その後の試合も夢中で応援し、気が付けば全試合が終わっていた。普段は殆どスポーツ関係は見ることがないけれど、知っている人が出ている試合は見ていて楽しかった。
侑くんや治くんのコンビネーションには驚かされたけど、他の人の力強いスパイクやブロック、先ほど話した主将のレシーブのフォームの綺麗さにも見惚れる。普段の生活とはかけ離れている今日だったけれど、すごく充実した一日になった。
侑くんはちょっとした大会、なんて言っていたけどそれでも優勝はすごい。先程まで沢山いたうちわを持った女の子たちは既に応援席からいなくなっていて、彼らの元へと向かったのだろう。一言おめでとうと伝えてから帰りたかったけど、ミーティングとかファンの子たちに囲まれるであろうことを考えると難しそうだ。
「……帰るか」
"優勝おめでとう!"と喜ぶスタンプを送り、荷物を持って応援席から立ち上がる。階段の手前まで行くとすぐにメッセージの通知が鳴った。
"今日現地解散やから体育館脇のベンチで待っとって"という彼からの連絡。……迷惑じゃないだろうか、ファンの子たちに囲まれているんじゃないだろうかという心配はあるけれど。おめでとうと直接伝えたかったので"OK"のスタンプを送り外のベンチへと向かった。
体育館を出ると、恐らくうちわを持っていたであろう侑くんたちのファンの子が脇で待っていて。やっぱり帰った方がいいんじゃ……と思いながら彼女たちと反対側にある少し離れたベンチへと腰をおろした。
カチカチ、と買ったばかりのペットボトルのお茶を開け半分ほど一気に流し込む。喉が乾いたのにも気が付かないくらいに夢中になっていたようだ。足をぷらつかせながらいつ来るんだろうと玄関の方を見て待つも、出てきたところであの女の子たちに囲まれる筈。……多分こっちに来るまでもう少しかかるだろう。
「ゲームでもしてよ」
回復したAPを消費するため、スマホのアプリを立ち上げた。
―――――……
十数分経っただろうか。「お疲れ様ー!」と黄色い声援とも呼べる声が響き、もしかしてと顔を上げれば予想通り彼らの姿。そこへ待っていましたとばかりに女の子たちが駆け寄る。先ほども実感したけれど遠くから見てもわかる、整った顔の集団であると。
「す、すご……」
可愛い女の子たちに囲まれている侑くんや治くんたちは、手を振ったり「応援ありがとな」なんて声をかけたりしていて本当にアイドルみたい。今日一日試合を観戦して、昔から侑くんたちを知っている子がやっぱり少しだけ羨ましくなった。……あそこに行ったところで、私が入る隙なんてないから。時間は巻き戻せないし、こんなこと思ったって過去が変わるわけでもないのに。そんなもやりとした気持ちが滲むのを誤魔化すようにスマホへと視線を落とした。
「―――……わっ!」
「うわっ!……あ、あつむくん」
「わはっ、全然気づかんかったな」
後ろからおどかされて心臓止まるかと……。またスマホを落としそうになったが、今回は無事ショップ行きを免れた。後ろを振り返ればケラケラを笑っている彼。試合の時と同一人物とは思えない、私がよく知っている侑くんだ。
「そんなに笑わなくてもよくない?」
「いやそんなびっくりすると思わんやろ」
笑いすぎて零れる涙を指で拭いながら私の隣へと座る。顔を上げて体育館の入口の方を確認すれば、もう人は散って選手がちらほらいる程度になっていた。……まぁ、そうじゃなきゃ私のところになんて来れないよね。でもようやく言える、とついさっき自販機で購入したスポーツドリンクを侑くんに渡して伝えた。
「侑くん、優勝おめでとう。直接言いたかったから、伝えられてよかった」
「もらってもええの?ありがとう。差し入れもほんま美味かった、サムなんか一瞬で吸い込んどったわ」
「あっはは、想像つく」
ほんまは全部独り占めしたかったくらいやけど、なんて侑くんは口を尖らせた。でもそれを聞く限り不味くはなかったんだと胸をなでおろす。
そして今度は表情が一転し、私を真剣な顔でじっと見つめる彼に心臓が跳ねた。
「でな、試合見に来てくれたら言おうと思ってたことがあるんやけど」
「……?どうしたの」
目が合ったと思ったら目線を逸らし、考えるより先に言葉に出してしまうような彼が珍しく言い淀んでいる。その様子を見て何か悪い知らせだろうかと少しの不安が胸を過るも、彼の言葉を待つしかない。
「あんな、俺〇〇ちゃんのこと好きや」
「……え」
逸らした視線をまた私の方へ向け、耳まで赤く染めそう紡いだ侑くん。自分が予想していたものとかけ離れたセリフに、思考回路が停止する。
「付き合うて欲しい方の、好き」
それをわかってか、侑くんはゆっくりとそれを繰り返した。じわじわと込み上げる熱と彼の視線に、私はそのまま侵食される。