緑谷という男



『あ…!』

みんなが食堂に集まるお昼時間。
どこに座ろうかな、なんてぐるりとあたりを見回すと

楽しそうに喋るデクを発見した。

目の前には飯田くん。隣にお茶子。

(なんで私は誘ってくれないの)


『私もいいー?』

(にこやかに、にこやかに…)
内心穏やかでない心を隠して、にっこり飯田くんの隣に食事をおく。

「勿論だとも!」

「もちろんだよ〜」

「あ…う、うん」

ひときわ小さい声で頷く彼。
(さっきまであんなに笑ってたのに)

「そういえば名字ちゃんって〜?」

『なに?』

「この間彼氏さんいるって言ってたよね!どんな人なん?」

「っっ!!」

(目の前にいるんだけどなぁ〜)

「なに!名字くんを射止めた男か…僕も気になるぞ!」

『飯田くんまで〜』

チラッとデクに目をやると、下を向いたまま青ざめていた。
その反応が、なんだかムカついて…

「で?で?どんな人なん?」

『んーとね、いつもなんか遠慮がちで、頼りなくて、身長も私より低くて…』

「っっ」

『でも、誰よりも正義感が強くて。真面目で、まっすぐな男だよ』

「なんやこっちがテレるわぁ〜」

「名字くんはその人の事が本当に大切なんだな、うんうん!」

『彼は私のことちゃんと好きなのかわからないけどね…』

(私相手にもいつもビクビクしてるし)

ガタンッッ!!

「そ、そんなこと!!ない!…と思う…けど…」

「デクくん、どしたん?いきなり立ち上がって…?」

「びっくりしたじゃないか!」

「あ、あのごめん!」

シュゥッと怒られた子供のように下をむき、静かに座り直す彼。

『デク、ありがとう』

「いやいや!僕の方こそごめん」



(おまけ)

「でも名字ちゃんの彼氏さん会ってみたいなぁ〜今度一緒に遊ぼうよ!」

『いいよいいよ〜』

「えっ?!え…っ!」

「デクくんも一緒に遊びたいの?」

「…あ、いや!あはは」

『ぷっ…いいよ。デクも一緒に来なよ』

「もう…名前さん勘弁して…」

「デクくん、どしたん??」