最終章(2/7)


「ああああ〜っ、瞳〜〜〜〜っ!!」

フライゴンの姿のまま、新がツッカの船の砲台まで……青年へ向かって飛び立ち、そのまま抱き付いた。
ぐはあ、と倒れ込む青年を他所に、新は感嘆と質問をぶつける。

「すごいっ!! すごいよ瞳!! どうやったの? どうしてこんなことできたの?」

「どうって……」

瞳と呼ばれた青年は、ばつが悪そうな顔をしつつ、砲台が並ぶ方向を見遣った。
その視線を追うと砲台の元には、やけにだらしない顔で倒れ込んでいる砲手達の姿が在った。
白目を剥いていたり、よだれを垂らしていたり、顔を真っ赤にしている者や、鼻血を出している者まで居る。
新は察した。

「瞳、フルコースしたの?」

「ふっ、フルコースって言うなあっ!!!!」

瞳と呼ばれた彼――エネコの技は、いささか特殊である。
相手に戦意を失わせる『メロメロ』という技を始めとし、『甘える』『誘惑』『じゃれつく』等々……。相手を錯乱する攻撃手段が多いのだ。
加えて彼の特性は、『メロメロボディ』である。

「すごいよ瞳ぁ〜〜っ! おれも瞳にメロメロしちゃう〜〜〜〜っ!!」

「うわあーっ!! やめろぉーーーーっ!!」

頬ずりをする新に、抵抗する瞳。
夢来は思わず眉間に手を当て、他の者は唯々茫然とその様子を見守っていた。

「くそっ!! 野郎共、さっさと奴等を片せ!!」

ツッカの怒号に、弾かれた様に応えるロケット団員達。
次々と攻撃をけしかけるものの、フライゴンの新は瞳を抱えて飛び立ち、あっという間に陽や夢来、絆優、真想の元まで降り立った。
そして、彼等の背後には――――。

「な、何っ……!?」

立ちはだかる、無数のポケモントレーナーの姿が。
彼等はロケット団がパーティ会場に閉じ込めていた筈の、トレーナー達であった。
甲板の上から屋内階上のバルコニーまで、びっしりと彼等で埋め尽くされているのだ。
その手には各々モンスターボールが握られており、皆すでにボールから自身のポケモンを出しているようだ。
何故。一体、どこから。

「ポケモン無しでは何も出来ないと思ったか!!!! 我々を舐めるな!!!!」

そう言ったのは筋骨隆々の男――脱出の際、ゆのを担ぎ上げた、あの大男である。
恐らく彼を筆頭に、トレーナー達自身がロケット団員へ立ち向かったのだろう。
男を始めその周囲の舞踏家風の者達は特に、スーツもドレスもボロボロである。
そして、彼等の横から飛び出してきたのは。

「陽!」

「ミツキ!!」

トレーナー達の間を縫って出てきた少女は、ミツキだった。彼女は真っ先に、陽の元へ駆け寄った。
そんな彼女を、陽は堪らず抱き留める。

「ミツキ、良かった……っ! ミツキ……!」

「は、陽。苦しい……っ」

ぎゅうぎゅうと抱き締める陽。そんな彼に苦言するミツキだったが、その顔からは笑みがこぼれていた。
彼女もまた、彼のことが心配で仕方がなかったのだ。目尻には、涙の痕が見て取れる。
そんな感動も束の間。
今やトレーナー達のリーダー格となった大男が、相手を見遣る。今仕掛けずして、いつ仕掛けられるというのか。
失敗は許されない。
何故なら今、自分はあの方の命を守らなければならないのだから。

「皆、かかれ!!!!!!!!」

男の号令と共に鳴り響く、怒号と雄叫び、獣のいななき。
甲板の上は、先程の激戦を更に上回る程、荒々しい戦場と化した。
色とりどりの光線が飛び交い、幾重もの防護壁が互いの攻撃を阻んだ。
そんな中、ミツキが新、絆優、そして夢来、真想、瞳を呼び止める。

「新くん、絆優ちゃん。…………あなた達も、ゆのちゃんのポケモンね」

そう言って、彼等を甲板の裏まで引っ張り出した。
何事だと問いただそうとする夢来に、ミツキが早口に言う。

「ゆのちゃんが居なくなったの。お願い。一緒に来て」


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