いまさら嫌いになれるわけがなかったよ

彼女のことを好きじゃなかったら、嫌いになれたらなんて、何度も何度も考えた。今まで、ずっと。






あれから数ヵ月も経たないうちに、嫌な予感、が現実になった。予想はしていた、認めたくはなかったから考えないようにしていたのだ。






「徹、すっごくいい知らせ!」





##name_1##が目をきらきらさせ、浮足立った様子で俺のところに走ってきた。きっとそれは、俺にとってすごくすごく嫌な知らせであろうことが彼女を見た瞬間にわかった。正直、聞きたくもなかった。その場から逃げてしまいたかった。でも、それはできない。







「あのね、岩泉くんの彼女になっちゃいました!」





ほらね、俺にとってはバッドニュース。あぁ、ほんとにへこむな。





「あー、やっぱり?そう思ってたとこだったよ!おめでとう」


「でへーありがと!今度牛乳パン奢ってあげる!」





おめでとう、だって。そんな心にもないことをよくもまぁペラペラと口から出てくるものだ。なんて、心の中で自分に悪態をつく。##name_1##はそんな俺を余所にそこまで至った成り行きだとか、岩ちゃんのかっこよさだとかを熱弁しているが全くといっていいほど頭に入ってこない。(悔しいけど岩ちゃんのかっこよさなんか、きっと##name_1##よりも知ってる)

岩ちゃんは誠実、っていう言葉がすごく似合う人で。付き合った相手のことは本当に大切にする。相手が##name_1##だ、二人を知ってる俺からみたら気も合うし、きっと長続きするだろう。‥今までの人と違って。



なんだか、##name_1##が俺の手の届かないところへいってしまったような気がする。


彼女のことを好きじゃなかったら、今の俺はどんな人間だったのだろう。女の子からちやほやされて、当たり障りなく付き合って別れて、こんなくだらない人間じゃなかったのかもしれない。

彼女の一番近くにいながらも、否、一番近くにいたからこそ気持ちの一つも伝えることができなくて。彼女が誰かと付き合う度、何度も何度も嫌いになろうと思った。むかつくところとか探して、考えて、嫌になろうとした。でも、恋は盲目というようにどんなに考えてもそれさえも愛しくて。とてもじゃないけど嫌いになんてなれる訳がなかった。







「ほんと、徹のおかげだよ。徹だいすき!」


「あーはいはい」







そんな残酷な言葉をかけてくる君だけど。





(いまさら、嫌いになれるわけないよね)