赤ちゃん


「うぉぉぉぉ…!!!」

『ふふふ』

「まぁ、可愛いわね」

暫くすると車椅子に乗って戻ってきた名字

ガラス越しではあるが、
向こうの部屋にまだ生まれたばかりの我が子が保育器の中で動いている。

「っ…ちっせぇ…」

ガラスにへばりつきながら、
これでもかと赤ちゃんを見つめる彼。

「勝己くん、飛んできたわよ」
なんてお母さんから耳打ちされて、
ついにやにやしてしまった。


『かつき、仕事大丈夫だったの?』

「んなことよりこっちのが大事だわ」

『そんなこと言っちゃダメじゃない。ヒーローなのに』

『でも来てくれてありがとう』

「なんだよ。やけに素直だな」

『さすが、私のヒーローはいつどこにでも飛んできてくれるなぁと思って』

「いまさらかよ」



ほんとに、今更。
あの頃の私を叱ってやりたいとまで思う。
変わるのが怖かったあの頃の夢を、最近はよく見るようになった。


そんな心配なんてちっともなかったよ。


『かつき、だいすき』

「おう」


(おまけ)


「あらあら、まぁまぁラブラブね」

『えへへ〜』

「っ!!…(義母さんの存在忘れてた!!)」

「ところで名前は決まってるの?」

『うん!勝也くん!』

「かっちゃんね」

『パパみたいな逞しい男の子になってほしいからね』

「俺の遺伝子なめんな」