
玉狛第二
玉狛支部の壁に寄りかかりながら、とりおとゲームをしていた私は珍しい人から飛ばされてきたメッセージを開いて、直ぐに遊真達がランク戦に向かうよりも一足先に玉狛支部を出た。先に本部に行く事を伝えた時は小南先輩に「なんで!? また佐鳥!!?」と物凄い剣幕で迫られたけれど、残念ながら違う。唯我くんだ。唯我くんといえば可愛いし、あれで結構真面目な性格をしているから本当にズルイ。普段散々出水先輩から何をされたコレをされたと言っているから案外直ぐにボーダーをやめるかと思いきや、そんな事もなく まだまだボーダーは続けそうだから私も内心少しだけ安心している。
そんな私が唯我くんにどのようにして呼び出されたのかといえば「一緒にB級ランク戦の観戦に行かないか」と言って呼び出されたのである。なにもう、可愛いかよ……。そりゃあもう、行きますとも行きますとも。ランク戦観戦は流石に嫌すぎるから玉狛第二が出る時以外はモニター観戦なんだけどね。唯我くん的にも、そちらの方がありがたいだろうと思うーーー……とはいえ、今の時間はもう既に昼の部も終わってしまったからデータ観戦になるのかな? タブレット借りておこう。本部に到着をした私は開発室に行き、タブレットを借りて、唯我くんとの待ち合わせ場所に行く。すると、眩しい笑顔を浮かべている唯我くんが視線に飛び込んでくる。正確には期待に胸を膨らませて、心躍らせているのが丸わかりな表情を全面に出して立っている唯我くんがいた。
「どうしたの? 良いことでもあった?」
「よく聞いてくれた! 苗字!!」
唯我くんはランク戦を観戦するのが初めてで、今とてつもなくワクワクしている。簡潔にいうのならば、このような内容の事を口にした唯我くんだけれども、今の時間は既に昼の部のランク戦は全て終了してしまっているわけで、私としても正直掛ける言葉が見当たらず、あからさまに微妙な顔を浮かべる。唯我くん、まさか今日からランク戦が行われるという事しか太刀川隊の皆から聞いていなかったのではないだろうか。
ランク戦には昼の部と夜の部があって各チームが昼夜、また上位、中位、下位というグループに分けられてランク戦をするというルールも聞いていないのでは? いやいや、流石にそれはないーーーと、信じたい。しかし、太刀川隊。ランク戦なんてこれっぽっちも興味なさそうな唯我くんには教えなくてもいいという事だろうか。日程くらいは教えているようだから、そんな事はない? いや、あの人達の事だから私にも流石に解らない。
「唯我くん、ランク戦っていうのは夜の部のランク戦の話をしているんだよね?」
「……夜の部?」
「夜の部は まだ先だから今はタブレットで観ようって意味で私を呼んだんだよね?」
「タブレット……?」
Oh!! My god!!!!
太刀川隊! なんで話していないの!? そんなことで良いの!? そんな事があっていいの!? 一応部隊の仲間じゃん! 冬島隊だって偶には苗字ハブって無線で会話したりしている時はあるけどランク戦についてくらいは教えてくれたよ!!! もうちょっと色々教えてあげても良いんじゃないかな!? 唯我くんも隊の仲間じゃん!! なんでこんな酷いことするの! 出水先輩に抗議しないとじゃあない!?
「えっと、ランク戦っていうのはーー……」
B級が今21
でも君は悪くない。こういう事は部隊長である太刀川さんが前もって話しておくべき事である。特に割と最近入隊した唯我くんは既にA級でB級ランク戦云々については全く知らない上に知らなくても良い(問題ない)内容なのだから知る機会もなかったに違いない。
「じゃあ、今日のランク戦は……」
「昼の部は終わっちゃったから夜の部なら見られるけど、唯我くん時間大丈夫?」
「苗字こそ、その、一緒に観る相手……とかは大丈夫なのか? いないのなら!! ボクが一緒にに見てやってもーーー……」
「うん、観よう!!」
「!!し、仕方がない! これは苗字がどうしてもボクと観たいというから観るのであって決してボクが頼んだわけじゃないという大前提の下に成立した約束事で、苗字から破る事は許さないぞ!」
「尊っちは本当にかわいいよねー」
「は?」
「まって。急に温度差やばくない?」
あーーー。でも苗字も実は佐鳥ちゃんに「真後ろで見てるからねー」とか言っちゃってるんだよなー。まあでも、後ろから見守るっていう前提に変更はないし、こっちもこっちで今更断れる感じじゃない。それ以前に、尊っちが滅茶苦茶楽しそうにしているから、そういう余計なことを言うのはやめようと思う。別に一人で行くとは言っていないから問題はない。
問題がないのが分かったところで、さて空き時間をどうやって過ごそうか。本当にデータを漁るのでも良いのだけれど、唯我くんはデータなんかで知識溜め込むよりも実戦でジワジワと実力をつけていくほうがいいに違いない。そうなるとフランス語を習う? いや、教えてくれるかどうかが微妙なので却下。ゲーム……も、まあ却下だろう(私は大賛成だが)。
「唯我くん、どっか行く?」
「苗字の行く場所は信用していない」
「なんなの、怒るよ。帰るよ、苗字」
この時間だから あまり人もいないだろうと食堂でタブレットを机の真ん中に置き、土曜日だからと売っているパンを買って食べながらタブレットをいじる。行儀が悪いと唯我くんには言われたけれど、最早私のコレは習慣化している事だし、作戦室では日常茶飯事と言っても過言ではないレベルで頻繁に行われている名付けて必殺同時進行であるからして唯我くんの発言には無視を決め込んだ。
「あれ、名前ちゃん先輩何してんの?」
「パン食べながらタブレットいじってる」
「そんなの見ればわかるよ」
「なんで聞いたの?」
「その人といるからに決まってるじゃん」
『その人』とは、唯我くんの事である。ボーダーではやたらと唯我くんへのアタリが強かったり、扱い方がわからなかったりと唯我くんに自ら関わりに行く人は少ない(確か親がスポンサー関係云々だからとかなんとか真木さんが言ってた気がする。当真先輩は単純に気が合わなそうだから無理だと言っていた)。
その中でも緑川くんは唯我くんに干渉しない側の人間で、大多数のうちの一人に属する。そもそも、私が必要以上に唯我くんに関わりに行っているだけで多くの人は基本的には自ら望んで関わりにはいかないタイプの子だと思う。木虎ちゃんなんて、前の感じでわかると思うけれど唯我くんを見る目が冷たすぎる。
「今日唯我くんと一緒にランク戦観戦するんだよね〜。緑川くんは来るの?」
「あー……オレ達は夜防衛任務。冬島隊は次いつ防衛任務入ってるの? やっぱ、名前ちゃん先輩の都合で平日だけ?」
「バイト入れちゃってるしね。でも今ボーダー忙しいから仕事は結構回されそう」
「でも記者会見終わったし、広報の結構デカそうなイベントも終わったから嵐山隊から仕事が回るって事はないでしょ?」
「うん。だから今月は殆どバイトかなあ」
「戦功貰ってもお金足りないの?」
「それは禁句だから」
それからというもの。あまりにも敵意むき出しの表情で唯我くんを見る緑川くんを見て、ちょっと唯我くんに待っていてもらって緑川くんと席から少し離れたところで話をしてみたところ、分かったことがある。緑川くんは唯我くんの事が好きではないらしい。理由としては、権力だけでA級にのし上がって来た感じがムカつくというものだ。なるほど。だから、苗字も嫌われているんだね……と少し遠い目をしていると、緑川くんはギョッとしたような顔をして「名前ちゃん先輩は権力だけで上がったわけじゃないじゃん。大体なんでそんなに自信ないのさ、チーム戦の時なんてオレの事ボッコボコにするくせに」と頬を膨らませていた。
そんな緑川くんに私も「唯我くんも別に決して弱いわけじゃないし、チーム戦だからこそ力を発揮するタイプの人もいるじゃん」と、唯我くんへフォローを入れると それがまた気に入らなかったのか、はたまた全く別の理由なのか、緑川くんは顔にしわを作って私に見せる。
「オレが今から言う事は名前ちゃん先輩の事 評価してるって意味で捉えてね」
「うん?」
「オレ、チーム戦でも あの人には絶ッッ対に
「…………わ、わあ……凄い自信だね」
「ちょっと!! 真剣に聞いてよ!
オレ今大事な事言ったじゃん!」
「ご、ごめんって……」
名前ちゃん先輩はさあ……。説教モードに入った緑川くんに「あ、もう直ぐ18時になるね!」と笑うと防衛任務を思い出したのかパタパタと(おそらく草壁隊作戦室の方に)走っていってしまった。さてと、それでは私は そろそろ唯我くんの元へと戻らなければと方向転換したところで恐らくこれから解説席に向かうのだろう佐鳥ちゃんと、とっきーを見つけた。
私に気付いてくれた2人に私もヒラヒラと手を振ると佐鳥ちゃんは「苗字本当に来たんだー!!」と私の方へと駆け寄って来てくれた。控えめに言って、天使。なにもう、結婚しよ。
「とっき〜! ゲームぶり〜〜!!」
「うん。あの後 烏丸が文句言ってたよ」
「なんでだろう?」
「それよりも苗字も暇なら一緒に解説席に行こう!! 席取りも兼ねて!」
「私は良いけど唯我くんいるんだよね」
「エッ、なんで?」
明からさまに表情を硬くした佐鳥ちゃんを見て、佐鳥ちゃんをこういう反応にする唯我くんマジで強えやべえなどと頭の悪い事を考えている私にとっきーが「なんで急に唯我と?」と。少しだけ、いつもよりも目が鋭い。
え……、なに?? 唯我くんは聖人とっきーからのアタリも強いの? だいぶ吃驚した。とっきーって、基本的に大らかで優しい神様みたいな人じゃん。それを こんな……。もしかして、私がそういう顔にさせているという事? 強くない? 私と唯我くんって何かを極め切ったヤバイ2人なの?
「オレ、唯我苦手なんだよね」
「ええ!!? 佐鳥ちゃんが!? いい子だよ! 仲良くして見たら可愛いし、頭良いし、可愛いし!! 私なんて親しみを込めて尊っちとか呼んじゃってるよ!?」
「そういうところ!! そうやって、苗字が執拗に構いに行く感じがムカつくから好きじゃない。この間だって距離近いし、それに」
「佐鳥、苗字が困ってるよ」
「ボォワ!!? オレ、なんて言った!?」
「苗字が大好きだって言ってた」
「……オレ今日ちょっとお腹痛いから先に解説席行こうかなー!!? また後で!」
本当に見た事ないくらいのスピードで走っていった佐鳥ちゃんを見て、とっきーと私は暫く佇んだ後に顔を見合わせて「取り敢えず席座る?」「うん」みたいな何でもないような会話を済ませて唯我くんと私の座っていたボックス席に腰を下ろした。
その時の唯我くんは とっきーを見つけるなり物凄い失礼な表情を浮かべたので、取り敢えず頭を軽く叩いておいた。私も人のことは言えないと思うけれど、あれだよね。イジられたり、イジメられたりする私みたいなタイプは私にも問題があるからいじめられるみたいな感じだよね。今の唯我くんみたら自分が普段出水先輩達に如何に失礼なのか解ったよね〜〜!
「とっきーは見てくの? ランク戦」
「そのつもり」
「じゃあもう席取りに行く?」
「苗字が行くなら」
「苗字!! 話が違う! 約束してないんじゃなかったのか!? 何でボクが嵐山隊と……! ボクは拒否権を行使する!! 約束が違う!」
「時枝充くん、同い年じゃん。仲良くしようよ、私ととっきー仲良しだから尊っちでもいけるって、とっきー優しいし。はい。キミ達は今日から友達だ〜〜! おめでとう!」
「そういう問題じゃない!! 大体嵐山隊はボクに対しての対応がーー…!!!」
「いいじゃない、別に。それとも、唯我は おれがオマケで隣にいる事に対して何か問題があるって言いたいの?」
含みのある とっきーの発言に唯我くんは黙り込んだ。私も私で、いつもよりも少しだけ視線の冷たいとっきーに笑顔のまま固まって、どうしよう何か唯我くんの為にフォローを入れたほうがいいのだろうか、とか、でもこんなとっきー始めたみた 怖すぎる、とか。色々な考えがグルグルと頭の中を回って結局私が唯我くんに助け舟、鶴の一声をかけてあげる事は出来なかった。
「とっきって意外と怖いよね」
「苗字は怖くないよね」
「苗字には威厳がないって事?」
「後輩の前では充分あるよ」
「ほ、ほんと!!?」
「緑川の前ではないけどね」
「なんてこと言うの! とっきー!! そこは嘘でも言わないところ! まさに一言余計っていうやつなんですけれど!!!」
会話を楽しんだ私達はランク戦観戦の為に解説席の後ろに腰を下ろして、始まるまで佐鳥ちゃんに滅茶苦茶チョッカイを出していた。唯我くんもなんだかんだで入るべき時には会話に参加してくるから本当に頭が良いのだと思う。空気も読めるし、頭も良いときた。もはや向かうところ敵なしである。唯我尊くん本当に強い。強すぎる。というか、ステータスが高すぎると思う。私の方がビックリしてしまうほどには高い。これは本当に。まず、財力の部分で多くの人間が彼の幸運ステータスに敗北である。
ランク戦の夜の部の席は新部隊三雲隊という注目度の高い部隊の初参加という事で、それなりに席は埋まっていた。それに関して大きく驚くという事はない。驚いた事があるとすればーーー解説席に三雲隊長が座っていたことくらいだろうか。これには流石に驚いた。私はてっきり佐鳥ちゃんと桜子ちゃんだけかと思っていたのに。でもそうか、だから三雲隊員は遊真と共に外出の支度をしていたのだろう。私はテッキリあの時は三雲隊員も観戦する側に座るのだと思い込んでいたけれど、解説側に座るとは。
「本日がB級デビュー戦!
玉狛第二の三雲隊長です!」
記者会見に顔を出したという事実があるだけあって、会場は少しのザワつきを見せるけれど、桜子ちゃんの上手い喋りのおかげで あっという間に空気はB級ランク戦そのものへの興味に移り変わった。
「流石桜子ちゃんだねー……」
「苗字は前に凄い迷惑かけてたよね」
「皆に言われたよね。擬音語で解説するのはやめなさいみたいな事。当真先輩には大笑いされたし、二度とやらない」
「東さんも笑ってたって佐鳥が言ってたよ」
「苗字という人間の救いようのなさ」
「それを聞く限りでは、苗字よりはボクの方が上手く解説出来る気がしてくるんだが」
「……唯我くん、語彙力あるもんね」
「納得のいかなそうな言い方じゃないか」
「今度一緒に解説やる?」
「やめなよ。誰にも伝わらないじゃない」
唯我に頼ってたらダメでしょ。とっきーに言われて唯我くんに縋っていると桜子ちゃんに「そこ、イチャつかないでもらってもいいですか? 気になるので」と厳しいご指摘を受けた。桜子ちゃんって本当に容赦ないな……。いや別に特に話したこととかはーーー……なくもない……。結構頻繁にお世話されている。ちょっと生意気で可愛くてヤバイ後輩である。ああでも、あの解説の日は本ッッッ当にありがとうございました!! 今でも偶に桜子ちゃんに音源を借りるのだけれど、本当にあの時の自分の解説は酷いのなんの。
大体こんな感じっていうのを演じさせてもらうのなら、おおっと!!? 影浦隊員がシュパッと……!! シュパッと!! 以下酷すぎて割愛。本当、本当にこんな感じ。酷い……。佐鳥ちゃんでも ちゃんとやる解説でなにをしているんだっていうね。でも苗字はめげないから、今度唯我くんとやりたいですって桜子ちゃんに相談しておこうと思う。
「いつか、苗字も東さんくらい凄い解説出来る人になるんだよ、とっきー」
「そうなんだ。頑張って」
「その頃には私達、ちゃんとA級並みの実力付けられてるといいね! 唯我くん!!」
「ボクとキミを同じにしないで頂きたい」
大画面に視線を向けると遊真が吉崎隊の二人の首を持っていった(切断した)ところだった。本当に末恐ろしい戦闘能力である。なにがどうなったら入隊数日目の子が こんな実力を付けられるのかは最早疑問でしかないのだけれど。まあでも、三雲隊員、雨取隊員、遊真。誰とは聞いていないけれど、誰かは近界民なんでしょう? 私の予想だと迅さんが黒トリガーを手放すクラスの隊員ということで、遊真か雨取隊員が近界民なんだよなあ。
まあそれはおいておいて。小南先輩が遊真の戦闘能力をみるみるうちに進化させ開花させたのかも玉狛支部関係者でない私は全くわからない。分かる事といえば、正式入隊日だったかには既に遊真が緑川くんを倒せる実力であったということくらいだ。つまり、それはーーー……とも考えなくもないのだけれど、またよく考えてみたら 私達遠征部隊が駆り出された あの日は正式入隊日より遥かに前。十分に力をつける時間はあったと言うことでーーーー……
「空閑、噂には聞いてたけど凄いね」
「遊真もだけど雨取隊員でしょ。あのトリオン量、私もこの前間近で見たけど凄いよ。狙撃手として確実に自信を削がれる火力」
「そういう苗字の火力とサイドエフェクトもおれ達 他部隊の戦闘員の自信を喪失させてるけど」
「私なんて全然。彼女と比べたら月とスッポンなんだよ、本当に。もう威力がギャグ。黒トリガーかよ、お前ってなったもん」
前で佐鳥ちゃん達が、これは『待ち』ですね、とか話している中で こんな会話をする私の言葉を真であると証明するかのように建物が全壊し、間宮隊の戦闘員を建物から投げ出した。ほらギャグ!! この威力もはやアイビスじゃなくて違う名前に改名した方がいい規模じゃん!!? あれがアイビスだなんて私は認めない! 私が脳内で自分のプライドと葛藤している間に投げ出され、隙を見せた間宮隊の戦闘員を遊真がまとめて
「しょ…衝撃の決着!! 狙撃手 雨取隊員がアイビスで障害物を粉砕!! というか威力が おかしいぞ!?」
本当に その通りであると思う。比較的トリオンの多い方である 私や、その上の出水先輩、二宮さんが例えば狙撃手であったとしても雨取隊員程の威力は絶対に出せない。
玉狛のトリオンモンスターと呼ばれるだけの火力を持っているのだ。なんて羨ましい。あの有能なサイドエフェクトに加えて、黒トリガーに勝るとも劣らないトリオン。なにもう、雨取隊員反則じゃん。天から授かっているものが多すぎるじゃん。苗字も あれくらい火力があったらスーパースターだったのにな〜〜……。
「生存点の2点を含めて 一挙8得点!? 強い! 強いぞ このチーム!! この一戦で暫定順位は12位まで急上昇! 早くも中位グループに食い込んだ! この勢いで どこまでいけるか 玉狛第二! 水曜日にあたる第2戦の相手は……暫定順位10位 荒船隊! そして同じく8位の諏訪隊!! B級に現れた新星の戦い 次回も大注目です!」
もう12位とか凄いなとモニターを暫く眺めて、ふと視線を横に向けると唯我くんが未だに口を開けたままポカンとしていた。先程の雨取隊員のギャグみたいなアイビスが余程印象的だったのだろう。気持ちはわかる。同じ狙撃手として、少なくとも私は雨取隊員を恐ろしいライバルだと思っているくらいなのだから。まだ初戦で実力もわからないけれど、サイドエフェクトに加えて、あのトリオン。警戒しておくに越した事はないだろう。
その割には佐鳥ちゃん達は話題に出さないけれど、佐鳥ちゃんや当真先輩くらいの腕があれば ひよっこ隊員なんて全く気にならないのだと思う。この人達の狙撃の腕は東さんと鳩原先輩に次いで変態だ。
「苗字先輩!!」
「さ、桜子ちゃん……」
「解説でもないのに後ろで色々言われると気が散ります!! 大好評の苗字先輩じゃなかったら会場追放規模の大事ですよ!?」
「大好評の苗字先輩、とは……?」
「…………言ってません」
「無理がありすぎるよ! 桜子ちゃん!? あ、そうだ! 今度私と唯我くんで解説やりたいから場を設けてよ〜〜」
「無理ですね」
「即答なの!!?」
だってお前は擬音語だし、ソイツは それ以前の問題じゃん(私訳)と宣った桜子ちゃんに「苗字上手くやるから!!」と、どちらが先輩なのかわからないようなやり取りをしていると、「苗字先輩だけなら良いですけど」と物凄くダラシなく顔の筋肉を緩ませて桜子ちゃんが言う。いや、むしろ怖い。
なんなの? どうしたの、その顔。
「おい、苗字。後輩に絡むんじゃねーよ」
「!……当真先輩。どうして此処に?」
「人が出ないだなんだって苦情が来てんのよ。佐鳥と時枝がいながら何してんだ」
「はいはーい!! 当真先輩、佐鳥は苗字の保護者じゃないです!!!」
「口答えすんな。このスットコドッコイ」
「そんな事よりも当真先輩!! 苗字、唯我くんと解説やる事になったんですよ!」
「? まだなってないじゃない」
「とっきーは固いこと言わない!」
私の発言に対して 当真先輩は「お前の解説が誰の役に立つんだよ、降りろ」と完全に否定した。解せぬ。やはりこの男は解せぬ。私の解説がイコールで誰の役にも立たないという方程式を確立させているのだろう。
今に見ていろよ、当真勇。
「東さんに弟子入りするから良いし!」
「おうおう、せいぜい頑張んな。擬音語」
「この野郎、マジで次の防衛任務見とけよ」
「防衛任務は冬島さんにいくからやめろ」
「じゃあ学校!!!」
「ふざけんな。お前立場悪くなったら 直ぐに嘘泣きして周りの同情かうじゃねーか」
「それも作戦なんですぅ〜〜」
「このクソ女……」