く息を吸って彼へ声をかける。

「ごめんね、待たせちゃって」
「別に、俺が一方的に言い出したんやし」

治くんは私を見るとすぐに腰をあげ、駅まで送ると言って歩き出した。
思い返せば彼と二人で歩くのは今日が初めて。どちらかと言えば普段は物静かに見える治くんだけど、侑くんと喧嘩をする時は思わず「双子だ……」と呟いてしまうほど似ているのに。今この瞬間、雰囲気は全然違うんだと改めて感じた。

「なぁ、俺が聞くことやないって重々承知やけど……聞いてもええ?」
「侑くんのこと、だよね」
「おん、もう気持ちは決まっとるん?」
「……どうしたらいいか、わからなくて」
「あんたらの雰囲気見て、ツムが告白する前から答えは決まっとる思うてたけど」
「はは……そう思われても仕方ないよね」
「何が引っかかっとるん」

歩きながらもじっと私を捉える、侑くんと瓜二つな瞳。ずっと誰かに相談したかったこと、治くんにならとおもむろに口を開いた。
最初は警戒心を持っていたのにいつの間にか侑くんと話すのも楽しくなっていて、好きだと自覚する前から彼を好意的に思っていた。
でもバレーしているところや応援されているところを見て、隣に立つのが本当に私でいいんだろうかと思っているのが正直なところ。かといって他の女の子と侑くんが付き合うところなんて見たくなくて。矛盾しているとはわかってはいるけど、どうしていいかわからない。
そう口にすれば、私の話を遮ることなく治くんは黙って耳を傾けてくれた。
改めて言葉にすると、こんなにうじうじして恥ずかしいと今更ながらに思う。

「……そんなん、もう答え決まっとるやん」
「え?」

思いがけない言葉に顔を上げれば、治くんは呆れたように笑っていた。