代理品の仮定の話


「仮に俺がきみの事をティターニアの代用品として見てたらどう思う」
「こんなゴミクソな状況で何を言ってるんだ?」
突拍子のない発言に本気で頭が沸いたか?と彼の顔面に拳を擦り付けるか、とか考えながらも今の状況ではそんな余裕はなかった。
微小特異点、ご都合主義、なんやかんやで、なりゆきで、理不尽な運命、不具合、どの言葉でも当てはまるぐらいで飛ばされた。しかもご丁寧に通信はできない、帰る方法もなく彷徨い続けて、挙句の果てには襲われ、戦闘。運が良かったのは緋透が道連れにしたオベロンが一緒にいる事だ。
「本当にいい加減にしろよ、なんでこんなめんどくさいのに巻き込まないでくれる?」
最近の中でも最高にいい笑顔、ドスのきいた声で緋透に怒るがおきた事はしょうがないと、諦め帰る方法を探す。二人とここで野垂れ死ぬ結末だけは死んでも嫌だと帰り道を探す。
だがここはそんな二人を快くは歓迎することはなかった。むしろ敵意を剥き出しで襲ってくる。避けれない戦闘は迅速に終わらせ、隠れられるならとことんと隠れていた。そんな擬似的な逃亡生活に慣れて始める頃に緋透が「ツケで追いかけ回されるオベロンの気持ちわかる〜」と茶化した。
「流石にここまで死に物狂いで追い詰められたことはないよ」とまだお互い無駄口叩く余裕はあった。
だがそれは長く続かない。仲間と遮断された中持てる手持ちは限られている。それが尽きるのが先か帰り道を見つかるのかが先かのチキンレースなのもわかっていた。
追い詰められた状況、ほぼガス欠に近い状態で逃げれる戦闘に全力で逃亡する中のからの発言。余裕なんてない、魔力なんて気を抜けば全てがなくなる、そんな中の彼の発言。そんな話をされても不快なだけなのにと言い返そうとすると彼の左手でグイッと腕を掴まれ突き落とされる。何かの底に落ちていく感覚が体を包まれた。
一瞬落ちて死ぬと悟がそれを彼は許さなかった落ちる緋透を抱き寄せ着地する。衝撃なんてほぼなく優しく下される。
右足から地面に着き、左足で体を支えようと立ち上がると同時にガクンッと足から崩れ落ち転ぶ。それを見たオベロンは声を殺して笑ってた。
「笑うなよ…」
「ごめんって、はー笑った…けど一応は追ってこないね。見つかるまで休憩しようか」
そう言い転んで動かない緋透を掬い上げるように座らせた。服が汚くなる、汚したくないと言う概念は今なく躊躇なく座る。
落ちた底は薄らと暗闇で光は自分達が落ちたであろう穴だけだ。敵の気配はなく周囲を気にしつつ体力を回復させる。もうほぼお互いガス欠状態のなか上手く立ち回れているからこそまだ生きている。
「それで、さっきの質問の真意はなんだ?」
少し落ち着き話す余裕ができた緋透は先ほどの問いが気になりオベロンに問う。どうせ本音なんて吐き出す事はないのはわかりきっていたし、聞くだけ無駄なのも経験済みだ。
だがその問いを返した瞬間彼はにこりと微笑みながら何も喋らなくなった。普段あんなにお喋りで口を開けば嫌味ばっかり言う彼は無言を貫き通す。最初は話すのもめんどくさいと思っていたがそうではなかった。「質問を質問で返すな、先にお前から答えろ」とでも言わんばかりの微笑みだった。
その真意に気づいた緋透は心底めんどくさいと思ったと同時に暇つぶしにはなるだろうと、彼女なりの答えを口から吐き出した。
「俺は代用品にはならないしなりたくない」
「…続けて」
「俺は俺、彼女は彼女だ。それ以上もそれ以下でもないんだよ。ましては彼女になってまでお前の愛には触れたくない…それに……………」
言葉が詰まる。その続きはなんだと言わんばかりに彼女の目を見る。薄暗い底に映る青い瞳は深淵とも呼べるほど暗く濁っていた。意を結したのかその続きの言葉を紡いだ。
「俺が好きなのはティターニアを心の底から愛してるオベロンなんだって、わかってるから。だからこそ俺を代用品にはしないで欲しいんだ」
ゾクリと背筋に悪寒が走る。こいつは一体どこまで馬鹿で愚かでクソみたいな思考なんだと嫌悪感で満ちる。そんなの報われるつもりもなければ実気もない、そんなのわかりきってるくせにそれを愛おしそうに発する彼女を見て心の底から同情した。
本気で好きだからこそ、愛してるからこそ全てを受け止めるが相手の思いを一切受け取らない。聞くんじゃなかったと後悔の念が押し寄せるがもうそれは遅かった。
そのあとどう返せばいいか悩んでると緋透は続けて今後の作戦を組み立てる。もうこの話は終わった事だ、掘り返してもお互い何にも習ならない事はわかっていた。
「はぁ…本当に心底呆れるよ。俺のマスターは」
「ん?なんか言ったか?」
なんでもないよ。そう言ってオベロンはある事を思い出して、提案したら時間がかかったが二人がいる場所を特定され救出された。
その後心配やらお叱りの言葉を聞いたり聞かなかったりしたり、してなかったりした。

- 4 -
←前 次→