
前払いの善行
鞄の中にあらゆる携帯用ゲーム機を詰め込んで、スポーツドリンクに最近お気に入りのお菓子と念の為にミネラルウォータを詰め込んだ。それから、近くにある勉強道具も念のために入れて、他には何が必要だろうと思案する。
今の苗字名前は通常発揮されるであろう まともな思考が不可能なほどに困惑していた。今日この日の目的は、そう。那須玲の自宅に訪れる事であった。しかし、よくよく考えてみると、那須玲の自宅の場所は知っているけれど、その場に足を踏み入れるという行為をした記憶は名前の記憶上、一度だってなかった。何故ならば、苗字名前と那須玲はボーダーでのみの交流しかなかったからだ。故に名前は混乱していた。もしも。もしも、だ。もしも、会話が途切れたりしたらどうする。その場に助けてくれる人なんていない。鞄の中に押し込まれたゲーム機は、ちゃんと彼女の精神状態を示していたが、実際に会話が途切れた際に彼女がゲームで乗り切る事が出来るのかと聞かれると、それは神あるいは本人のみぞ知る話なのである。
「……行ってきま〜す」
明らかに肩を落とす娘の様子に母は心配そうに見送ったけれど、勉強会という言葉と、かつてよく食卓の場で飛び出した『那須玲』という名前を聞いて口を挟むのをやめた。
母親であるとはいえ、苗字名前という人間は自分に関してとボーダーに関して不利益になる情報を母親に告げるのを控えていた。理由は簡単な話で、母親がボーダー所属反対派だからである。故に、母親の前で名前は過去のあらゆるマイナスな出来事を口にしてこなかった。だから、過去自分に起きた全てを知らないし、那須玲という人間と今どういう状況にあるのかも知らないのだ。実際に名前の選択は正しいかった。それが証明されたのが、先日の大規模な侵攻。もちろん、侵攻で自分に起きた事と起きる可能性のあったあらゆる事象を考えれば、親としての母の意見は最もであると名前自身も思っていたが、あやうくボーダーを辞めさせられるところだったのだ。絶対にこれから先も母にだけは、こういう話はできないし、しないと誓った。
「迅さんは、こういうけれど……」
SNSを立ち上げて、一番上にある迅悠一の名前をタップしてメッセージを開く。内容は『素直に話せば大丈夫だよ』とこれだけが記されていた。『素直に』なんて重要そうなキーワードを入れられたところで、何を話したらいいのかは分からないままだ。
ある日突然距離を置き始めてから、まもなく1年が経過する。1年間も何も言わずに距離を置いていた私を玲ちゃんは許してくれるだろう。けれど、本当の意味で許してくれるのかどうかはわからない。
「……今日は玉狛に寄ってから帰ろうかな」
帰りの道のりを考えるのならば、完全に遠回りになる選択ではあったけれど、迅悠一からの連絡をみて、やはり今日行くしかない、と 改めて決意できたのは間違いなかった。この連絡を見ていなかったら、また、先延ばしにしてしまっていたかもしれない。
それくらい、迅悠一の連絡には強制力があった。裏を返せば、この連絡は『今日行くんでしょ、応援しているよ』となるわけで、どちらに転んだとしても、迅悠一にはこういう連絡を促す未来が見えていたということなのだから、お礼くらいは言いに行った方がいいだろう。そう考えると、手土産なんかも持参した方がいいだろうか。幸い 今日はバレンタイン翌日の土曜日ということもあって、チョコレート配りの予定も少なからずあったし、丁度いい。玲ちゃんのところに行ってから、玉狛支部によって、それから本部で正式なランク戦をしている二宮さん達にも配って、それから明日に今日配れなかった人に配ればいい。因みに、チョコレートはいくつか上手にできた分(僅か5個)を二宮さんと東さんにあげる予定だから残り3つは適当に分けよう。幸いな事に今年のチョコレートはお母さんが手伝ってくれた事もあり、ひどい見た目のものはない。ただ、木曜日に私1人で制作した およそ全てのものの見た目は酷すぎたので、当真と2人で全て完食した。
インターホンの前で石のように固まる身体を動かすよりも前に、家の中から出てきた おそらく玲ちゃんのご家族に招き入れられて、殆ど強制的に入室した私は、なるほどね!! こういう未来もあるから迅さんは今日をお勧めしたんだね!! という確信に近い何かを察しながらも、玲ちゃんの部屋の前まで連れてこられ、そして強制的に開けられた扉の先にいる玲ちゃんに、お客さんがきていたから連れてきた、というような言葉を告げる玲ちゃんのお母様の無知に涙が出そうになる。
そうして「お茶だけでも」と、私をこんなにも気まずい空間に置き去りにして お茶を用意しに行った お母様が改めて玲ちゃんのお部屋に到着するまで、私は一切その場から動く事ができず、お茶を用意してくれた お母様に招かれるまでは部屋の外で、ただ立ち尽くしていた。
「久しぶりね、名前ちゃん」
玲ちゃんのひと言に「ごめん」と、
そう返している自分が恐ろしくなった。
そんな言葉は言うはずじゃなかった。
今の玲ちゃんみたいに笑顔で「久しぶり」と口にして、それから笑い話のように星輪に落ちちゃったと話しながら、少しずつ心中を吐露していく予定だったのに、先手を打たれたと言うだけで、自分の頭の中がパニックを起こして、そうして導き出された返答が「ごめん」だなんて、いったいどういうつもりなのかと 思いきり両頬を叩いて冷静になりたかったのに、身体はやはり、動かすことが出来なかった。
「ーーー……ごめん、玲ちゃん。私が今日ここに来られたのは、私の意思じゃなくて、」
「うん」
「出水先輩や迅さんが私の背中を押ししてくれたからなんだ。ごめん、なさい」
ーーー本当に、ごめんなさいーーー
そういう意味で告げた 最後のこのひと言は、自分の意思で、ちゃんと此処に来ようと思っていたのに、来られなくてごめんなさい。もっと早く、貴方の元に来られなくてごめんなさい。誰かの手を借りて、誰かに背中を押してもらったからという理由で来てしまって、ごめんなさい。そういう意味を含んだ、言葉だった。けれど、その最後のひと言だけが、無常にも那須玲の元に音として届く前に部屋の中で消えるのだ。
「……名前ちゃん」
苗字名前は顔を上げて、那須玲の顔色を確認するのが、なによりも恐ろしかった。最早、彼女は苗字名前のトラウマそのものであった。どんな出来事からも逃げ出さなかった彼女が初めて背を向けたのが、那須玲だったからである。本人は出水公平は関係ないという風に考えていたようだけれど、それに至る経緯を作ったは、やはり出水公平や米屋陽介なのだから、出水公平が那須玲と仲直りしてくれと懇願した理由が自分のせいだと思っていたからだというのも、あながち間違いではない。
自信を打ち砕く あらゆる出来事がなければ、苗字名前は負い目こそ感じただろうけれど、那須玲という人間に背を向けることはなかっただろう。出水等も、それを理解していた。それほどまでに立て続いていた。そして、トドメを刺すかのように、受験に失敗した。受けることすら出来なかった。だからもう、合わせる顔がなかった。惨めすぎたのだ。当時の自分自身が、あまりにも。だから、那須玲が冬島隊のブラックリスト入りを果たすのは自然の流れだった。明らかに何かがあったのが明白だったからである。本来であれば、そこに名前が刻まれるのは那須玲ではなく、出水公平と米屋陽介だった。しかし、あらゆる偶然が重なった結果。そこには彼女ーーー那須玲ーーーの名が刻まれたのである。
「会いにきてくれて、ありがとう……っ、」
恐らく、この部屋に入室してから はじめて苗字名前は那須玲の顔を見た。
言葉に心を動かされたではない。
那須玲の声が震えていたからだ。
ゆっくりと顔を上げて、まず名前の視線に入ってきたのは、布団で顔を隠す かつての親友の姿だ。そして、次に目に入ったのは、震える彼女の背中だった。今でこそ、その称号は名前本人がもう親友なんて名乗っていいとは微塵も思っていないという理由から結束夏凛のものへとなってしまったけれど、自分から親友と名乗れる程に親しかった友人のその姿は苗字名前の心にいくつもの刃を突き立てる。
「一方的に避けてたのは 私で、勝手な事を言っているのも わかってる。でもね、私……。もう一度、玲ちゃんと仲良くしたいの……」
凄く長い沈黙の中で苗字名前が見たものは、那須玲と過ごした長い長い1年間だった。それは、走馬灯のように頭の中を恐ろしい速さで流れていくのに、ひとつひとつの思い出が名前の中で鮮やかに輝いていた。目を開けているはずなのに目の前に見えるのは、那須玲ではなくて、かつての眩しい眩しい思い出達だ。
そんな苗字名前を現実へと呼び戻したのは、紛れもなく、目の前にいる那須玲の「私も」という消えてしまいそうなほど小さな声だった。先ほどまでは、外を走っている車の音や風の音、風で揺れる木々の音。そんな音だけが届いていた名前の耳に届いた那須玲の言葉に名前は、なんて都合のいい言葉が聞こえるのだと自らの頬を引っ張ったが、ちゃんと痛覚は機能していて、これが現実であることを証明してくる。だめだよ、玲ちゃん。名前の口から飛び出したのは、こんな言葉だった。こんな私をどうして許してくれるの。仲良くしたいと言うくせに、許してほしくないという名前の言葉は恐ろしく矛盾していたが、それでも彼女は那須玲に自分を責めて、非難してほしかった。彼女と過ごした1年間を見事にドブに捨てて進学校の六穎館でも第一志望の星輪女学院でもなく、ただのボーダー提携校に通った挙句に、自分の前から姿を消した卑怯者だと責めてほしかったのだ。それなのに、那須玲は名前の謝罪に「ありがとう」と返し、そして何も聞かずに「自分ももう一度友達をやりたい」とだけいう。そんな。そんなの。
「……玲ちゃんが優しすぎから、
狡くて、心が狭い自分が嫌いになりそう」
出水公平の
真っ白だった。悪いところなんてなにひとつない。それなのに、自分勝手な自分に感謝の言葉を並べて手を取ろうとするのだ。それも、本心で。
「私は名前ちゃんのことが大好き。体調管理が出来なくて受験が出来かったことを自分のせいだと名前ちゃんはいうかもしれないけれど、まずは それだけ一生懸命になれた自分を褒めてあげてほしいと思っているの。名前ちゃんは良い意味でも、悪い意味でも、自分とそれ以外の人に厳しい子だから」
「玲ちゃんは私に優しすぎるんじゃないの」
「そんなことないわ。私は自分の判断を正しい評価だと思っているし、それにね。次は許してあげるつもりないもの」
「……そういうところが、優しいんでしょ」
「だって、名前ちゃんが大好きだから」
そんなこと言われる資格、私にはないのに。そういう言葉を飲み込んだ名前は両目から、ほろほろと流れ落ちる涙に、ただただ困惑したが、冷静になって、慌てて涙を拭う。けれど、拭っても。拭っても。涙が止まることはない。それはそうだった。那須玲という人間は苗字名前の初めての友人だった。かつて、彼女は今とは打って変わって人間が違っていた。『別人』である。あの時枝充が苗字名前をそのように表現するくらいには全くの別人であった。故に、彼女には友人と呼べる人間が存在していなかった。それ以前に、会話を交えることができる相手が本当に僅かしか存在していなかったのだ。そして、その僅かな人間が、かつての東隊である。しかし、加古望も二宮匡貴も三輪秀次も東春秋も友人ではなかったし、親しかったけれど、どこか壁があった。
その壁の正体を当時の名前は知る由もなかったが、今ならわかる。あれは、部隊メンバーとそうではない自分との壁である。だからこそ、彼女は二宮匡貴という人間を除いた東隊には常に一定の壁を用意していた。けれど、那須玲は違う。当時は共に部隊には所属していなかったし、なによりも彼女は名前の憧れる『星輪女学院』に通う人間だった。だからこそ、苗字名前は苦手ではあったけれど、恐らくはじめて自ら歩み寄った。そして、その結果。恐らく、人生で初めて『友人』ができた。つまりなにが言いたいのかというと、那須玲や苗字名前本人が思う以上に名前の那須玲への気持ちが強かったという単純な話なのである。
「名前ちゃん、部隊入りおめでとう」
「……うん」
それから、2人の中で空白となっている1年の時間を埋めるように会話を交わすうちに最初のあの恐ろしく息の詰まる空気が嘘のように会話に花が咲き、2人の表情に笑顔が浮かび始めた頃。携帯がバイブ音を鳴らし、2人の会話を中断させた。全く誰だ、こんな時に。そういうタイミングで連絡してくる人を名前はひとりしか知らなかったし、通知を確認すると、やはり連絡はその人からであった。
画面に映し出された『迅悠一』の名前を見て、息をついた名前の様子に那須玲が「今日はもう、お開きにしましょう」と口にする。その言葉に名前は多くの考えを巡らせた。もしかして、用事があったのかもしれないだとか。体調が良くないのかもしれないだとか。そういう考えを巡らせた後に「また、絶対会おうね」と約束を取り付けて、解散をしたのだった。
迅さんはいつもいつも。そういう言葉を頭の中で並べながらも、名前の足取りが軽いのは、迅悠一への感謝の気持ちからである。まるで、飴と鞭のような絶妙な具合で苗字名前の心を揺らす迅悠一は、やはり自分という人間の性質を恐ろしく理解しているのだろうと素直に思う。本当に恐ろしく、いやな性格をしている。自分を理解した上で、こうしろああしろといって、いつだって正しい道へと道を正すのだ。それが、例え、どんなに嫌な道であろうとも、迅さんが言えば それが正しいような気がする。
そういう認識を私を含めた多くにさせている。どうしたら、そんな信頼を勝ち取れるのだ。全く敵にまわしたくない。
「久しぶり、名前」
こんな寒い日に、玉狛支部の入り口の目の前で暖かそうな焼き芋を頬張りながら「さっき、そこのスーパーで買ったんだけど食う?」と、珍しく ぼんち揚げ以外のものを差し出してきた迅さんからそれを受け取って、思い切りかぶりついたところで、お礼を言い忘れたことに気がつき、慌てて顔をあげた私に迅さんが「そういえばさ」と言う。
「ランク戦、二宮さん達が出るから顔出すと思ってたんだけど、なんで行かなかったの?」
「結果が見えているからです。私は勝負になっているランク戦に見る価値は感じますが、勝負の見えている戦いに興味はありません」
「玉狛が負けるって?」
「……逆に、勝てると思いますか? 人を撃とうとしない狙撃手と自分の役目の見えていない隊長。点を獲れる駒が遊真しかいないなら遊真を落とせば終わりじゃあないですか」
「名前は相変わらず
「三雲くんは勿論として、私は期待をしていない部隊に無駄に厳しくしたりはしません」
「へえ、メガネくんか。そりゃ 意外だな」
意外とはどういうことだという視線を向ける私に迅さんは「名前なら遊真かと思ってた」と笑うものだから煽っているのかとすら思う。
三雲隊員の作戦は正直、運と隊員に恵まれていたから成功してきたものだといえなくもないけれど、遊真と雨取隊員を部隊に引き入れたのは彼だという話をどこかで聞いた。自らの力だけで近界民とトリオンモンスターを引き込んだその手腕と短期間で身につけたとは思えない指揮能力。指揮する力がどの程度のものかはわからないけれど、少なくとも、諏訪隊や荒船隊でみせた作戦には「なるほど」と思わされたし、面白い作戦だとも思った。今ある戦力でできるそれなりにいい作戦。これでもう少し彼にトリオンがあればと、私はログをみながら何度だって思った。これは本当に嘘ではない。
「三雲くんは8割方命恩人だから優しくしているところがあるけれど、短期間であれだけの隊員を味方にした上に数回の戦闘であれだけの作戦を練れるのだから、後1年もあれば良い隊長になっていると思います」
「この流れで玉狛デビューとかどう?」
「…………その言葉。
どうせなら、もっと早く聞きたかったな」
珍しく目を丸めて固まったように私だけを見つめる迅さんに思わず笑ってしまうと迅さんもつられて笑った後に「珍しく冗談がきついんだけど」と頰をかくものだから、私は鞄を下ろして中から赤色の包装紙に包まれている箱を取り出して、迅さんに渡した。
赤は私の好きな色だ。だから上手に出来た5つを他と明確に分けるために使用した。本当は二宮さんと東さん。それから柿崎さんと嵐山さんと冬島さんにあげようと思っていたのだけれど、冬島さんのために用意していた分のチョコレートは今日の感謝の意を込めて迅さんに渡そう。ここで迅さんを見かけた時に、そう決めていた。
「ハッピーバレンタイン」
「えっ、あ、あーーーありがとう」
「こちらこそ、今日は本当にありがとうございます。多分迅さんから連絡をもらっていなかったら、私はまた理由をつけて 玲ちゃんとの件を先延ばしにしていたから」
「おれから連絡しなくても名前は行ったよ」
「うそばっかり」
「それにおれの場合は善意からの行いじゃなくて、前払いっていう意味の善行だからホントまじで気にしないでほしいっていうか…」
「…………1から10まで最悪ですね……まあいいや。私これから本部に行かないとだから、これ。適当に玉狛の人にあげてください」
カバンの中のいくつかの箱を引っ張り出して、迅さんのもつチョコレートの上に重ねると「わかりやすいよね、名前って」と、敢えて少なめに用意したチョコレートの箱を見た迅さんが困ったように笑う。
どういう分け方でもいいですよ。そういう一番困るだろう言葉を目の前にいる迅さんに送って背を向けると「また無理なこと言うけど、頼まれてくれると助かる」という言葉が背中に投げられる。その言葉には敢えて言葉を返さない私は悪くない。迅さんのいう『無理なこと』は本当に私が『無理』なことなのだから。出来ることならば、その内容すら聞きたくはなかった。迅さんはきっと、私が迅さんの言う事ならばなんでも聞く都合の良いやつだとでも思っているのだろう。なんで男だ。人の好意をああいう形で返すくせに。
「……別に、冗談じゃなかったのに」
ふぅと白い息を吐きながら、誰に届くわけでもない言葉を溢した名前の頭の中を流れるのは先程の迅悠一の「珍しく冗談がきついんだけど」というなんてことのない台詞だった。冗談がきつい。その回答は予想していなかった。あの表情だって、想像していなかった。自分で言ったくせに、あんな顔をするなんてあんまりだ。どれだけ私が嫌いならあんな顔で「冗談」なんて言葉をいえるのだ。お前が玉狛に入るのは冗談がきついということだろうか。
前払いで恩を売って、後に感謝と同等の対価を私に求めているに違いない。私に恩を売るだけうって、そして見事に裏切ったあの日を私は一生忘れてやらない。私が迅さんを嫌いなのではなくて、もうこれは迅さんの方が私を嫌いなのではないだろうか。私を使うだけ使って、そうしてまた切り捨てるつもりなのだ。ああ、これはまた覚悟をしておかなければならない。あれだけの恩を売られたのだ。きっととんでもない『
「あーあ。迅さんって本当、酷い人」