もしもの話


「タイムマシンがあれば未来に行きたい?それとも過去に戻りたい?」
「は?」
 唐突に紡がれた類の言葉に緋透は言葉の意味を理解するのに時間がかかった。脈絡もなく、予想もしない会話なんて日常茶飯事だ。またおかしなことを言ってるしか思っていなかったが、彼の言葉に少し考えてしまった。
「で、次はタイムマシンでも作る気なのか?」
「ふふっ、作れたら作ってみたいもんだね」
 ニコニコと笑う類を見て「こいつならやりかねないな」と呆れた顔をした。本当に作れたとしたら世界になを残せるんじゃん、と考えてると目があいほほ笑まれる。
 たまには真面目に考えて答えるかと顎に手を当て考え始める。
 類もまさか考えてくれるとは予想もしなかったのか緋透の答えをまった。
「で、類は使うのか?」
「さあ、どうだろうね」
 自分から聞いたのに本人は答えないのかと若干呆れ気味だが、この際もういいやと諦めて考えをポツリと呟いた。
「俺は…使わないかなぁ…」
「それは、どうして」
 類はてっきり過去に戻りたいと緋透が答えると思っていたため目を見開いて驚いていた。やっぱり過去に戻りたいって答えてくると思ってたんだなと緋透は苦笑いをしながら類を見た。
「確かにさ、過去俺がした選択は間違ってたと思うし、それが正解ではなかったと思うよ」
 緋透の過去を知る者として類はその言葉に今はただ肯定も否定もできなかった。知ってしまったから、彼女の苦痛と想いを、与えられた役を、それすらも蝕む環境を、それでも今の彼女はそんな体験をしてもなお「使わない」と答えた。
「もしあの時に戻ったら君は後悔しないと思ったのだけど…違ったのかな?」
「あー多分後悔や迷いは無くなると思うよ、けどさそれよりももっと大切な物があるから」
 そう呟くと緋透は優しい顔で笑った。変えなくてもいいって思える何かがあるからと、その笑顔は確信であり今、必要なものであるからと。
「だってあんな事が起きなきゃ類と一緒にショーなんてできなかったし、最高の仲間に出会えなかったから、って思えるから」
「……」
「だからあれは俺にとって必要不可欠だったんだよ」
 言い切ったなんも迷いもなく。それすらも受け止めて前に進んでいこうとする緋透が眩しくて敵わないなぁと、過去を変えて少しでも辛い思いをさせたくなかったって考えてしまった自分が浅はかだと痛感した。
「それにさ、類だって変えてしまったら今の類だって類じゃくなりこうして俺と一緒にいれないかもしれないだろ?」
「それは俺が嫌だからね」そ少しだけそっけない感じでそっぽを向きながらポツリと聞こえるか聞こえないかで呟く声は類の耳にしっかりと聞こえていた。
「本当に緋透くんには敵わないね」
「おっと?」
 こてんと類が緋透の肩に頭を乗せる。急に寄り添ってきた彼に少し驚きとどまるがまあ好きにさせる事にした。
「まあ、俺達は別々に色んな事があったけど、それがあったから今一緒にショーができるんだから儲けもんだろ」
「まあそう言う考えもできるね」
 くだらない話で笑えるようになるとは過去の自分達は想像もしてないんだろうな、と考え今この瞬間が続いたらどれだけ幸福なんだろうと今を信じた。

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