旅は道連れ世は情け

 息子が番屋を出ていくころには、煙は建物の中にかなり広がっていた。
 男に続いて階段を降りる途中、床に崩れた女親分とその旦那が視界に入った。あまりにおぞましい光景に背筋がぞわりとして、喉の奥がヒュッとなる。気づいたときには足も踏み外していた。

「ぎゃっ」

 およそ女性とは思えない悲鳴で尻もちをついたわたしを、男が面倒くさそうに振り返った。

「……お前もさっさと出ていけよ」

 言いながら、男は血の海に落ちていた木箱を拾い上げる。
 その中には噂に聞いていた刺青が入っていた。変な柄で、ところどころに丸で囲まれた漢字がある。この文字が暗号なのだろうか。
 男は満足そうに中の刺青を取り出している。まちがいなく、彼もこの刺青を、金塊の暗号を探していたのだ。
 そう思ったら、わたしは咄嗟に、彼の腕を掴んでいた。
 男はさすがに驚いたらしい。猫のように目を開けて、「は?」と声を出す。







「刺青……、ほんとうに」

 思わず呟いたら、男が鋭く振り返った。


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