五. あれから三年の月日が流れた。冬の気配がキンブリーのいる二十九番目の独房まで届いてきた。今朝、彼は少しだけ生地が厚くなった冬の囚人服に袖を通した。 キンブリーはあれから、誰にも手紙を書かなかった。ジョーからもらったタイプライターは、彼の錬金術に関する思考をまとめる際にしばしば役立ったが、それが彼の率直な思いを出力することは、もうなかった。 しかし、手紙を書いたことで得たこともある、とキンブリーは考えていた。たとえ読まれない手紙であっても、それを通して相手と対話することで、自身に様々な変化が起きた。それはすっきりとした晴れやかな気持ちを感じることであったり、沈痛な思いを伴いながらも気づきを得ることであったり、自身の覚悟を再認識し改めることであった。 手紙を書いたのは正解だったと思えた。無駄なことなどひとつもないのだと、これは単なる暇つぶしを超えた高尚な行為なのだと思えた。そのような思いを抱かせてくれた三つの星々に、彼はひそかに感謝した。 あの日、飲み込んだ手紙たちはもうその存在をなくしてしまったが、飲みこんでも消えなかった代物もある。賢者の石である。 キンブリーは鼻歌を歌いながら、紅い石を眺め、今日も殲滅戦の美しい記憶に浸った。ああ、またあのときのような大錬成を再現できたら、と思いを馳せずにはいられなかった。 そんな彼に吉報が入る。 「キンブリー、出所だ」 髭を剃り、髪を束ね、厚手の囚人服を脱ぎ捨て、白を身にまとう。一点の汚れもないのりの利いたそれは、人生の汚点である囚人時代をまっさらに覆い隠すものだった。 ――こういうことですよ、ジョー・ゲイル。 白のコーディネート、紅蓮色のネクタイ。手枷はもう外された。両手の自由を奪うものがなくなったので、ぶらぶらと手を振ってみる。両掌をそっと、合わせてみる。 キンブリーは笑む。ペンが持てる。速く走れる。なにより再び錬金術を使えることが、彼を最も喜ばせた。 ――陽の当たらない箱庭よ、さようなら。さあ、初仕事はなんでしょうか。 六年の獄中生活にピリオドを打ち、彼は箱庭に別れを告げた。白いハットを押さえて、彼は光差す方へと歩き出す。 哀れな三つの星々は、彼の内側でなおもひっそりと光を放ち続けている。 |