離ればなれ



「なんだよ、俺がいないと寂しいってか」

再びゆっくりと歩き出す彼の背中が、
すごく遠くに感じてしまうのはなんでなんだろう。

『知ってるくせに』

珍しく素直な返答をしたからか、
ピタッと彼の動きが止まった。

「別に、いつでも会えんだろ」

そう言って握られた手を私もギュウッとにぎり返す。

『かっちゃんこそ、寂しくなったらいつでも会いにきていいんだからね?』

「お前が言うか」

分かってる。
たかが高校が別になったくらいで、
ダメになってしまうなら
それまでの関係だったってこと。

分かってる。分かってるけど…

(やっぱり怖いなぁ)

チラッと彼に目をやる。
キラキラと夕焼けにも映える金髪が、
ふわふわと風に靡いていた。

『…かっちゃん』

「かつき」

『へ?』

「かつきって呼べよ」

『…かつき…?』

「おう」

『すきだよ』

「おう」

耳が夕焼け色に色づくのが後ろから見えた。もう一度、握られている手にギュウッと力を込める。

「名字は、俺の女だろ。もっとシャキッとしてろ」


『うん、頑張る』