パニーニ!
‥いやいやいや。
こんばんは、
黒尾ですがお元気ですか。
‥お前何キャラだよ。
彼女に送る言葉ひとつでこんなに悩むとは思わなかった。これも恋がそうさせるのだろうか。冗談混じりに送るのもなんか違うし、敬語で元気ですかなんていつの人だよ。
普通に、普通にと思えば思うほど普通ってなんだっけなんて頭が混乱する。あーあ、こんなの俺らしくねー。
こんばんは、
また今度時間ある時音駒に遊びにきなよ
送信。
なんの面白味もくそもない言葉だけど、メッセージひとつ送るにもなんだか緊張した。こんなに緊張することなんか、試合の時だってないのに。(それもそれでどうなんだ‥)
すぐに返事がくるわけでもないのに、チラチラと携帯を気にしてしまう。なんて女々しいんだろう。こんなところ研磨に見られたら、きっと呆れるか笑われるかのどちらかだ。(前者が濃厚だけど)
そわそわしていると、ブーッと携帯のバイブが鳴った。急いで画面を見ると、山本が音駒のグループに潔子さんに会いたい、なんて呟いていた。くそっ、山本めこんな大事な時にややこしい。心の中で歯ぎしりしてやる。
心の中でギリギリ歯ぎしりをしていたら、再度携帯のバイブが鳴った。山本の続きかと思って画面に目を戻すと、##name_1##ちゃんの文字が表示されていた。急いでメッセージを開くと、
こんばんは!
はい、またぜひ行かせていただきますね。
黒尾さんも身体に気を付けてがんばってくださいね!
か‥可愛すぎかよ‥!この身体を労ってくれるあたり、文章から##name_1##ちゃんの優しさが滲み出ている。しかもぜひ行かせていただきますね、なんて嬉しすぎるだろ。パニーニなんて送らなくてよかった。明日、来てくれんのかな。
「‥クロ、なんか今日一段とそわそわしてない?」
「ん、そうか?」
「うん、だってTシャツ裏返し」
「まじか!」
昨日の今日で来てくれるとは限らないのに、妙にそわそわする。時折ドアの方を見て、##name_1##ちゃんが来てるか確認していないとちょっとがっかりしたり。
今日ももう少しで練習が終わるな、なんて頃に視界の隅に女の子の姿が映った。
「(こんにちは!)」
##name_1##ちゃんが来てくれた。気を遣ってか、口パクで笑いながら挨拶をしてくれた。久し振りに見た、小さく手を振る彼女が可愛くて。
「‥ってぇ!」
「‥クロ‥余所見してるから‥」
彼女の方を見ていたら研磨があげたボールに気付かず頭に落ちてきた。##name_1##ちゃんの方を見るとあわあわと慌てていた。格好悪いところを見られた‥。
それから間もなく練習が終わり、俺は##name_1##ちゃんの元へと向かった。
「あ、あの、ボール、頭に‥大丈夫ですか?」
「全然ダイジョーブ。あんなとこ見られて恥ずかし‥」
「私が手振っちゃったから‥すみません‥」
「##name_1##ちゃんが気にすることじゃねーよ?あのさ、もうちょっと待てる?」
「‥?え、あ、はい」
「その、二人で帰りませんか‥」
「え、あ、その、二人ではちょっと‥研磨も一緒だったら‥」
「あ、じゃあそれで‥。片付けてくるから待ってて」
「はい!」
さらりと二人ではお断りされてしまった。あんなに笑顔で手を振ってくれたから、てっきり脈ありだと思ったけど違うのだろうか。山本じゃねぇけど、ちょっとスンッてなった。
(恋ってやつは、追いかけると逃げて行くらしい)