私と貴方とこの子と
市内で一番大きな病院。
別にこんな大きな病院じゃなくてもいいのに…なんて呟いていた名字のふてくされ顔が頭に浮かんだ。
「ちくしょ、間に合えよ」
ハァハァ、と息を切らしながら
(エレベーターなんて待てっか!)
勢いよく階段をかけあがり病室の扉をあける。
「名字?!!」
「あら、勝己くんじゃない」
ベッドに名字の姿はなく、代わりに母親がサイドの小さい椅子に腰かけていた。
「あ!お、お久しぶりデス!」
荒げる息を整えながら、キョロキョロと周りを見渡す。
「ふふ、名字ならさっき分娩室へ移ったところよ」
「まじっすか!!!」
「いよいよね。でも、まだ時間かかるはずだから呼ばれるまで待ってましょう」
そう、ここは産婦人科。