隠し上手
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だが一人だけすぐに見抜く奴がいる。類だ。気を遣われないように何気ない日常に支障がこないように会話をする。バレるのではとヒヤヒヤしたがバレた様子はない、このまま午前を乗り切りお昼になったら人がいないところで休憩しよう。
体調管理、いつもなら怠らないのに、色々と重なったからなぁとここ最近の忙しさを思い出した。ショーに練習、実家の帰省、知り合いから欠員が出からとキャストとして出てほしいと、いろんなことが積み重なり忙しかった。
疲弊しきった身体を無理して動かしたんだ、このぐらいはわかりきっていたがいざ目のあたりにするとやっぱり辛いものは辛い。
(早く授業終わらないかなぁ…)
先生の話もまともに頭に入らない、黒板の字も理解するのも難しい。時間は進むのがいつもより遅く、授業が長く感じた。早く終われと時計を見るが一秒、一秒が長く感じた。
思考が定まらない、迷惑はかけたくないから早く一人になりたいなと思いながら頬杖をつき目を閉じて時間が過ぎるのを待った。
昼休みのチャイムが鳴ると同時に緋透の意識が朧げだが浮上した。一瞬何が起きたか理解はできなかったが時計を見たらお昼休みを告げる音だとすぐに?わかった。自分はいつの間にかに寝てしまったらしい。昼飯を食べるために教室は賑わう、自分もそれに便乗するように教室を出て人気がない所に向かおうと立ち上がる。
ふらつきはあるが何事もなく立ち上がると同時に目の前には類がいた。何も言わずに立っていたせいでびっくりして目を丸くしながら彼を見ているとにこりと笑った。笑っていたが目が笑っていなかった、これはバレたかと冷や汗になったが逃げるより早く類は緋透の腕を引っ張り教室から出て行く。
「えっ…?ちょっ…類待ってって!」
緋透の言葉なんて聞こえないのかぐいぐいと進む。進むが強引ではなく相手の速度に合わせて歩きやすかった。クラスメイトは「なんだ?」と疑問に思う人もいたがいつもの事だと流されて終わる。
無言で何も言われずに着いて行く。途中名前を呼んでも反応はない、もう諦めて後を着いて行く。
連れて行かれた場所は屋上。「座って」と少し低い声で言われて抵抗もせず座ると類は、自分が着ていたカーディガンを緋透に被せた。
「わぷっ……」
「それ、毛布の代わりにしていいから安静にしてる事。いいね」
そう言い聞かせて類は急いでどっかに行ってしまった。ポツンと置いて行かれた緋透は何が起きたんだと理解したかったが頭の中ぐるぐると周り思考を放棄し、類のカーディガンを羽織った。
「類の…匂いする……」
ふんわりとする類の匂いなのか柔軟剤の匂いかはわからなかったが安心した。ぎゅっと服の裾を握り、身体を丸まらせ目を閉じて類を待った。
意識がふわふわする、やっぱりまだ本調子ではない事がわかる、この状況だと類にはバレてるんだろうと考えたら緋透は表情をうまく作れなくなった。バレてしまったからもういいだろうと身体が素直になる。心配なんてかけたくないなぁ…とか考えてるとバタバタと駆け上がる足音と盛大に扉が開く音が聞こえた。
「緋透くん!?……っと寝てる…」
「寝てないよ、まだ起きてる」
目を開き類を見ると急いだかのように息切れをした姿が見えた。片手には色々入ってそうなビニール袋と緋透の鞄が見えた。
なんで持ってるんだろうと考えてるけど答えが見つからなかった。思考があやふやになりながら彼を見てるとゆっくり近づきおでこに類の手が当たる。ひんやりとしてて冷たい。
「ひやっこい…」
「じゃなくて、どうして君はここまで無茶をしてるんだ、とりあえず食べれそうなもの買ってきて、緋透くんのことだから薬、持ってきてるんだろ」
「ん〜〜?」
言ってる言葉はわかる。だが答えになってない、そこまで疲労が溜まって思考が定まらない。
「緋透くん、もう少し頼ってほしいかな…ここまでになっても自分を演じるのはやめてほしい」
「………」
そう言われて何も言い返せなくなる。少し申し訳ない表情をしながらさらに小さくなりながら。
「……頼り方、わかんない」
そうか細く言うと類は目を見開いた。そういう事かと大きくため息をついた。
緋透は誰にも頼ることはしないと思ってたが本当は頼り方なんて知らなかったんだ。だから、一人でなんでもやろうとしていたし、一人で抱え込んでしまってるとやっとわかった。
それに気づけたかった自分が腹が立つように類は頭をガシガシとかきながら緋透に言う。
「もっと頼っていいんだよ、わからなかったら少しずつ慣れようね」
そうあやすように彼は言う。それを理解するようにこくりと緋透はうなづいた。
のちに類が持ってきた昼ごはんを食べ、持ってきてくれた鞄から薬を飲み少しは落ち着いた。類がどこから持ってきたかわからない体温計で測ると微熱だとわかった。
「一応病人、なんで保健室に連れて行かなかったんだよ」
「無理やり連れて行って素直に行く?」
「行かない」
ズバッと即答する。だよね、と苦笑いしているが本当は保健室で休ませた方が安心するが絶対に行かないってのを類は知っていた。
お昼もちゃんと取り、少しだけ元気になった緋透はある疑問があり類に問いかけた。
「そういえばさ、俺が調子悪いのってよくわかったよな。うまく隠せたはずなのに」
「確かに。おそらく司くんや寧々だったら見抜けなかったと思うよ」
あいつらには隠せると、わかったところで次はうまく隠そうと決意した。それを見抜かれたのか苦笑いをされて軽くこつかれてしまった。
「じゃあなんで類はわかったの?」
「それは、ずっと緋透くんを見てたからね。些細なことならすぐにわかるさ」
そう恥じらいもせずに言った。おそらく本人がそれが恥ずかしいってことも気づかずに素直に答えたから何も思わなかったが緋透は一人照れ臭そうにそっぽを向いた。
嬉しいような恥ずかしいような気持ちでいっぱいになる。どうしたの?とか気づいてない本人が少しだけずるいと思いながら緋透は気づかない方がめんどくさくないと考え、そっと目を閉じた。
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