「ねぇ、聞いて」
「‥なに、また惚気?部活行くとこなんだけど」
「違うよ!徹のばーか」
「へーえ、そんなこというなら聞いてあげない」
「嘘です、ごめんなさい。部活行く前に少し聞いてください徹センパイ」
珍しくしょんぼりしてきたから惚気ではないとわかっていたけど、俺にくるってことはきっと岩ちゃんに関することだろうと予想して少し意地悪をした。
「岩泉君からね、」
ほら、案の定岩ちゃんの事だ。##name_1##の口は岩ちゃんの名前とノート見せてくらいしか言えないのだろうか。
「最近、練習見に行ってるでしょ?」
「そうだね、たまに視界に入る」
「練習、近くで見るなって言われた‥」
「あんまり見られると恥ずかしいんじゃない?」
「わかんない‥」
もしかして、こんな私が彼女だって周りから思われるのが恥ずかしいのかな、なんてことまで言い出した。割と本気でへこんでいるらしい。
そんなこと言われても、ずっと一緒だからって岩ちゃんの気持ちの全てがわかるわけじゃないし予想しか言ってあげることができない。
岩ちゃんはああ見えて恥ずかしがり屋だから、ただ単に好きな人から間近で見られるのが恥ずかしいと思っている節は大いにあるだろう。
##name_1##が彼女だと恥ずかしい、なんて一ミリも思っていない筈だ。
いつもはお花畑みたいな脳内してるくせに、なんでこう変なところでネガティブなのだろう。
「わかった、じゃあ今日部活中様子見てみるよ」
「徹‥ほんと神様ありがとう」
「牛乳パンね」
「う‥や、安いものさ‥」
「じゃあ今日わざと近くで見てて」
「え、嫌われないかな‥」
「それはない、岩ちゃんと親友の俺が保障する」
そう言い残して俺は教室を後にした。
それから何事もなく部活をして。##name_1##が近くで見学していても特に岩ちゃんに変わった様子もなかった。
「もう一本、渡っちトス!岩ちゃん行くよー」
「はい!」
「おうっ」
俺が軽くサーブを出し、国見ちゃんがレシーブ、渡っちの後衛からのトス練習からの岩ちゃんのスパイク練習。ちらりと##name_1##を見ると、岩ちゃんが打つのを聞いてわくわくしているようだった。(ちょっと悔しい)
「あ、すみません少し短いです!」
「っらあ!」
少しのずれも気にしないと言ったように、岩ちゃんのスパイクは力強くこっちのコートへ叩きつけられた。‥と思ったのもつかの間で。
岩ちゃんの打ったボールは此方のコートへ転がっているボールへ当たり、予想もしない方向へ飛んでいった。
その勢いのあるボールの先には##name_1##が立っていた。
やばい、と思うより先に体が動いていて。ギリギリのところで##name_1##にぶつかるのを回避することができた。
「‥大丈夫?」
「お、おお‥びっくりしたけど大丈夫。ありがとう」
「岩ちゃんに見とれてるからでしょ?」
「う、うるさいなぁ!」
岩ちゃんは柄にもなく焦っているように見えた。
あぁ、そうか。
そんな岩ちゃんを見て気が付いた。
##name_1##に練習を近くで見るなっていう理由。
「わかったよ」
「なにが?」
「岩ちゃんは近くにいるとこういう風に流れ球がよく飛んでくるから、近くで見ないでって言ったんだよ」
「それって、」
「そ、##name_1##をケガさせないためにね。今はたまたま俺が止められたけど、いつも誰かが止めてくれるとは限らないし」
「そ、そうだったんだ‥」
「愛されてんじゃん?」
「‥ありがと、徹」
「‥。はいはい、じゃあ少し離れて見てて。岩ちゃんにはフォローしとくから」
「うん、わかった」
あーなんて自分はおせっかいなのだろう。こんなことする度自分が傷つくのわかっているのに。これが惚れた弱みというやつなのだろうか。
今回はほんとにたまたま##name_1##をカバーすることができたけど、きっとこれからは岩ちゃんが彼女を守るんだろうな。そう思うと少し切なくなった。
##name_1##を守るのも、傷つけるのも他の誰かで。
(きっと、それに俺は入っていないんだ)