知らぬが仏






 学校帰り。病院に訪れる前に玉狛支部に行くと、とりおが言うので 仕方なく同行し、入り口で待っていると白い髪の毛の男の子が丁度支部に帰ってきたようで、入り口の扉を開いた。うわ、私より小さい。可愛いなあ。

 あまりにも素敵な容姿をしているものだから、つい頭に手が伸びた。そして伸びたついでに頭を一撫で。二撫で。いや、結構撫でまわした。本当に可愛い。小さい。だって仕方がないじゃあないか。この子が何も言わないからーーーと、誰にも口にすることのないだろう言い訳を考えていると「ねえ」と声を掛けられ、思わず肩を揺らした。




「オネエさん、苗字さんだよね」
「アッ、ハイ……。 苗字です」
「オサムとチカを助けてくれたんだよね。ありがとうございます」




 ぺこり、と頭を下げる白い髪の毛の子を無言で抱きしめて滅茶苦茶もう一度頭を撫で回す。この時、私の頭の中では事件が発生していた。ここは玉狛支部。烏丸京介と迅悠一率いる敵の本拠地である。しかしこれがどうだ。どうしてこんなところに礼儀正しい子がいるの!!! 誘拐!? まさか、玉狛支部は隊に誘拐にも手を染めてしまったのか。とも、考えてみたのだけれど。そういえば、この子。何処かで見たような、見なかったような。いや、やはりわからないから見ていないのだろう。




「お前はなにをしているんだ?」
「と、とりお……さん」
「遊真、嫌なら言ったほうがいい。コイツは言わないと分からない奴だぞ」
「この人とりまる先輩のお客さんなの?」
「客……。いや、これから一緒に修の様子を見に行くだけだ。お前も来るか?」
「うん」




 とりまる先輩とかいいなー。滅茶苦茶可愛い呼び方されてる……。とりお自体は全然可愛くないのにも関わらず、佐鳥ちゃんとか、この子とかから可愛い名前で呼ばれているから聞いた感じだけだと、可愛くて、良い子なのかなって思うけれど、実際はビックリする程可愛くない。

 ここまで想像と現実がかけ離れている奴もそういないのではないだろうか。な〜〜にが、とりまる先輩だよ。ただの烏丸京介じゃん。とりおじゃん。可愛いのはソレ言ってるキミと佐鳥ちゃんだよ。なにこの子、髪ふわふわだし、天使なの??? 玉狛支部にこんな可愛い子いたの? それは聞いてないぜ、とりまる〜〜。うわ、うける。私がいうと、とりまるって馬鹿そうな感じがする。




「とるまる〜〜」
「…………斬るか?」
「なんですぐそうなるの!! この小さい子と佐鳥ちゃんには許可してるじゃん!」
「お前がその失礼な顔する時は大抵失礼なことしか考えてないだろ」
「とりおは常に失礼!!!」




 私達のやり取りを見て、どうやら とりおのサイドエフェクト(仮)である コント化が起動したらしい。

 私達の横を歩く天使が「オネエさん達仲がいいんだね」と言った。けれど、それはない。断じて。お願いだから1人くらいは このやり取りが ちゃんと裏表なしの言葉で行なわれているという事に気付いて欲しい。しかし、多分初対面の天使にそんな事は言えない。大体こんな小さな子に「私達マジで仲悪いから」とか言えな〜〜い。言えるわけな〜〜い。逆に、どうしたら、こんなにも小さい子に そんな現実教えるみたいな事が出来るだろう。




「そういえば私達初対面、でしたよね?」
「それでも良いよ」
「本ッッツ当にごめんなさい。何処でお会いしたか お聞きしてもよろしいですか……」
「相変わらずだな、苗字」
「やめて、とりまる」
「お前こそやめろ」




 正式入隊日にミドリカワと戦った後にちょっと会っただけだよ。会話もしてないし、みたいな目にしみるフォローを頂いたところで、ああ、いたわ。あの滅茶苦茶強い子じゃんと思い出した。きくっちーとも話題出していた程なのに本人の姿形を忘れるなんて、恐るべき私の記憶力。きっとあの場に迅さんがいたからだろう。間違いなく。きっとそう。私は迅さんの記憶は大体消すようにしているから、この天使の記憶も飛んだのだろう。完全にやらかした。初対面じゃあないのに初対面だと思うなんて……もう、何回目ですか…………。本当我ながらビックリ。記念すべき5回目である。

 いや、しかし、あのC級隊員か〜〜。そうかそうか〜。「あの時は本当に強かったよね」とニコニコしながら笑っていると天使は「でもオネエさんの方が強いんでしょ」と返してきた。いやいやいやいや。この天使ボーイは一体全体なにを言っているのだろう。意見を求める為、とりおに視線を向けた。けれど案の定。何も言ってくれなかった。はい、知ってました。苗字は知ってましたよ〜。とりおは私を助けてくれた事なんて一度だってないのだ。いつも通りだけれど、期待して損した。




「おれは空閑遊真。オネエさんは?」
「苗字名前です」
「なるほど。それでミドリカワが名前ちゃん先輩って呼んでたんだね」
「遊真くんは名前でもいいよ……!」
「じゃあ おれの事も遊真でいいよ」
「ええ、と……。私誰かを呼び捨てにするの久しぶりだ。なんか、照れますね……」




 名前を呼び捨てにするのが初めてというわけではない。昔は双葉ちゃんの事も双葉って読んでいた時期があったし、それに名前を呼ぶことがあまりないというだけで割と苗字では緑川くんも迅さんも何度か呼び捨てにした事がある。しかし、こんなに見た目のいい子に名前呼び出来る権利を貰えるとか神様も偶にはいい仕事するよね……。ありがとうございます。

 さて。そんな私と遊真を物凄い目で見てくるのが烏丸京介である。可愛い後輩の名前を名前で、しかも呼び捨てで呼ばれたのが不満なのか、その表情の意味には確信はないけれど、安心してほしい。お前の弟子ともっぱら私の中で有名な三雲修くんの事は呼び捨てになんてしないから。私はもう、遊真を呼び捨てに出来ているだけで幸せなの。




「名前は どのくらい強いの?」
「……うーん、太刀川さんが伝説のポケ○ンだとしたら差し詰め私はビッパとかかな」
「ぽけもん……?」
「世代じゃないの!? 待って待って! 今度貸してあげようか!? 通信しよ!」
「おもしろいの?」
「面白いよ!! やろう!」




 遊真にゲームの良さを語ったところ、とりおも会話に入ってきて今度玉狛支部にお泊まり会でゲームパーティを開く事になった。しかし、よくよく考えて見たら玉狛支部敵の本拠地じゃん……。私は何をやっているのだろうか。まあ良いや。調理実習前に料理の天才である木崎さんに料理を学べるチャンスだと思えば、むしろ、WIN-WINなのではとすら思う。うん。そうやって気持ちを切り替えようと思う。

 それで、ここで一旦話は全く変わるのだけれど、私は今日リュックの中に三雲隊員へのお見舞いの品を持ってきていた。三雲隊員の入院しているという病院に訪れて、本人に手渡す為に。そういう理由もあって、さほど交流のない三雲隊員の病室を覗き込んでいた。するとそこには三雲隊員のお姉さんみたいな人がいた。多分お姉さんだと思う。あまり似ていないようにも思うけれど、似ているような気もするからお姉さんだろう。けれどまあ、ボーダーでは見たことがないし、家族である確率の方が明らかに高いので、頭を下げる。




「初めまして、えっとお姉さんですか?」
「母です」




 母ッッツツツ!!!!!!!
 若ッ!!!! 若いな!!?

 こんなにも美人で若い人がお母さんとか三雲隊員恵まれすぎているのでは!!? そう思いながらも平然を装ってお見舞いの品を渡す。




「私、三雲隊員に助けられました。本来なら守らなければならない立場なのに彼を守る事が出来なくて申し訳ありませんでした」
「……貴方も謝るのね」
「私が三雲隊員に迷惑をかけたのは事実です。だから今のはお母様へのお詫びです。私は守れなかった事をお母様にお詫びします。三雲隊員には謝りません、御礼を言います。だってボーダーは、そういう場所ですから」




 ボーダーはあくまで私達が自ら志願して入る場所であり、お金も支給される。ボーダーに入る人は、お金の為だったり、自分の自己欲求を満たす為だったり、他人に持て囃されたいからだったり、復讐の為だったり、入隊の理由は様々だけれど私達が望んで入っている事に変わりはない。お金だって貰っているし、学校では優遇される。それに私達はボーダーに入る際、生死云々についての同意書にサインさせられる。それにサインした時点で親も、本人も死のうが、今回の件で攫われようが文句は言えない。そういうのを全部私達が納得してボーダーに所属している(とされている)のだから。だから、ボーダーは今回の件で誰が何人攫われようと、親御さんには報告はするけれどそれ以上何かするということはない。

 ボーダーに入るとはそういう事だ。少なくとも、私は、かつて東さんや忍田さん、城戸司令から そういうニュアンスでボーダーの説明を受けた。




「それでも。それでも、お母さんは まだ三雲隊員にボーダーを続けさせますか」
「……どうかしら」
「お母さんは心配だから反対かもしれませんけれど、私は三雲隊員は素晴らしい人だと思いました。素敵な息子さんですね」




 口元に弧を描いて、もう一度頭を下げた私は目を覚まさない三雲隊員に目を向けて「早く目を覚ますと良いですね」と、小さな声で口にするが、どうやら聞こえていたらしい三雲隊員のお母さんは「ボーダーの謝罪は皆そういう意味なのかしら」と私を見た。そんなものはわからない。けれどきっとこの人は、迅さんについて言っているのだろうというのは検討がついた。

 恐らくあの人は、三雲隊員が ここまでの状態にならなくてもいい未来が見えていた筈だから。




「どうでしょう。でも迅さんについて言っているなら、気にしなくて良いと思います。あの人は多くを求めすぎているんですよ」
「迅……。ええ。確かに あの男の子は『そういう名前』だったような気がするわ」
「私はあの人が嫌いだけど、あの人は三雲隊員の命の恩人です。どうか、お母さんは嫌いにならないであげて下さい」




 とりおと遊真から妙な視線(とりおからは、お前そんな事も言えるんだなみたいな視線)を受けながら頭を下げて病室を出ると競歩に負けず劣らずのスピードで数十メートル歩いて思いっきり深呼吸をした。




「緊張した!! お母さんいるんかい!」
「苗字も 真面目な事を言えるんだな」
「お前の中の私のキャラ!!!!」
「でも おれは本心から ああやって面と向かって何かを言えるのは凄いと思うよ」
「遊真〜!!!」



 よしよし、と頭で撫で回してあげると「子供扱いはするな」と手を払われた。最初は大人しく撫でさせてくれただけに傷付いた。まさにアレ。がーん、ってやつだ。苗字だって言われたら悲しい事あるんだよ。けれど、まあ遊真は可愛い後輩なので目を瞑る事にした。

 そうして、殆どノリで玉狛支部に戻った私達はお互いに何も知らないからと向かいあって自己紹介を始める。とりおには「お見合いの練習か?」と、毒を吐かれたけれど、私はもう こんな事では挫けない。木虎ちゃんの件でだいぶ挫けたからね。遊真とは仲良くしたってバチは当たらない筈だし、とりおに私達の会話を止める権利はないもんね。あーあ、木虎ちゃん仲良くしてくれないかな。とりおさえいなければ双葉ちゃんと同じくらいは仲良くしてくれただろうに、烏丸京介め……。絶対に許さない。実際に私は烏丸京介のお陰で、木虎ちゃんに亜季先輩、香取ちゃんと数多の隊員に嫌われた。亜季先輩は私が二宮さんと仲良しだから解決したけれど、香取ちゃんや木虎ちゃんやその他女子ボーダー隊員からのアタリは未だに結構酷い。




「そうだ。遊真なにか好きな物ある? 今度一緒に出掛けようよ。御馳走するよ」
「いいよ。日本の食べ物は美味しいから名前が好きな所に行こう」
「それなら私のバイト先行こうよ! お好み焼き屋さんなんだけど、美味しいんだ〜〜」
「苗字、バイトしてたんだな」
「カゲ先輩のお家で雇ってもらった」
「ああ、そうだろうな。苗字を雇ってくれる所なんて 知り合いの所くらいだろ」
「お前は存在も私を苛める癖に 言葉でも私を苛めるのか……。なにもう友達やめたい」
「俺達、友達だったのか?」
「はい。とりおはもう殿堂入り!!!!」




 中指をたてて頬を膨らませていると、扉を開ける音が聞こえて振り替える。私同様に扉に視線を向ける遊真と とりお。扉の目の前にいる目を丸くした美少女は私を指差して「苗字名前!!!」と、大きな声をあげた。

 パタパタと私達三人の前に立った美少女は、「何でここにいるの!?」と、とりおに尋ねた。まあ別に普通に三雲隊員の病室を尋ねていただけなので何を言われても大丈夫だろうと思っていたのだが、あろう事か烏丸京介くんはケロリとした顔で「転属するらしいんすよね」と、嘘をつく。まさかそんな事がいきなりおきるわけもないので信用しないだろう、と思っていた私は笑いながら「何言ってんの とりお」と軽く背中を叩くーーー筈だった。しかしそうなる事はなく「そうなの!?」と。私が発言する前に美少女は目を輝かせて私を見るのだ。だらだらと滝の様な汗が背中を流れるのを感じながら、顔を青くさせた私だけれど、まず一つ言わせてほしい。なぜ信じた!!? 私がA級でフリーだとか。B級でフリーだとかだったのなら解る。しかし、私はこれでも一応冬島隊に所属しているA級隊員。それは、恐らく知っている筈だ。それなのに、この反応。いや、その……。取り敢えず、キラキラと輝く目を何とかしてほしい。




「玉狛に転属したとして、どっちの部隊に入るの? 遊真達の方? あっ、あたしは全然あたし達の部隊に入ってくれていいんだけど……」




 チラチラと私を盗み見る美少女が可愛すぎるて今更実は転属しないんですとも言えない私は顔を引きつらせて とりおの足を思いっきり抓ってみたのだが、烏丸京介のポーカーフェイスは私ごときの握力では崩さないらしい。あんた、どんだけ表情筋動かねえんだ。




「あたしは小南桐絵。貴方の事はずっと前から見ててーーー……あ、違う!! 迅とか、とりまるとか准から良く聞いてたの!」
「迅さんとコイツから……!!?」




 やれやれ。最悪の2人から話聞いてるじゃあないか。お前ら2人して この美少女に、どんな恐ろしい情報を吹き込んでくれているのか、是非一度お話を聞かせて頂きたい。雑魚でブスで豆腐精神で……、それからなんだ。もう本当にやめて欲しい。ていうか玉狛支部可愛い子多すぎ……。遊真と小南桐絵ちゃん……。

 …………" 小南桐絵 " ???

 あの滅茶苦茶可愛い嵐山先輩の従兄弟と話題の小南桐絵!!? うそじゃん……。私直接拝見するのは2回目だよ。それにしてもあれなのかな?? 神に愛された嵐山家は従兄弟にも美しい子が生まれる遺伝子が流れているのかな??? んんん〜〜〜。解せぬ。なんて羨ましい。前世でどんな徳を積んできたら、その顔面をモノにできるのだろう。神様、やっぱりちょっと一回私達は話し合った方が良いかもしれないね。




「この間の大規模な侵攻でも結構大活躍したんでしょ? まあ玉狛に来るなら弱い奴は論外だけど名前なら大歓迎!! 可愛いから!」
「こなみ先輩、名前は転属しないよ」
「……騙したの?」
「因みに前に話した話も嘘です」
「〜〜〜ッ、とりまる〜!!!!」




 一体以前に何を話したのかは定かではないけれど、小南先輩の誤解が解けてくれてよかった。本当に良かった。ここで新情報なのだけれど、小南先輩は、なんと遊真の師匠をしているらしい。嘘じゃん。こんなに可愛いのに……。いやしかし、私は知っている。小南桐絵が滅茶苦茶強いということを。なんなら、以前は攻撃手ランキング一位にいた事があるということも私は知っている。実際、昔一度見た事があるけれど、強者の動きをしていた。当時は女の子の攻撃手で滅茶苦茶動けるみたいな人が少なかったから、この人本当に女の子かな?? と思ったのも懐かしい。しかし、随分と容姿も美しくなったな。昔は可愛かったけれど……。いいな。美人は人生得も多いしな。私なんて烏丸京介と仲が良いだけで滅茶苦茶敵を作って毎日を生きていますよ。あれ、もしかして烏丸京介と仲良くて疎んでこない小南先輩ってかなり貴重なのでは……。私はこの瞬間小南先輩と仲良くなる事を心に決めた。

 何が最高って、幸運な事に小南先輩が私の酷すぎる戦闘力に気が付いていないこと。ここだけは迅さんや とりおが何を言ったのかは知らないが有難い。本当にありがとうございます。明日からも強く生きていけそう。






「お邪魔しました〜〜」
「苗字、駅まで送る」
「いいよ。とりおってば、イケメンスキルを発揮する相手が間違ってるよ。キャラ変?」
「そうそう。おれが送っていくから 京介は小南達と中で待っててくれ」
「迅さんは もっとお呼びではないです」
「聞いたよ。おれの悪口言ってるんだって? 挙句呼び捨てにしてるとか。悠一って」
「冗談はやめてください。なんで悪口を言うのに下の名前で呼び捨ててるんですか」
「最初はあんなに優しかったのに」
「自分の行いを見直してくださいね〜〜」




 迅さんを見た とりおは何となく不服そうな顔をして扉の向こう側に消える。そして、とりおがいなくなったのを確認すると、迅さんは貼り付けていた笑顔を消した。

 あんなに優しそうな顔をしていたのは一瞬で、ボコるから2人きりにしろっていう合図だったのだろうか。それを とりおは承諾したということ? いやいや、冗談じゃあない。とりおが承諾したとしても次は私に許可を取ってほしいのだけれど。せめてちゃんと私に許可をとってくださいよ。ムカつくからボコっていいですかって。お願いだから、私にも聞いて。本当に三輪先輩とは、ほんの少ししか迅さんの悪口は言っていない。顔あいつムカつくよなーくらいしか話していない。本当にボコボコにされるのなら、もっと言っておけばよかったと思っているくらいだ。




「修のお母さんに、おれの事を嫌いにならないでくださいって言ったんだって?」
「……はあ?」
「謝ったら、もう良いです。ボーダーはそういう仕事なんでしょって言われたよ」
「怒ってるのかと思いましたけれど、そんな話? あれは本当に迅さんの為に言ったわけじゃあないですから気にしないでください」
「何で おれがお前に怒るの?」
「悪口言われたらムカつきません?」
「ああ、でもおれほら。よく言われているじゃん? もう流石に慣れるだろ〜〜」
「それはそれでどうかと思いますけれど、確かに迅さんって緑川くんを除いた割と全てのボーダー隊員に迅さんってマジで性格悪いって言われていそうですもんね」
「流石に面と向かって言われると傷付くんだけどな〜〜。苗字ちゃ〜ん」




 迅さんの場合は自業自得じゃんと思う私に対して迅さんはコロコロとテンションを変える。何だコイツ。ジェットコースター並みの感情のアップダウンあるけど、大丈夫だろうか。情処不安定なの? でも残念……。私は友達の悩み事しか受け付けないようにしているので、迅さんは玉狛支部にお願いします。

 ……と、いうのは 言える空気ではないので勿論言わないけれど、流石に気まずい。何か話せよ。いや、私も何か話せよ。でも、私って生憎嫌いな人の好きなものには興味がないし、どうしたものかなあ。




「迅さんを嫌わないでって言ったのは、今回の三雲隊員の怪我は私にも問題があったんだろうなって思ったからです。私が迅さんの言う事を聞いて、あの戦闘を避けていたら三雲隊員は無事だったんでしょ」
「……どうだろうな、そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない。おれにはお前が黒トリガーになる未来も見えてたんだ」
「それを聞けて良かったです。こんな私にも、いざという時にはそういうやり方があるんですね。肝に命じます」
「肝に命じないで。おれが冬島さんに怒られる。あ、そうだ。今度会ってほしい奴がいるんだ。お泊まり会の日に会ってみてよ」
「迅さんには隠し事は出来ないんですか」
「まあ予知できるしねー。おれ」
「もうなにこの人、怖い」




 迅さんに個人情報が筒抜けなのは今に始まった話ではないし、別に迅さんとは今日が終われば昔同様特別話をする仲でもなくなるだろう。

 それに有名な話だけれど、迅さんは基本的には本部にも玉狛支部にもあまり顔を出さない。今日顔を出したのだって、三雲隊員のお母さんに何か言われて偶々私がいる玉狛支部の光景が見えたからに違いない。何故会いに来たのかは最早意味不明といっても良いくらい意味不明なのだけれど、もしかしたら、迅さんは滅茶苦茶礼儀正しい人で、私に何か言わなければ気が済まなかったのかもしれない。そんな気がしてきた。だって、迅さんって基本的にボーダーにとっては''良い人''だから。私としては敵に回したくない男 No.1なのだけれども。そんな男がラスボスな時点で人生詰んでるだろとかそういうツッコミは今は求めていないので、どうか暖かい目で見守っていてほしい。




「お前は そうやってずっと笑っててよ。その笑顔は周りを笑顔にする。その言葉は人の罪を軽くする。お前は、おれの為に黒にはならないでくれ」
「……そういうの大丈夫です」
「待って。おれの切実な願いを切り捨てるのやめてくれない? ちゃんと聞いてた?」
「聞いてました」
「名前ってそういうところあるよな」
「呼び捨てやめろ」
「お前も呼び捨てじゃん」
「もしかして、聞こえていない……!?」
「お前もその顔やめろ」
















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Espoir