ぶつけられる想い
あの電話から数日後、予定を合わせて居酒屋へと足を運んだ。通された場所は隅の並んだ席だった。乾杯をし、話が止まってしまったが、私の横にいる後輩は、誰から見てもわかるくらい喜々とした表情で隣に腰掛けていた。
「どうしたの?」
「なまえさんと2人でこうやって飲みに行けるなんて、夢みたいで嬉しいんスよ。」
本当に嬉しそうな赤也を見て、言葉が詰まる。戸惑う私を知ってか知らずか、赤也は言葉を続ける。
「なまえさんの隣には、ずっと丸井先輩がいて、俺の入る隙なんて微塵もなくて…丸井先輩じゃなかったら良かったのにって何回も思ったんス。」
「この間、直接別れたって聞いて、チャンスだと思ってました。今しかないって。アンタに会った時から、ずっと好きなんだ。1回振られたくらいで諦められるほどの気持ちじゃない。なまえさん、俺と付き合ってください。」
痛いほどの気持ちがひしひしと伝わる。赤也に視線を向けると試合の時と同じくらいに真剣な眼差しを私に向けていた。
「そんなに私を想ってくれて、ありがとう。でも、赤也とは付き合えない。ごめんね。」
「じゃあ、何で今日来たんスか?俺の気持ちわかってたくせに。なあ、俺の事、利用してよ。丸井先輩なんか忘れさせるから、苦しい思いなんかさせねえから。俺の事、好きじゃなくていいから、傍にいさせて。」
肩を引き寄せられ、気付けば赤也の胸の中にいた。力強く抱き締められ、息が詰まる。まるで赤也の苦しさが伝わってくるようだった。それに、耳元で聞こえる声は微かに震えていた。
ふと、頭の中で彼の言葉が再生された。
"赤也と付き合っても応援出来る"
今、思い出すなんてタイミングが悪い。こんなにも真剣に想ってくれている赤也を中途半端な気持ちで応える訳にはいかない。可愛い可愛い後輩なのだ。
「赤也、私、そんな事できないよ。」
「俺がいいって言ってるじゃないっスか!」
「あか、や…」
「お願いします…」
強気だった声が、今は消え入りそうにか細く泣くように小さい。私は、そこで考える事をやめた。