名前
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仕事と言っても軽い雑用とかが多い、それでも体を動かしたかったからなんでも良かった。ふとそんな緋透を見てダ・ヴィンチは仕事をお願いした。
「ごめんね〜こんな小さな仕事を頼んで、やる人が見つけられなくてね」
「書類の整理…?後資料室の整理もね…別にいいけど多いね」
「最近サーヴァントが増えたからね、それの資料やらなにやらでね、まとめたりして…あとは緋透ちゃんが見たいものは見ていいから」
「まあ、頭に入れるだけ入れるけど…」
よかったーじゃ、あとは頼むね!と言ってダ・ヴィンチはパタパタと行ってしまった。
頼まれた事をやりますか、と緋透は書類を手に取り資料室に向かった。
向かうのはよかった、だが思ってた以上に多くて重い。このぐらいならいけるだろうと、一気に持っていくのが間違いだった、何回かに分けて往復すればよかったと後悔した。だがもう後少しで目的の場所に着くから悲鳴をあげる腕を我慢しながら進む。
だが一度重いと感じた腕は一歩歩くごとに重さを感じ初めて限界だと訴えるように痛口なる。失敗したなと後悔してると急に軽くなった。
疑問を持ちながら前を見ると半分ぐらい持つオベロンが立っていた。しかも姿は白い方だ。いつもの嫌味を言うオベロンではないと思うと微妙な顔をしてると苦笑いをしていた。
「一人で持つ量じゃないよね。よくこんな沢山の紙切れを持って歩いてたね」
「持てると思って無茶した」
全く、と呆れつつも「それで、どこに持っていくの?手伝うよ」と言ってくれたのでせっかくだからその好意を頂き手伝ってもらう事にした。
そのまま資料室まで一緒に着いて来てもらった。書類を机に置いてもらって礼を言う。
「凄いね、今召喚されてるサーヴァントや特異点の資料が保管されてるんでしょ」
と物珍しそうに当たりを見回す彼を横目に緋透は持ってきた資料を棚にしまい始める。それにしても量が多い。彼にも手伝ってもらいたかったが運んで貰っただけでもありがたい。ここまで手伝わせるのも気が引けると変な良心が働いた。
「気になるものがあるなら勝手に見ていいから。なんかあったら俺のせいにしていいから」
と言うとわかった、と返事がきた。こいつ本当になんかあったら自分に罪をなすりつけるつもりだと思いつつ緋透は持ってきた資料を仕舞い始めた。そんな緋透を見つつオベロンも興味が引けそうなものを探す。どれも興味が湧かなかった、暇つぶしにいいものがあると思ったが期待外れかとガッカリしていた。
だが、とある資料の棚を見ると一つだけ目を惹かれるものが見つかった。それを手に取り読み始める。
「ふぅん、へぇ…」
一通り目を通すと面白いものを見つけた子供のようにニヤリと笑った。
緋透も持ってきた資料を仕舞い終わり一息ついた。自分も気になるものを読もうかなと思いつつ、そういえばオベロンはどうしたんだろう、飽きてどっか行ってしまったのかと確認するために周囲を見渡した。いない、見つからない。飽きてどこかに行ってしまったかと思って振り返ると彼が立っていた。
「うわっ…びっくりした」
「おっとごめんね、って本当にびっくりしたの?」
びっくりした表情ではない顔。キョトンとした顔でそんなに驚いた感じはしてなかった。けど急に現れたから少しは驚いた、いないと思ってたからだ。
「これからどうするの?」
「ちょっとだけ目を通そうかなって思ってる」
そっか、と言いオベロンはフラフラとまたどっかに行った。自由人だなと思いつつ一通り資料を読むために目を通す。そういえばこんな事があったなとか、召喚された人物がどんな生き方をしたのかを目を通した。
集中して読んでるとふと名前を呼ばれた。
「ねえ、セレス」
「……!?」
呼ばれた名前に反応する。嘘だろ、なんでお前がその名前を知ってると彼の方を見ると見慣れた姿で笑っていた。
強張る表情、この名前を知ってるのはここでも僅かしかいないのにどこで知ったんだと頭を回転させるも答えが見つからない。そんな緋透を見て彼は笑った。
「あれーこの名前に聞き覚えがあるのかな?そんな顔してどうしたんだい?」
「おまっ…なんで……」
「あはははっ!傑作だなその顔、そんなに知られたくなかったらちゃんと隠しておけよ」
バサリと彼の手から落ちる資料に目をやる。そこに書かれていた資料を見てそういうことかと納得がした。見られたらもうしかたないと諦める事はできた。
それでもこの名前だけは誰にも知られたくなかった、呼ばれたくなかった。特に今目の前に立っている彼にだけは呼ばれたくなかったなと諦めた顔をした。そんな表情を見ると彼はつまらなさそうに大きくため息をした。
「きみってさ、本当に怒らないよね。諦めた顔して心底虫唾が走るよ」
「まあ、知られちゃったからなぁ…」
そう言って苦笑いした緋透を見て頭を悩ませたオベロンだった。
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