クソみたいな夢でもこっちの方がマシ


見慣れた光景、あぁ夢の中ですら幸福なんてなかった。赤い赤、赤、赤く染まっている、なにが?誰が?周り、自分、他人が真っ赤に染まっている。小さい頃から繰り返しみた赤い光景、生きるためにならなんでもした、言われた通りに、教わった通りになんでもやった。
失敗なんて許されなかったから、失敗したらすぐにいらない子と捨てられるから。だって自分達は双子だから、忌み嫌われてるのはわかってるから。だから片割れと生きるためからなんでもするって決めたから。たとえどんな事をしてでも片割れが汚い物を見ないように自分が背負っていった。
「だからって夢の中でもこれはないだろ、こんなもの見て正気でいられるの?っていかれてるだろ」
「元々おかしいのか?」って笑いながらぐちゃりと赤いナニカを潰れる音が聞こえた。熟れた果肉を簡単に潰れる音、そんなのお構いなしにぐちゃりと潰しながら彼女の前に立つ。「汚れるよ」と返すと「いまさらかよ」と鼻で笑う彼にそっぽを向いた。
夢の中、確かに今見てるのは夢だ。過去を再現した夢を今見ている。なぜこんなにも鮮明に見えてるのはおそらく彼がこの夢に入ってきたからだろう。だから緋透も夢と認識し自我を保つことができている。
「夢なんだからさもっとこう、さ…楽しそうな夢でも見ときなよ。一時の幸福に包まれるとかないわけ?」
「幸せな夢……ないかも」
悩みに悩んだ結果の答えを聞いた彼ももう呆れてものも言えずに大きなため息をついた。
なにが自分の幸せなのかわからなかった。いつも思うのは他人の幸せ、自分の事なんて二の次だったのを思い出す。彼に言われて初めて気づいた、自分の幸せなんてなにもなかったんだ。
否、それは言い訳に過ぎなかったのと。彼女自身わかっていたからだ。『そんなもの』にすがりついたら心が壊れてしまう事を、それを恐れていた事を心のどこかでわかっていたからこそ考えるのを放棄していたんだと。
そんな彼女の心の考えを観たのか彼は呆れてものも言えなかった。むしろそれは彼女の自衛にすら考えられるからだ。だからってこんな光景いいわけがあるかと内心悪態をつくがそれすらも彼女は知らない。
どろりと地面を這う赤い何か、顔も髪も服も全て真っ赤に染まり諦めたように呆然とする昔の緋透のようなモノ。それをただそれを何事にもなかったように見る緋透。全てが気持ち悪い。夢ってものはもっと一時の安らぎを持ってもいいだろ、と普段は考えもしない思考になる彼は仕方なく、気が気ではないがパチンッと指を鳴らした。
「…おっと?」
急な場面転換に緋透は少し驚き声を出した。先ほどとは変わっての汚い部屋、この部屋は何度か見たことがある、そう彼の部屋だ。
彼は座れる椅子を見つけてはドガッと座り「歓迎してるわけではないからね」付け足した。
まだなにが起きたかがわからずにぼうっとしながらも理解しようと必死に考えたが答えが見つからずにこてんと首を傾げながら彼を見た。それを見た彼は眉間にシワを寄せて机に肘をつき不機嫌そうに頬杖をしながら口を開いた。
「あんなクソみたいな場所よりこっちのクソみたいなところの方がまだましだと思ったんだよ」
「えっ………あ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜うん?」
長く時間んかけて考えた結果よくはわからなくうなずいた。これ以上こいつに言っても無駄だとわかり言うのを諦めた。
「悪いね、幸せな夢なんて見せてあげれなくて」
「いいよ、別に。俺はそんな夢なんて見たくないし…それに…」
「それに、なに?」
はっきりと言わずに口が開かなくなる緋透の顔を見ようがそっぽを向かれてうまく顔が見れない。口を閉じてしまった彼女にイラついたのか少し不機嫌そうな声音で問いただすと困った顔をしながら重い口を開いた。
「多分、そんな夢を見てしまったら俺はどうにかなりそうだから、だから見なくて正解なんだよ」
諦めたような声でそう言った。なんだ、そんなことかよと予想通りな答えに心底つまらなそうな顔をする。
もういいや、とこれ以上話してても時間の無駄。そう思った彼は緋透を手招きさせ自分の所へ呼ぶ。一瞬なんで呼ばれたかわからなかったが拒絶する理由もないから近づく。
「幸福に包まれるより、クソッタレみたいな夢にすがりすくなんて本当にどうしようもないね」
「そうかもね」
「あーはいはい、予想通りの答えありがとうね」
もう話すことはないと言わんばかりに彼女のおでこに向けてデコピンをする。バチンッといい音がした、痛いと同時に視界が歪む。これは夢から醒めるのか、と頭では冷静に考えていた。
歪む視界の中彼を見ると夢の中で1番の笑顔で立っていた。
「じゃあね、次見る夢は今よりほんの少しだけまともなのを見れるのを願っているよ」
その言葉を最後に緋透は意識を失った。


次に目が覚めたのは自室のベッドの上だ。鮮明に覚えてる夢の内容、こんな事があったなと、思い出しながら起き上がろうとするが何かに拘束されてるのか動けなかった。
よくよく見ると何かに抱きつかれていた。自分を抱きつく人物を見るとそこには夢でも見慣れた彼がそこにいた。
「オベロン…そっかありがとう」
色々と考えるものがあり彼女は一言お礼を言い、もう少しだけ眠っても許されるだろう、そうじゃなかったら起こしに来るかと思い、再び目を閉じた。
その言葉は彼の耳に届いたのかは彼以外知らない。

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