
お返しは、もらっている。
個人戦に行くというのは米屋先輩の中では決定事項らしく、パスする事が出来そうになかったので 大人しく後ろをついていって、緑川くん達の戦闘を観察する。うん、強い。私になんて恐ろしい機動戦をみせてくれるの。なんなの、米屋先輩。この人はこれ以上私に何を感じて欲しくて、こんな恐ろしいものを見せてくるのだろうと考えていると、古寺くんが「飲み物を買いに行こうかな」みたいなことを呟いた。これだ。これはチャンスだ。私は古寺くんよりもはやく立ち上がって、先輩と古寺くん、そして三雲隊員の方に顔を向けた。
そして言う。「なにか飲みたいものはありませんか? 私、ちょうど喉が渇いていたので買ってきますよ」と。この言葉の難点は、もう一度この場所に戻ってきますというのが大前提にあるという点と、もうひとつ。お金が無駄に消費されるというところ。けれど、後でやってくるプラスを考えるのならば、結局はプラスなのだろう。今日は米屋先輩にラーメンを奢ってもらえるし、ジュースくらい問題じゃあない。なんなら、ジュースを購入しておけば「奢ったからいいじゃん」という理由で個人戦をパスできる。無理だとしても、これでなんとか無理やりパスしようと思う。
「飲み物買ってくれんのは有り難いけど、後でラウンジ行けばよくね?」
「私は、いま飲みたいんです!!!」
「お、おお……じゃあ烏龍茶で」
3人から飲み物を聞きだして、席を立つ。米屋先輩に合わせてなのか、3人とも烏龍茶だった。古寺くんは勉強会の時に殆ど毎回コーヒーを飲んでいるから、今日もコーヒーを飲むのかと思っていたのだけれど、どうやら毎回コーヒーというわけでもないらしい。それはそうだよなあ。米屋先輩だって出水先輩とか緑川くんといる時はパチパチが楽しいと言って炭酸を飲んでいるのに今日は普通に烏龍茶だし。
まあ、皆が烏龍茶だからといって私も烏龍茶にする必要はないので、私は麦茶にするけれど。
「あれ、村上先輩だ。 お久しぶりです!」
「久しぶりだな、名前。 お前がこの辺りにいるのは珍しいな……個人戦か?」
「まさか。狙撃手は個人戦とは無縁ですよ」
「名前は完璧万能手を目指さないのか?」
「うちの部隊に その要素が必要なら目指しますけれど、私の部隊には必要だとは思わないので目指さないですよ、面倒くさい」
話しながら歩いていると村上先輩は個人戦をする為にこの辺を歩いていたという話を会話の中で聞いた。たしかに、この道のゴールは個人戦のブースしかない。しかし、私と一緒に歩いているということは多分飲み物の買い出しに付き合ってくれるということだろう。
さすが、男前……。気が効く。性格がひたすらに格好良すぎないだろうか。前に佐鳥ちゃんと別役くんが話しているのを勝手に聞いた私だけれど、2人が言うように村上先輩は面倒見が良いなあ。後輩の事をよくみているのがよくわかる。
「あっ、そういえば先輩。私達って最近はあんまり一緒にいないですよね?」
「? 当真の試験対策以来会っていないな」
「ですよね〜〜……。なんでなのか 昨日、諏訪さんに会った時に村上と出水のどっちかと付き合っているんだと思っていたみたいに言われたから どうしてかなと思って」
「……………いや、心当たりはある。すまん」
「……いやあえて聞かないですけど、今の間」
凄く微妙な顔をして謝られてしまった手前なにも聞くことができなかったけれど、鋼くんと諏訪さんの間にどのような会話が繰り広げられたのだろう。滅茶苦茶気になるじゃん……。あえて聞かないと言ってしまった手前、聞くことなんて出来ないけれど。
今度なにかの機会に当真先輩に聞いてみようかな、気になるし。それかちょっと日を置いてから確認するとか。そういえば、あのとき〜〜〜みたいなノリで。しかし、今の先輩の表情的に厳しいかもわからない。これは聞けるのは2年3年と経ってからかもしれない。先は長そうだ。やっぱり、滅茶苦茶攻めの体制で攻めればよかった。鋼くんなら押せ押せで言っても嫌がらないし、怒らないもんなあ。犬飼先輩とかは滅茶苦茶怒るけどね。顔面無表情になったかと思えば無言で席立つとか。寧ろ私の顔面を鷲掴みにきたこともあった。あれはもうなんか、普通にトラウマ。
「……? なんだ? この雰囲気」
「?? ボーダーでは普通に有名人だからじゃあないですか? 攻撃手4位なんですよね?」
「いや、普段はそれ程注目されないよ」
飲み物を購入した私は麦茶と烏龍茶3本を腕に抱えて視線を集める村上先輩の隣に立っていた。途中、烏龍茶は自分が持とうという風に申し出てくれた村上先輩だけれど、これは私の任務のようなものだからと適当な理由をつけてお断りした。流石に自動販売機まで歩かせた挙句に持ってもらうというのは良心がいたんだ。普通に図々しい女になってしまう。図々しい女だという自覚は勿論あるけれども……。けれど、周りからもなんの戸惑いもなく図々しいとまでいわれるようになったらと考えると流石にしんどい。それに当真先輩みたいな人ならともかく、村上先輩みたいな人に持ってもらうのは普通に気が引けた。
話は戻るけれど攻撃手4位でも普段はあんまり注目されないとか本気かな??? 私なんて、風間さんとか太刀川さんとか小南先輩とか迅さんとか、誰がいてもガン見する自信があるけれど。それに出水先輩と個人戦行く時も結構見られる。ああ、先輩視線に疎い的なアレですか。なるほどなるほど。
「鋼、苗字と来たのか。随分と懐かしい組み合わせだな。昔を思い出すよ」
「荒船こそ。
「見んなよ」
「私も妨害で見逃した分を当真と見ます!」
「いや、お前も見んなよ」
というか、妨害ってなんだよ。そういった荒船先輩の言葉に自分も同意だと言う風に頷いた村上先輩を見上げた私は暫く悩んだのちに「いや、ほんと。悟ってください」と口にして、目を細めながら少しだけ離れたところにいる米屋先輩をしっかりと目で捉えておいた。
もちろん、バイト先のお得意様である荒船先輩にはお好み焼きを焼きながら散々色々な愚痴を聞いてもらっている為、直ぐに悟ってくれた。
「村上先輩。彼がメールで話していた玉狛の新人の空閑遊真。私の可愛い後輩なの!」
「はじめまして。オレは鈴鳴第一の村上鋼」
「どうもどうも。玉狛第二の空閑遊真です。あっちにいるのが うちの隊長のオサムです」
「は、はじめまして」
「よろしく」
先輩と遊真の視線が三雲隊員に向いたついでに飲み物を私に行くと滅茶苦茶90度に体を曲げてお辞儀された。えっ、なにこの子。真面目すぎて怖いのだけれど……。
初めて会った時の双葉ちゃんですら、ここまで90度にお辞儀はしてこなかったよ……。
「……苗字先輩は僕が思うよりも ずっと多くの人と関わりを持っているんですね」
「そんな事はないと思うよ。キミが新人だからそう思うだけで、普通だよ〜〜」
「えっ……と、そうなんですか?」
「いやいや、三雲先輩。この人の普通は普通じゃないから信用しちゃダメだよ」
「嘘でしょ!? じゃあ普通ってなに!?」
「まず、大前提に普通の人脈の人は二宮さんと仲良く話したりできないでしょ?」
「でも考えたら 私、にのみーとは4年の付き合いだよ? 仲良くなるでしょう?」
「に、にのみー…………凄いですね……」
え、ええええ〜〜〜〜……?
嘘じゃん。その顔は滅茶苦茶私を遠ざける顔じゃん。三雲隊員、きみ結構顔に出るんだね……。いやでもさ、にのみーは私が一番に仲良くなったボーダー隊員だしさあ……。というか、三雲くんには二宮さんが一体どのように見えているというのだろう。少なくとも、この反応を見る限りでは私と同様の見え方はしていないのだろう。だって表情が二宮さんと仲良く出来るとかマジパネエっていってるもん。いや本当に。
「緑川がいてくれて丁度よかった。対策付き合ってくれよ」
「対策って、なんのですか?」
「……いや、お前なに聞いてたんだよ。この流れは、どう考えても空閑対策だろ」
「じゃあ次は玉狛と鈴鳴が当たるんだね」
「残念だけど、今日はもう無理。たった今負けて、ごっそりポイント持っていかれたとこだもん。今日はもうこれ以上減らせないね。それに名前ちゃん先輩には……」
「緑川くんに勝つなんて遊真すごいね……!」
「はああ!!? 全然凄くないし、オレが滅茶苦茶油断してただけだよ! 次は勝つよ!」
私の右手をとって上下に慌ただしく揺らす緑川くんに米屋先輩は人の悪い顔をして「お前さっきやった分だけ勝てなくなるっていってたばかりじゃねーか」と口を挟んでいた。緑川くんは私の前では……というか、人前であまり怒るタイプではないのだけれど、そのように口にした米屋先輩の事はしっかりと滅茶苦茶睨み付けていた。
私もだけれど、私の隣で三雲くんは滅茶苦茶顔を引きつらせている。気持ちはとてもわかる。
「鋼さん オレでよかったら相手しますよ〜」
まあ、先輩は個人戦をやるために来たわけだし丁度良いかも。負けろ負けろと心の中で毒を吐いていると村上先輩は米屋先輩に「おまえはグラスホッパーつかわないだろう」と冷静に返していた。なるほど。遊真対策っていうのは遊真の『グラスホッパー対策を』ということか〜〜。たしかに、それならば遊真にグラスホッパーを教えたという緑川くんがこの場にいたのは、まさに『丁度よかった』ということになるわけだ。
あ〜〜、でも先輩は観戦席には来ていなかったから、そこまでは知らないのかもしれない。いやでも普通に人脈考えたらわかるか……。そうでなくても、緑川くんはグラスホッパーといえば、という質問で間違いなく名前が上がる隊員だから、そういう考えがなくとも丁度よかったとはなるかなあ、やっぱり。
「じゃあ、おれと戦ろうよ」
遊真の発言に思考が停止する。
いやまずいでしょ、それは。私がそう考えている中も遊真は「直接戦った方がはやい」というような言葉をつらつらと並べる。
「それはやめた方がいいんじゃない!? ねえ、先輩達もそう思いますよね……!?」
「やめとけ空閑。次の試合が不利になるぞ」
「……?」
「うーん、口に出すのもフェアじゃねー感じがするなー。けどまあ、二人の言う通りだ。勝負は試合までとっとけよ」
ただでさえ、鋼くんは強いと言うのに、それに加えて あのサイドエフェクトだ。相性が良い悪いとかいう以前の問題。今勝負するのは、誰がどのように考えたって得策じゃあない。
そりゃあ、遊真1人の手が割れたところで玉狛の皆は大した痛手ではないのかもわからないけれど、三雲隊員は『射手』、雨取隊員は『狙撃手』。それを考えると、攻撃の要である遊真の手の内を知られてしまうのは得策ではないと思う。思うのだけれどーーー……。
「……こりゃ余計に戦いたくなってきたな」
「いや、遊真先輩……」
「わかってるよ。よくわからんが、今戦うとこっちが損するんだろ? よーすけ先輩も あらふねさんも名前も
「………………なるほど……」
「いや、村上先ぱ……」
「名前ちゃん先輩」
村上先輩の方へと歩みを進めた私を止めたのは緑川くんだった。緑川くんは私の腕を、ぎゅっ、と掴んで「これ以上の干渉はなしでしょ」と言う。そうなのだけれど……。私は緑川くんの方に顔を向けた。そうすると緑川くんはなんの迷いもなく、私と視線を交える。
「名前ちゃん先輩は
「えええ……それとは、ちょっと違くない?」
「同じでしょ。ボーダーのランク戦は前回みたいな侵攻時にうまく立ち回れるようにする為の訓練なんだから。そう考えると戦って手の内を知るやり方は、どんな結果になろうと正しい。先輩だって、そう思うでしょ。元々そういう性質なんだし」
「…………元々の性質とは」
「滅茶苦茶城戸派っていう性質」
否定はしないけれどさあ、と視線を右に動かすと遊真と先輩はもうブースに入るところだった。きっと、非公開設定はしないのだろうから此処からでも確認することができるだろう。
しかしなあ……。間に休憩を挟むとやっぱり不利になるのだろうなあ。挟まなくても普通に強いのに。というか、何故戦いたがるのだろう。全く理解できない。情報収集だといわれてしまえば、それ以上こちらから何かを言う事はできないのだけれど。
「さてさて、
「ポイントピンチなんじゃないの?」
「先輩の為にポイント使うならいいよ」
「残念。私は里見先輩意外とは戦りません」
「え〜〜、一馬先輩だけずるいじゃん!」
「あの人には負けられないでしょ、普通に」
「どうでもいい称号争いの戦いじゃん」
「どうでもよくないし、今のところ戦績はギリギリ五分だから なんとかあと一回勝ち越して有利になりないんだよね〜。だから私もポイントはピンチなの!」
「オレ達から確約で奪ってるくせに?」
「痛いところをつくよね」
まあ確かに、偶には……いや、2回に1回は確約(最初から勝ち越した得点数から始めるランク戦)をしているけれど、本当に先輩や緑川くんが楽しみたい時にはポイントの移動はなしという形でのチーム戦をしている。まあそういうズルをしている手前、大きな発言はできないけれど、別にポイントには余りこだわりはない。でも、ポイントが足りない〜〜〜って言っておけば先輩達もわりと素直に引き下がってくれるし、先輩達にポイントの余裕がある時くらいしかランク戦にも誘われなくなる。それが魅力的だから言っているだけだ。
…………いや、でもまあ……。だけ、とはいっているけれど、里見先輩との戦闘の時は それなりにポイントを意識しているから、やっぱりポイントに全然全くこれっぽっちの興味もないという訳ではない。
「緑川、射手設定の苗字と一対一は流石に後で弾バカがうるせーと思うぜ? オレは」
「え〜〜……前のラーメン屋の時もそうだけどさあ、誘わない臆病な先輩に問題がある訳でオレには全然関係なくない?」
「チーム戦誘うので一杯一杯なんじゃね?」
「いずみん先輩ってさ、いつも凄い図々しい癖に戦闘とか絡むと急にダメだよね」
「それな。是非本人にお願いします」
私は戦わないといっているのだけれど、緑川くんには伝わっているのだろうか。米屋先輩と緑川くんの会話を聞きながら(流石に後輩が近くにいる前で変な事は言わないだろうと)三雲くんの近くに避難すると三雲くんは遊真と村上先輩の戦いから一瞬目を離して「苗字先輩は射手だったんですか?」と首を傾げた。
「実際に射手をやっていた期間は2週間にも満たなかったけれど、経験としてはあるよ。ほら、個人戦って狙撃手は参加しないでしょう? そういうのもあってねーー……」
「どうして、射手を辞めたんですか?」
「向いていなかったっていうのと、この人だけは超えたくないなって人がいたからかな」
超えたくない人……ですか、と繰り返した三雲くんに私は大きく頷いた。それがイコールで『狙撃手には超えたくない人はいない』という意味になってしまうのかと聞かれると、別にそうではなくて、狙撃手は単純に向いていたからなのだけれど、という言い訳のような言葉を口にしようかどうしようか迷ってやめた。
「でも、強いよ」
緑川くんが私達の後ろから口を挟んだ。どうやら言い争っていたように見えて、実際こちらの話にも耳を傾けていたらしい。
もしかしたら、彼は聖徳太子のように器用な人間なのかもしれない。そのように私が考えている間にも、三雲くんは緑川くんの方に顔を向けていて顔を自分の方に向けられた緑川くんは三雲くんに「だってオレ、一回も勝てたことないもん」と言う。
「確約確約って言っていたのはオレだけど、ポイント確約をしなくたってオレは先輩には勝てないよ。だってこの人、強いから」
そこは勘違いしないでね。ひらりひらりと手を振って私の腕の中から烏龍茶を取った緑川くんは米屋先輩にソレを軽く投げて「いつまで荷物持ちさせてるのさ」という。その言葉を聞いた米屋先輩は取り損ねた烏龍茶を床から拾った後に「いやお前のやり方怖えなと」と言って、三雲くんの頭を撫でていた。
いやわかる。緑川くんって偶に滅茶苦茶雰囲気がガラリと変わる時があるよね。
「いやしかし、お前んとこのエースはブレない強さがあるよな〜〜。苗字勝てそう?」
「いやいやーーー……」
「ーーー……は? 名前ちゃん先輩なら余裕でしょ。わかってても避けられないんだから」
「私への信頼が怖い……」
「オレは先輩の自己評価が怖いけどね」
そういっている間にも、遊真と村上先輩の戦いは既に3本目へと進んでいた。現時点で遊真に失点はなし。嘘でしょ、これが新人……。いくら、小南先輩が師匠とはいえ、村上先輩に得点を与えないなんて怖すぎるでしょ。
いやでも遊真はまた特殊なタイプだし……。
「そういえば、もうすぐテストなのに この時期にランク戦って結構エグいよね」
「げっ……うっわ、忘れてた。名前ちゃん先輩、今回も勉強教えてよ。お願い!」
「そういってすぐ個人戦しに行くじゃん」
「今回は大丈夫だよ!! テスト前 いずみん先輩に関しては結構真面目だし……!」
「うーん。でもごめん、今年は唯我くんとやるから どっちにしてもダメなんだよね」
「また あの人と一対一なの!!?」
「えええ……。なんでそんな顔するの!? 私は結構唯我くんのこと大好きなんだけど……」
「だからこんな顔してんじゃん!!!!」
「えっ、あー……ありがとう」
まあでも、約束しているから唯我くんとの勉強会をやるという決定事項の変更はないのだけれど。それに唯我くんも私同様にコミュ障だからという理由で他の人を混ぜての勉強会は頑なに拒否するから緑川くんを入れての勉強会っていうのも難しいだろうし。あ〜〜〜〜……でも、出水先輩ならよさそう。意外に太刀川隊は仲が良いからなあ。出水先輩もああみえて、唯我くんのことを可愛がっているようにもみえなくはないし、明らかに他の人よりは優しい空気がある。まあ、じゅんじゅんと綾辻先輩には全然負けるけども。
あの2人はなんというか、別格だった。誰にでもキラキラ。どんな時でもキラキラ。存在がキラキラなんだよね。眩しすぎるよね。性格も顔も。
「先輩は良く名前ちゃん先輩と勉強会してるんだっけ? 確か、月木で」
「比較的そうだね」
「お前らって見かけによらず結構仲良いもんなー。なんだかんだで毎週集まってるし」
「おれと名前ちゃんは あの会の創立メンバーですし、お互い教えたり教えられたりで凄く勉強になるので行ける日は行くようにしているんですよ」
「華ちゃんがくると盛り上がるよね〜。私、華ちゃんとやる応用問題が一番好きだなあ」
「染井さんは纏めるのが上手だよね」
そうなんだよね〜〜、と。そういう話をしているうちに4本目までが終わる。あと1本で半分が終了。今のところは遊真が優勢だけれど、鋼くんの本領が発揮されるのは後半だから これだけじゃあなんとも言えない。
それでも、鋼くんみたいな攻撃手相手に優勢のまま前半を終えようとしている遊真の実力は末恐しい。フリーだったら、こんなにも凄い新人だ。すぐにスカウトの声がかかるのだろう。いいなあ〜。遊真は、まだ全然若いし、将来が明るい系のボーダー隊員だ。私なんてスカウトの声がかかるまでに2年から3年の時間がかかったというのに。
「あ、呼び出しだ。行かなきゃ」
「防衛任務ではないとして、普通にプライベートの用事か? お前を誘うとかスゲーな」
「は、はあ!?どういう意味ですか!?」
「いや、こっちの話。そうだ、苗字。お前 帰りのラーメンまでにはラウンジに集合しろよ〜〜。もう外暗いし、米屋大先生が責任持って家に送ってやるからさ」
「ラーメン行くの? じゃあ、オレも〜」
「緑川は自腹」
「はいはい。わかりました〜〜」
飲み物を手に取って席を立ち上がり、携帯の画面をもう一度確認する。迅さんからだった。最近色々あったから、懐かしいようにも感じるけれど、そうでもないような気もする。でも、連絡自体は そんなに久しぶりというわけでもないのか。華ちゃんとか佐鳥ちゃんとかと沢山やり取りをしていたおかげで凄く履歴の下の方にいってしまってはいるけれど。
「迅さん、こんばんは!」
「久しぶり。テスト勉強はどうだ?」
「調子良いですよ。B級が防衛任務停止でアレだから折角弾いてもらったにも関わらず防衛任務がそれなりに入ってますけれど」
「今は色々大変な時期だから、そればっかりは仕方がないとしか言いようがないな」
「そうなんですよね。それで、迅さん。今日はどうしたんですか? もしかして、急用?」
「あー、名前が個人戦に無理矢理参加させられる未来が見えたから、ついでに救済してあげようと思ってさ。慈善活動だよ」
「やっぱり! ですよね〜〜!!! 知ってた! 迅さん、何か奢りますか!?」
「いや、お返しは貰ったから大丈夫」
「????」