唐突な再会
▼▲▼
そう言われたのは桜が舞う別れの季節だった。別れ、卒業式の日に彼からそう言われたのを覚えている。それから月日が流れ、あれから一切会うことがなく高校に上がり、それなりな高校生活を満喫しながら日々過ごしていた。
「はよ」
「おはよう昨日休んでたけどどうしたの?」
「んー夜までゲームして起きれなかったから休んだ」
他愛のないクラスメイトとの会話、それが日常だった。それなりに会話をするクラスメイトが「そういえばね」と昨日来てなかった彼女に話を振り出した。
「昨日ね転校生、うちのクラスにきたって」
「へー転校生ねぇ…どんなやつ?」
些細な疑問に聞き返すとクラスメイトは少し困った顔をしてどう答えようかと悩んでいた。なぜ悩むんだときょとんとして言葉を紡ごうとすると、困った顔しながら答えた。
「男の子なんだけど…なんと言うか…変…いや、すごく個性的な…」
と言葉が歯切れが悪かったのが少し気になった。
「え、もしかして緋透くん?」
あきらかに変と言い切ろうとした所を聞こうとしたところに聞き覚えがある声が聞こえた。声の方を振り向くと見覚えがある顔がそこにいた。
中学の頃、よく顔を見合わせていた人物。彼も緋透もまさか再会をここでするとは思ってはいなくて目を丸くして驚いていた。状況を把握できていないクラスメイトはキョトンとした顔でこちらを見ていた。
「もしかして神代?へーってことは転校生はお前だったんだ」
「少しは驚いた顔をしなよ。流石の僕も驚いたのに」
クスクスと笑う類に緋透は「一応は驚いてる」と付け足して自分の席に荷物を置く。クラスメイトは言うと二人が知り合いなのを知ったのか後の説明は緋透に任せて自席に戻った。
久しぶりの再会。類をよく見ると中学とは髪型やらを変わってるが雰囲気だけは昔のままだ。あの時から変わってないと気づくと少しだけ安堵した。変わってないのは自分だけではないと。
「それで、昨日転校した神代類くん、校内は把握してるの?」
「一応一人で探索程度は見て回ったけどまだ細かい所は、ね」
少しの苦笑い、なるほど昨日自分がいない中こいつの変人っぷりを発揮してあんまり人が近寄らないと。だから一人で見て回っていたと。仕方ないと少しだけ溜め息をつき、類を見る。
「放課後暇なら俺が案内するよ」
「それは本当かい?それは助かるよ」
目を輝かせて嬉しそうにお礼を言う類に悪い気がしない。昼休みは?と聞かれたがゲームしたいとスパッと言い切り、放課後類をどこから案内するかと考えながら緋透は授業を乗り切った。
放課後、授業を終え、ホームルームも終わり早速類を連れて校内を案内する。よく使う教室や購買、職員室、保健室、中庭、校庭と回る。理科室の前を通ると目を輝かせて入り込もうとした時は流石に止めて次に向かった。
最後は屋上に連れていく。時刻はもう夕方、夕焼けが綺麗に見える時間帯。部活で賑わう校庭、帰宅する生徒が屋上から見れる。
「一通り案内したけどどう?まーわかんないところがあったらまた聞いてよ」
「すごく助かったよ、一応校内の構造は把握してるから迷うことはないかな?」
流石の記憶力、覚えるのが早くて助かった。少しだけ時間をかけて教えた甲斐があったと。
「けどまさか転校した所に緋透くんが通ってたなんてね。卒業まで教えてくれなかったから」
「教える義理なんてないかな…ってそれにそこまで俺自身余裕なんてなかったから」
そう聞くと少しだけ困った顔をする類。けどその表情はどこか安心したような気持ちにもなる。
ふと類があっと声を出す。急に声を出す類にびっくりする。なにがあったと彼の方を見ると今日一番の笑顔で笑っていた。なにがあったのかわからない顔をしてると急に両方を掴まれ迫られる。
「ところで緋透くん、ショーをやる気はないか?」
「は?」
唐突な言葉に緋透は低い声で返事で返してしまった。一瞬なにを言ってるかわからず頭がショートした。誰と誰がんと目をパチクリしても類は笑顔を絶やさなかった。
ふふんと得意げな表情になぜと疑問になったがふと過去の言葉を思い出した。
「あ……卒業式の約束」
「そう、思い出した?」
まさか今ここでその約束を出してくるとは思わなく言葉を失った。
「ちゃんとした舞台ってよりかは色んなところでゲリラ的にするんだけど一人だとバリエーションが服なくてね、二人でやればやれる範囲が広がると思ってね」
「どうだい?」と優しく問いかけてくれる類が自分を気を使ってる事に気づく。だがその声はどこか震えていて断られるかもしれないと言う不安もある。
今自分はどうしたいのだろう、また『昔みたいに』なってしまうかもしれない、そうすると類には迷惑をかけるのもわかってる。
けどそれでもこうして約束を果たそうとする彼を見てちゃんと答えたいと思った。緋透は深く息を吐きまっすぐと類を見る。答えはそう決まっていた。
「また、それで自分を失うかもしれないし、神代を困らせるかもしれないしがっかりさせるかもしれない」
「………」
「それでも俺はお前とショーをしてみたい。だから…これからよろしく、類」
「………!」
言葉が出ないって事はこの事だろう。類はまさか受け入れてくれるとは思わず立ち尽くしていた。そんな類を見て少し照れ臭そうにする緋透は手を差し出し握手を求めた。一瞬わからなかった類だからすぐに握手を求められるてると気付き優しく包むように握った。
「とは言っても俺舞台に立ってない期間あるからなぁ…」
「そこはお互いフォローし合えばいいよ」
「そうだな、って事でよろしくな類」
「こちらこそよろしくだよ、緋透くん」
二人が仲間と出会うほんの少し前の話。
▲▼▲
- 6 -