黒歴史の産物






 今日は1月31日。今日で一月が終了すると考えると、なんというか とても早い1年だったなと思う。とっきー達と初めて同じクラスになって顔を合わせた時は、まだとっきーとはそんなに親しくなくて、どちらかというと中学が同じだった とりおとの方が沢山会話をしたような気がする。

 文化祭も体育祭も、なんだかんだ色々な行事をやったのがなんだか懐かしい。ああ、来年は誰と同じクラスだろうか。とっきーとか佐鳥ちゃんとかと同じだったらいいなあ。ああでも、ボーダーが集中するのは成る可く避けているらしい(あくまでもらしい)から皆一緒のクラスであるという可能性は極めて低いのだろう。けれど、そうはいっても、私達のクラスには私含めて4人のボーダー隊員がいる為、説得力にはかけると思う(しかし、1学年のボーダー隊員は約20人程の為、意外と振り分けられている)。他クラス(1Cと1Eを除く)にも体育祭時はズルいと非難の声を滅茶苦茶浴びせられたし、しっかりと一年の得点王のクラスに輝いた。ありがとうございます。




「なんかさあ、あっという間に今年も終わっちゃったって感じがするよね〜……」
「今年度は終わってないだろ」
「もうとりおとは2年間もクラスが同じだから来年は地味にクラス離れるの寂しい」
「大丈夫でしょ。苗字は来年佐鳥とクラス同じって先生達が前に言ってたよ。苗字は3学期の中間3位だもんね、来年はC組じゃない? 振り分け的に」
「えー、苗字来年はA組がいいなあ」
「そうなの? おれは苗字と同じクラスなら何組でもいいと思っているけど」
「えっ、うそ……。とっきー、苗字には佐鳥ちゃんがいるんだからダメなの……」
「おれは本気だよ」
「時枝も苗字も、その茶番見せ付けられる俺の気持ちになってみたらどうだ」




 ごめんごめん。へらりと笑って、相変わらず とりおととっきーと席を囲んで遊んでいる。最近では私のハマっているRPGに付き合ってもらっているのだけれど、2人ともしっかりとやり込んでくれているようで、なによりである。昼休みには佐鳥ちゃんとかとも通信して遊んでいる。廃課金者の私にはまだまだ全然及ばない3人だけれど、神に愛された烏丸京介くんと、聖人時枝充くんは神の引きを持っているらしく滅茶苦茶いい装備を1発目から引き当てていた。流石に目が点になりそうだった。神に愛された2人と私と佐鳥ちゃんの引きに格差がありすぎるのではないだろうか。

 因みにゲームは無課金でも十分に遊べて基本的にはモンスターを倒してアイテムドロップしてお金に変えるという感じのよくあるゲーム。装備だってガチャを引かずともアイテムを滅茶苦茶集めれば作らないこともない最強装備など諸々ある。とても楽しい。ありがとうゲーム会社さん。




「そういえば、奥寺くんって私達の会話に全然入ってこないよね。そもそも、私って今年遠征とか防衛任務に行きすぎてロクに学校に来てないから話す機会ないや。折角東さんの部隊の貴重な隊員なのになあ……」
「単純に向こうが苗字みたいな面倒な隊員とは関わりたくないんだろ」
「えっ、だから苗字って出水先輩達みたいな面倒な人達が集まってくるの? まさに類友って事? 涙がでそう、無理しんどい」
「あとすぐに泣くのがウザい」
「ねえねえ、とっきー。なんで烏丸京介くんってこんなにウザいのにモテるの?」
「烏丸のそれは愛情表現だから」




 とっきー、それは無理があるだろ……。木虎ちゃんの時もすごい無理があったと思うのだけれど、とっきーは中々無理なフォローをする時がある。大体、烏丸京介くんは私の事がそんなに好きではない上に人生の敵である。

 実際に烏丸京介くんのせいで私は折角高校が同じ香取ちゃんと仲良くなりたくても仲良くなれないし、結構実害もある。最悪だ。顔面重視で好きになる子は私のことを敵対してくるし、今だってあんまりクラスで仲良い子とかいないし、なんだろう。よく考えると、実害しかないような気さえしてきた。




「でも苗字のいう通り、今年は色々あったね。おれ入学したての頃は苗字と仲良くなるって思ってなかったし正直驚いてる」
「わたしも」
「仲良くなってみて改めて思うけど、生身でも緑川くらい動けるのになんで苗字は攻撃手じゃないの?」
「私、結構早い段階からサイドエフェクトがあるって事が感覚的にわかっていたんだけれどね。それを生かせる役割ポジションはなんだろうって考えたら狙撃手だったんだよねー」




 そうなんだ、と一度会話が終了して放課後の教室はシンとした。

 ちなみに私達が今、何をしているかというと佐鳥ちゃんのクラス待ちである。佐鳥ちゃんのクラスを待っている理由としては、いつも一緒に帰っているからというものと、今日に関していえば、偶々とりおのバイトがなくなった為(バイトの先輩からシフトを交換して欲しいと言われたらしい)、これから遊びに行くからである。




「苗字、来年は天羽くんと同じクラスになってみたいなー。結構好きなんだよねー」
「今年の感じ見てわかるけど、苗字は学力的な意味で佐鳥か別役を任されるでしょ。よかったじゃない。ボーダー隊員が1人はいるクラスが確定してて」
「でも、別役くんは話した事ないな〜」
「大丈夫でしょ。苗字なら」
「根拠がなさすぎない???」




 私達が こんな会話を繰り広げていると、ガラガラと教室の後ろの扉が開いて振り返ると珍しいお客さんがいた。国近先輩と当真先輩、それからカゲ先輩だ。3年生の教室は上だから一応通り道ではあるけれど、1年の教室にわざわざ来るとは。




「どうしたんですか? 先輩達」




 扉の前まで歩いて、当真先輩を見上げた。

 当真先輩は国近先輩を指差して「コイツは偶々付いて来ただけ」と言うものだから、私の視線は今度はカゲ先輩の方に向く。




「カゲがお前に話があるんだと」
「告白ですか!!?」
「言ってねーよ。自意識過剰か」
「ちょっとちょっと、仮にもウチの学校のマドンナに酷いことを言うのはやめたまえよ」
「マドンナ? コレがか?」
「出水くんのクラスとウチのクラスではそうなってるみたいだよ。いいな〜。可愛い後輩ちゃん、ウチの部隊に欲しいな〜」
「圧倒的ゆるふわ女子の国近先輩に言われると胸を打たれます。ありがとうございます」
「ほんと? こちらこそありがとね〜」




 私も国近先輩と同じ学年が良かったですと言うと「可愛い〜」と言って頭を撫で回された。

 その様子を見た当真先輩が私に「猫かぶりやがって」と言葉を吐き捨て、私の隣そのすぐそばでは とりおが滅茶苦茶 当真先輩に同調するような表情を浮かべる。取り敢えず、一発腹にぶち込んでやろうかとおもった私は絶対に悪くない。




「お前がシフト出さねえから、次のシフト聞いてこいってババアが五月蝿えんだよ」
「あー、最近それなりに忙しくて……。バイトなら私は月木以外は入れますよ! でも、今週の土日は予定があるのでお休みでお願いします」
「またゲームかよ、クソチビ」
「生き甲斐ですもん。そんな事よりも、カゲ先輩。映画に行きましょうよー。この間貸した漫画の映画! 来週公開です!」
「まだ読んでねえ」
「なんでよ!! 早く読んで!」




 待て待て待て。後ろから当真先輩の声が聞こえて、振り返ると呆れ顔の当真先輩と笑顔の国近先輩。うわあ、国近先輩本当に可愛い……。こんな人が太刀川隊のオペレーターとかしんどい。早急に違う部隊に変えて欲しい。




「何ですか? 当真先輩」
「お前、防衛任務入らない気かよ」
「入りますよ、月3回だけ。後は全部カゲ先輩の家のシフトに詰め込もうかと〜」
「お前そんなに金に困ってんの?」
「いや、我が家は三階建ての高級住宅です」
「ぶっ殺すぞ、ひよっこ隊員」




 「伝えておく」と、ポケットに手を突っ込んだカゲ先輩に「映画よろしくお願いしまーーす!!!」と大きな声で言うと「五月蝿え、クソチビ」とマスクを下げてあっかんべー。いや可愛いかよーーーと、思うじゃないですか。でも視線を少し下げると下の方で中指がシッカリと立てられていた。カゲ先輩本当に……。全く、照れ屋なんだから。苗字もツンデレの友達多くて慣れちゃったよ。主にカゲ先輩ときくっちーのおかげだね!

 そんな事を考えていると、固いものが頭に直撃した。痛すぎる。私はカゲ先輩に「角が当たった!!!」と大きな声で抗議するけれど、カゲ先輩はスタスタと廊下を曲がってしまった。




「影浦くんにも中々意外と可愛いところもあるんだね〜。当真くんも見習いたまえ」
「お前は意外と可愛いくねえよな」
「はっはっは、照れますな〜。どう? 太刀川さんのマネっこ。似てたでしょ〜〜」
「100%おまえ」
「当真くんは視野が狭いね」
「単純に似てねーのよ、認めろ」




 「はい、どうぞ」と、私にカゲ先輩の投げてきたであろうものを渡してくれた国近先輩は物凄く聖母のような顔をして笑い「お邪魔しました〜〜」と、後ろのとっきーととりおを見て当真先輩を引きずりながら帰っていく。

 先輩達が見えなくなるまで見つめた後、握らされたものを確認するとチロルチョコだった。それも前に私が結構好きだとカゲ先輩に話したやつ。覚えていてくれたのか。これはもう間違いなく、ツンデレだよ……。あんな風にしか渡せないところがもう……。カゲ先輩は、もっとああいうのを全面に出したらモテると思うの。




「ごめんごめん、お待たーーーー……佐鳥ちゃんいつきたの!!? ごめん! 本当に待たせたの苗字じゃん!!」
「佐鳥も今来たところですよ〜」
「そっか、良かった……」
「本当は五分前からいたけどな」
「苗字が佐鳥ちゃんに嘘を付かせたの!!?ごめん!!佐鳥ちゃんごめんーー!!!」
「とりまる……」




 そういえば最近、隣の席の子が凄く男の子の恋愛について語ってくるのだけれど、私はどちらかといえばノーマルだからそういう事はわからない。けれど、やっぱり友達の好きな事についてはそれなりに理解したい訳で……。いや、理解はしたくないけど、バッサリと否定するのはどうかと思うので、だからちょっと、とっきーと佐鳥ちゃんでイチャついてみてくれないかな? と思うんだよねー。

 私の発言に、とっきーと佐鳥ちゃんは二人で話していたのにピタリと話すのをやめた。因みに、私の顔は とりおに向いているので 二人が話をやめたのは驚いた。聞いていたらしい。流石に衝撃的な発言だったとはいえ、そこまで表情を消されると苗字もスッゴく申し訳ない気持ちになってしまう。




「シッカリと染まっているな。その道に」
「だって、理解できないって切り捨てるのもどうかと思わない? 例えば とりおが三雲隊員に、僕 女同士の恋愛に興味があって……って言われたら、考えちゃうでしょう?」
「苗字と香取で?」
「……知ってて言っているのかな?」
「そういう風に捉えて欲しいのかと思ったんだが、外れだったな。悪いな、苗字」
「それで苗字はおれ達にイチャついて欲しいの? 頭のネジ外してきたの?」
「ご、ごめん、とっきー……」
「苗字は反省して」




 そういいつつも、とっきーが佐鳥ちゃんを引き寄せて頭を撫でたり抱き寄せてみたりするのをみて私は固まったし、とりおも目を細めていた。敢えて言おう。私はノーマルであると。全くよさがわからなかった。いや、みててしんどいとまで思わない。私だって、キスとかまでは全然セーフだと思うよ。でもセックスはちょっと無理でしょう……。ど、どっちが男役で……とか想像したくない。まって、こんな単語入って来ている時点で私はやられている。




「とっきー、ごめん。本当ごめんなさい、苗字が悪かったのでやめてください。もうそんな二人は見たくないです」
「これに懲りたら金輪際言わないでね」
「は〜〜い。ていうか話は変わるんだけどさ、2年生って羨ましくない……!? だって、嵐山さんが先輩にいたんだよ!? じゅんじゅんが!! 私も、じゅんじゅんの事、嵐山先輩って呼びたかった!!」
「苗字って本当に嵐山さんの事好きだよね。あ、でも木虎は嵐山先輩って呼んでるよ」
「ずるい!! 佐鳥ちゃんは!?」
「オレも苗字と同じ。じゃあ苗字、今度 佐鳥と一緒に先輩呼びしに行く?」
「佐鳥ちゃん最高!!行く〜〜!!!」
「コイツは馬鹿なのか?」
「さあ」




 「そこは否定してよ、とっきー」という私の言葉に対して、とっきーは「さっきのお返し」と笑う。なにこの天使。とっきーは聖人兼天使だったの?? だから神様に愛されてるの? それならば、とりおの数段上の愛され方をしているのだろう。苗字には解る。そして、とっきーなら許せる。ちゃんとボーダーらしく街を守っているもんね。私たち冬島隊なんて、お前等みたいなのがボーダーとか世も末だな、みたいな当真先輩と私で攻撃をしているヤバい部隊だから……。

 学校を出た私達は駅の方へと向かう。駅前は結構栄えているから、遊ぶのならばとてもオススメだ。ただ、知り合いに会いたくない時は絶対に避けたほうがいい。ボーダー隊員なんて沢山いるから会いかねない。本当に注意だ。デートの時なんかは絶対に来てはいけないスポットのNo. 1に見事に輝いている。




「来てみたはいいけれど、どこ行こうね。皆行きたいところ……。うーーん、なんでこんなに趣味違う人が揃っているの?」
「なら苗字の家行こうよ。近いじゃん」
「ええー……苗字の家に来てどうするの? 私の家なんてゲームくらいしかないよ」
「はい! 佐鳥はゲームやりたいでーす」
「佐鳥ちゃんが言うならいいけれど、部屋が汚い気がする……。あ、今日玉狛支部に行ってもいい? 迅さんが今日明日で泊まりなよってシツコクて」
「ひとりで大丈夫か?」
「迅さんに来てもらうから大丈夫かなあ」
「……やっぱり俺も今日は玉狛に行く」
「え? 大丈夫なの?」
「今から連絡すれば問題ない」




 急にどうしたのだろうと頭を捻らせながら歩いていたが、途中で面倒だからと考えるのをやめた。どうせ大した理由ではないだろうと思うし。自分の弟子が私に何かされないかとかを心配しているのだろう。そこは多分、大丈夫。私は三雲隊員には恋愛的な意味ではなく、少しだけ興味があるけれどーーー基本的には年下にあまり興味がない。いま私の中で興味があるとすれば、同級生と年上だけだ。別に、やましい意味ではなく。じゅんじゅん格好いいなーとか。来年も このメンバーの誰かと同じクラスになりますように、とかそんな感じの興味だ。

 三雲くんに関しては、また違った意味でだけれど、決して恋愛的な意味ではない。断じてだ。




「ここなんだけど、ちょっと私の部屋に入るのは待ってて!! ちょっとでいいから!」
「エッ、苗字の家でか……」
「思い出して、佐鳥ちゃん。私はこれでも第一志望は那須先輩の学校だった人間だよ」
「ああ、そうだった!! そういえば、苗字なんでウチの学校にいるの!?」
「受験の日インフルエンザでした」
「苗字は神様に嫌われてるの……?」
「やめて、佐鳥ちゃん。傷付いた。少しだけ3人は玄関で待ってて!! 片付けてくる!」




 例えば、今日脱ぎっぱなしてきた服が散乱しているだとか、そんなものを片付けるために時間を頂いた訳なのだけれども、こんなものを同級生に……しかも、佐鳥ちゃん達に見られるのはね。流石に気まずいから、片付けますとも。他にも見られてはいけない、ボーダー隊員悪口ノート。今日掴んだ戦闘メモなど諸々ある。勿論、こっちがメインである。それらを、ざっと片付けて、ぱっと見片付いた時点で割と5分程経過しているので、これはマズイなと玄関にいる3人を迎えに行って、玄関から階段を登って2階の自分の部屋へ招く。

 招いてからは、そういえば昨日お母さんが美味しそうなお菓子を買っていたなとかお茶とジュースどちらがいいだろうかを考えて3人に顔だけを向ける。




「お茶とジュースどっちがいい? あ、いいや。取り敢えず、あるもの持ってくるね」




 キッチンに置きっぱなしになっているお菓子の大袋を3袋ほど手にとって、棚からお盆とコップを取り出す。

 お菓子を脇に挟んで、挟んだ方の手でお盆を持つ。そして更に反対の手に2リットルのジュースとお茶を持って上に上がると、廊下に出ていた とっきーと目が合う。とっきーは物凄い量を持って階段を上ろうとする私を見て、息を吐いて階段を下って来た。




「苗字って、本当に逞しいよね」
「よ、よく言われる」
「この場合は褒め言葉じゃないから喜ばれると どうしたらいいか分からないでしょ。取り敢えず、飲み物とお菓子は持たせて」
「ありがとう、とっきー」
「こちらこそ。急な佐鳥の提案を飲んでくれてありがとう。苗字」
「どういたしまして」




 部屋に入ると佐鳥ちゃんはビックリする程姿勢を正して座っていて、とりおは対象的に妙に寛いでいた。やはり、烏丸京介くんは女の子慣れしているから女の子の部屋くらいでは動じないらしい。可愛くない奴め。その点、佐鳥ちゃんは あんなに分かり易く……。うんうん、いいんだよ。佐鳥ちゃんはソレで。佐鳥ちゃんには苗字がいるもんね〜〜!!! 大丈夫だよ。もし貰い手がいなかったら苗字が貰ってあげるから!!!

 ……でもよく考えたら、佐鳥ちゃんが来たいって言ったのに、あんなに緊張しているなんて、どういう事だろうか。このイベント、攻め女子が頑張るだけの乙女ゲームのイベントか なにかなのかな?? 乙女ゲームとか苗字はプレイした事ないよ。私は基本的に当真先輩とかカゲ先輩とかとRPGに励んでいるからな〜〜…。




「とりおは麦茶とジュースどっち?」
「麦茶」
「佐鳥ちゃんは?」
「ジュース!」
「とっきーは……仕事が早いね」
「ごめん、勝手に開けちゃった。苗字は?」
「苗字も麦茶」




 飲み物を飲みながら、お菓子を開けて特にゲームを始める事もなく好きな事をやって過ごしていると、ようやく慣れてきたのか佐鳥ちゃんも足を崩し始めた。しかし、こちらを見て欲しい。とりおなんてテレビの情報番組見てるからね。なんなの、とりお。凄いな……。そしてまた視線を動かして見ると、とっきーは私の部屋の漫画本を手にとってペラペラと捲っていた。とっきーに関しては漫画とか興味あったのって感じだよ、私は。

 そんな三人の様子を観察しながら、携帯を触ったりと私自身も特に3人を気にせずに携帯と遊び始めた頃、佐鳥ちゃんが「あ」と声をあげた。




「??……どうしたの?佐鳥ちゃん」
「苗字、滅茶苦茶可愛い」
「エッ、ばか!! それはダメなやつ! 今となっては ただのコスプレじゃん!!!」
「うわー、苗字と同じ学校が嫌だって思った事なかったけど、オレはコッチの苗字の方が良かったなー!! やっぱ苗字は赤似合う!」
「佐鳥ちゃん!! ビー クワイエット プリーズ!!! それは本当に黒歴史!!」
「ねえ、この写真貰っていい?」
「なんで!!? 何に使うの!? 別に 佐鳥ちゃんだからいいけど、とりおには絶対に見せーーーあああ!! 言ってるそばから!?」




 面白いネタを見つけたからか、とっきーも とりおも佐鳥ちゃんの持っている写真を覗き込んでいた。あれはそう。もう90%くらい合格が決まっていると、にのみーからも、嵐山さんからも、鬼怒田さんからも言われたから ちょっと当時の苗字は調子に乗ってしまったのだ。まさか、インフルエンザにかかるとは思わなかったし。しかし、それもこれも言い訳でしかなく、更に言えば、彼らからしたら私がインフルエンザなのかどうかも疑わしいかもしれない。故に言い訳するのは諦め、写真を奪い返して本の間に挟んだ。

 まさか、こんなに身近に地雷があるとは。そういえば、最近那須先輩とは本当に顔を合わせていない。そもそも、合わせる顔がない。あの学校を受ける事もできなかった時は、本当に鬼怒田さんにも嵐山さんにも二宮さんにも暫く会わずに避け続けた程である。本当にお世話になった人に申し訳なくなりました……。黒歴史だ。




「こんな事いうのは不謹慎だって解っているけど、おれは苗字と同じ学校で良かった」
「とっきー、大好き……」
「だから写真貰ってもいい?」
「だからなんで!!? なんで写真にこだわるの!? この写真なら写ってる人は皆持ってると思うけれど……」




 那須先輩と私と冬島さんと鬼怒田さん。実はこれは生身ではなくて、トリオン体で服装の設定を制服に変えて貰っただけの写真だ。けれど、コスプレみたいなものだと勝手に思っているし、実際に写真だけ見たら ただのコスプレ。

 いや、一応私も学生だから制服交換っていう魔法の言葉を使えばギリギリセーフだろうか。年齢的には全然セーフだ。うん。




「苗字、卒業アルバムないの?」
「苗字は中三の時、地味でブスって言って言葉の暴力浴びてたから、できるなら見せたくないかな……。ね? 烏丸くん」
「前髪のインパクトが強すぎた記憶はあるな」
「そうなのかな。うーん、でも目にかかる位だったよ? 今はちょっとオン眉みたいな感じだけど……え、いまも変?」
「いや、今は問題ない」




 この話ももうすぐ一昨年の話になるって思うと年が経つのは本当に早いよね。とりおに同意を求めふ。しかし、とりおは『何言ってんだ?コイツ』みたいな顔をしてガン無視してきた。マジでなんなの。苗字、もうそろそろ心折れるかもしれないんだけど。もう最悪私の事は嫌いでもなんでもいいけど、せめて会話のキャッチボールくらいは成立させてくれても良いんじゃないの……。それすらも嫌というレベルで嫌われているんだとしたら、何故態々我が家に足を踏み入れたの。明日のゲーム大会大丈夫なの……??

 私が頬を膨らませて目を細めていると、とりおは私を見て笑った。




「変顔か?」
「お前が私に対して久しぶりに笑ったかと思えば、そんな言葉しか出てこないのか……」
「ああ、悪い」
「肯定すんな!! 何だコイツ!!!」




 そんな我々を見て、佐鳥ちゃんととっきーは「本当に仲良いよね」と言う。だから、本当にどうしてそういう結論に至るのか聞きたい。もしかして、男女の仲良いの定義が違うのかな。なるほどね。これでやっと苗字にも理解できたよーーーなんて、なるはずもない。確かに、男女の仲良いの定義が違うかもしれないよ??

 でもその違いっていうのは、納得できる範囲の違い……誤差みたいなものなんじゃあないの!? 違うの!?




「そんな事より、苗字ゲームやろうよ」
「佐鳥ちゃんの馬鹿」
「どうしよう、とっきー……オレ、苗字が可愛すぎて全然怖くないんだけど」
「本人の前で言っちゃうところが本当に佐鳥らしいよね。すごいと思う」











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Espoir