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絆優、リョウ、昴は、先程居た倉庫から少し離れた別の倉庫群の一つ……通称、第四物置部屋を漁っている最中だった。
この中には先程ロケット団を縛っていたロープや、非常用の水や食糧、簡易トイレなどが詰め込まれている。
その中で昴が手に持ったランタンと自身から放つフラッシュで辺りを照らし、リョウと絆優はせっせと何かを探していた。
「うーん、無いなあ……。絆優ちゃん、丁度いいものは見付かったかい?」
「うええええ……。まだ、分からないです……」
「そっかあ……。でも、確かこの辺りに…………あっ、あった!」
そう言って、ぱっと絆優の方へ振り向くリョウ。彼が被っていたのは、ヘッドライト付きのヘルメットだった。
「これなら、暗い中でも安心かな! 待っててよ、子供用の小さいのもあるから! あと、首から掛けるタイプのライトもあるからね!」
そう言うと、張り切って物置棚に上半身を突っ込むリョウ。
身体の大きなリョウが狭い棚の中に身を入れる光景は中々に滑稽で、相棒の昴はその姿を照らしながらけたけたと笑っている。
その様子を見ながら一人、絆優は浮かない顔で小さく溜め息を吐いた。
「……」
溜め息が小さいのは、リョウと昴にばれない様にするため。こんな非常事態に、他者へ無駄な心配を掛けたくない。そう思っていた。
絆優はこの後、大役を任されている。
それは小さな少女にさせるには大変危険で酷なものでありながら、確実に絆優にしか出来ないことであった。
本来であればは兵太が行うべきところなのだが、とある理由により、それは断念することとなる。
迷う余地など無かった。
しかしそれが決まってからというもの、絆優はそのことが心配で心配で仕方がない。
本当は、今直ぐにでも膝を折り、泣いてしまいそうだった。
しかしいつもその涙を拭ってくれる者は今、誰も居ない。
そう思うとまた、涙がこぼれてしまいそうだった。
手が震える。目の周りが熱い。視野が狭くなる。
こんな状態では、探し物もままならない。自分は探し物一つ出来ないのかと、絆優は再び自身を責めた。
「ピカチュゥ……」
そんな絆優の様子に、昴が気付く。
ただ彼は絆優の足をぽん、と叩くと、あとは何も声を掛けず、リョウの傍へ駆け寄った。
大袈裟にしてしまうと、気付いたリョウが慌てて絆優に駆け寄るだろう。
そんなことを、絆優は望んでいなかった。
だって優しくされたら、本当にこの場で、泣きじゃくってしまうだろうから。
小さなピカチュウの気遣いに、絆優は少しこぼれた涙を拭った。
黄色い小さな背中に、大切な人の姿を重ねた。
そう。大切なのだ。
大切な、人なのだ。
救ってやらねば、助けてあげなくては。
そう決心した時だった。
どん。
そこまで大きくない衝撃音と、それに比例しないかなりの揺れ。
辛うじて倉庫内の荷物が落下することは無かったものの、立っていた絆優と昴の身体はぐらついた。
「な、なんだあ?」
棚から身を上げ、周りを見渡すリョウ。
倉庫内の小さな裸電球は着いたままであり、停電はしていないようだ。
昴も慌てて倉庫の外を確認するが、特に変わった様子はない。ただ静かな倉庫群が続いているだけだ。
「何もない……のかなあ」
「でも、怖いですね……」
「ピッカァ……」
何も無い。しかしすでに、何らかの事態は起こっている。
目に見えない恐怖が、着実に迫って来ているということが、より一層不気味さを際立たせる要因の一つだった。
「一先ず、探し物は見付かったんだ。さっきの倉庫まで戻ろう。兵太さんや、黎明くん達も帰って来ているかも知れない」
リョウがそう言うと、絆優と昴は頷いた。
作戦の準備は、着実に進んでいる。
彼等はそう自身を鼓舞させ、倉庫群を後にした。
リョウが手にしたペンダント型の懐中電灯が、きらり、と怪しく光ったことには、誰も、何も気付かなかった。
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