弔という男



『ねえ、弔ぁ!』

「……」

『弔ってばぁぁ』

「…うるさいなぁ」
こちらの方も向かずに、一枚の写真を眺めながら首筋をガリガリをかきむしる彼。

その写真の主を私は知っている。
緑谷出久、雄英高校のいちねんせい。
弔のお気に入りだ。

(気に入らない)

『ねえ、そのガキ殺ってくれば私のこと見てくれる?』

「はぁ?なんでそうなるんだ」

『だって、弔。最近ずっと構ってくれないじゃん』

むぅ、とわざとらしく拗ねてみる。

「…その顔うざい」

『うざいって言うなーーー!!!』

(もういいもん!)
バンっと音をたてて部屋を後にした。

「どうしたんですか名字さん」

『黒霧…うぁぁぁん!!!』

「やれやれ、またですか」

子供のように泣きじゃくる少女の肩をさすりながら
まるで赤子をあやすかのように対応をする黒霧。

「彼はツンデレってやつですからね」

『…ひっく…うぅ…』

「ほらほら後ろ見てみてください」

ジトッとこの世のすべてを殺しそうな勢いでこちらを睨む死柄木弔。
扉をガジガジと噛んでいる。

「俺の名字に黒霧のやろう、このやろう、殺してやる」

「呼んでますよ。(…だったら最初から優しくすればいいものを)」

『とむらーー!!』

「チッ…」


(おまけ)


「いい加減、黒霧に泣きつくのヤメロ」

『弔が意地悪するのが悪い!もっと構ってよ!』

「わかったよ…(可愛いな…)」


それでも彼のいじわるは直らない。

「名字が可愛いのが悪いんだ…」