いつか晴れるその時まで


ざぁぁと朝から降る雨に憂鬱に感じる者もいるが緋透もそのうちの一人だろう。一日中降り続ける予報、今日の練習はお休みして室内で過ごそうと放課後どう過ごすかを考えていた。
雨の降る音、先生の声が眠気を誘われるが一応黒板に書かれたものをノートに書き取る。教室の窓から外を見るとまだ晴れそうにもない。お昼、どこで取ろう、教室でもいいが雨だから賑わいそうだ、こんな日ぐらい静かに食べたいものだと緋透はお昼どこで食べるかを考えながら静かで眠気を誘われる授業を乗り切ることにした。

お昼、緋透は朝コンビニに寄って買ったパンとコーヒーが入った袋を片手に持ちそそくさと教室から出ていった。予想通りに教室は隣のクラスや雨だから大人しくお昼を食べる生徒が多かった。早めに出て正解だったとお昼を食べる場所を探す。
無意識に足を運んだのは屋上だった。流石に雨で屋根もないところで食べるのは気がひけるし無意識にここを選ぶのもなと、戻るのもめんどくさいから屋上と下の階を間の踊り場で昼を取ることに決めた。ここなら人は来ないと座り込み持ってきたお昼を袋から取り出した。
「やっぱりここにいた」
下の階をから誰か来る。聞き覚えのある声の持ち主はニコリと笑いながら手をひらひらと降り何も言わずに緋透の隣に座る。
許可した覚えはないんだけど、と思いつつも許可なんていらないし別にいいかと彼、類を隣に座るのを見てコンビニで買ってきたパンを開ける。
「雨が降ってなかったら屋上で食べれたのにね」
「流石に降ってる中行く勇気はないかなぁ…」
「おや、そのセリフそのままそっくり過去の自分に言えるかい?」
うるせぇ、と悪態をつきながら緋透はもそりとパンにかじりつく。類もそれを見て購買で買ってきたのであろうお昼に手をつける。
そういえば中学の頃あれに荒れた頃土砂降りの中屋上に出たっけ?と思います。彼もよくそんなことを思い出したな、と感心しつつその頃の光景を思い出す。

中学頃、何もかもわからなくなり、失った時土砂降りの中一人屋上にいたことがある。それを見つけた類の表情は今でも覚えていた。
『なーんもなくなっちゃった!あはははっ!!意味なんてない今まで何のために舞台に立ってたんだろうね?』
その表情は無だった。感情を出すことができないのに口は弧を描くように笑っていた。目になんて生気なんてない、そんな彼女を見てどう思ったのだろう。
土砂降りの中、雨で濡れるのも気にもせず緋透も類もただ立ち尽くしていた。類はなにも答えることもできず手を差し伸べることもできずにただそれをずっと見ていた。何で声をかけていいのかわからず、なにが正解でなにが彼女にとって負担のない言葉になるのかわからず見ていた。

そんなこともあったなと感傷に浸る。そのあとどうなったっけ?と思い出そうとしたがよく覚えてない。多分濡れすぎて風邪ひいて高熱出したような気がする。
すっかり忘れてたわ、と言わんばかりの顔に類は笑っていた。よくもまあ覚えているなと緋透も昔の記憶を思い出す。
「思い出したくなかった?」
見透かされたように呟く類に真剣に考えるように悩む緋透。思い出したくはない事はないと思う。その記憶があるから今があると。
「次があるなら雨を呼んじゃう少女が晴天の中幸せになるお話を演じてみたいな」
「それは素敵なお話だね。それじゃあ僕も少女が心の底から笑えるような演出をつけようじゃないか」
嬉しそうに笑う類を見て満足そうに微笑む緋透。それから次のショーの事や、晴れたらなにをやりたいかを話しながらお昼を過ごす。
まだ雨は降り続いてるがもう少ししたら雲ひとつない晴天になるだろう。

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