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金がない。
考えることは色々あれど、まずは金がない。
お昼ご飯は朝の残りがあるが、晩ご飯が無い。僕の分は無くてもいいけど、猫が増えたし、食費のことは今後生きていくために最優先で考えなきゃいけない。
ああくそっ面倒くさいことばっかだ。

「まぁまず、今後はイルちゃん一人に買い出しは任せない」
「!?」
「このケータイってのに悲しい数字がたたき出されてるもんね…」
「!?……数字が一つしか無い…」
「悲しいね」
「悲しいのか…」

悲しんでいても金は増えない。
ルルから携帯を受け取り、検索画面を開いた。

「今まではおっさんやら闇医者やらに世話になってたけど、これからはちゃんと管理しないと…あ〜めんどくせぇ」
「金のことをよくわからなくて、わるい」
「いや、あー……その謝罪は素直に受け取っておく。僕が任せたことにも責任はあるから、まぁ、うん」

シュンと垂れる耳に、いいよと言いそうになるが、なんとか飲み込んで謝罪は受け取った。
今は人の形をしていても、ポケモンなんて元は動物と同じようなもんだ。人間の金の事情なんてわからなくて当然。今までよく買い物できてたなという気持ちも無くはない。まぁ、そこはこれから教えていけば問題ないだろう。
まず考えなければいけないのは、今の所持金、次の飯のこと!


「と言うわけで、ジムに行こう」
「じむ?」

ルルのオウム返しに頷いて、二人に携帯を見せる。

「「さんようじむ」」

ポケモンでも人間の文字は読めるらしい。
サンヨウジム。レストランとジムが一体になっている特殊なジムだ。何でも、一つのジムに三人のジムリーダーが居て、チャレンジャーの手持ちによってジムリーダーが変わるという。うん、めんどくせえのはわかる。

「ポケモントレーナーはバトルして金を稼ぐんだよ。まぁジムは金稼ぎする場所じゃないけど、強いトレーナーと戦えばそれなりのバトルマネーがもらえる」
「ジムには強い人がいるってことね!」
「まぁそう」

サンヨウジムはトレーナーの卵達の最初の壁。イルアが居れば難なくクリアできるだろう。でも、

「ルルって何が使えるの?」
「ひっかけるよ!、いたっ!」
「アホか」
「何でぶつの!?暴力反対!!」

にゃんっ!と手を猫の手にしてドヤる猫を手刀で軽く叩き、携帯を操作する。
ぎゃーぎゃー騒ぐルルに向け、図鑑アプリを開いた携帯をかざす。
見た目は人なのに、図鑑はルルをレパルダスだと認識してステータスを映し出す。擬人化ってほんとどうなってるんだ。

「"ひっかく"、"ねこだまし"、"いちゃもん"……"みだれひっかき"…」
「…………」
「よわ」
「しょうがないじゃん!檻から出ないように技は忘れさせられたりするの!」

ごもっともな理由だ。だがしかし、図鑑に表示されているレベルを見やる。レベルというのはポケモンの強さを数値に表した物。イルアの場合、最後に見たのは30かそこらだ、今はどこまで上がってるか知らないけど。

「キミの場合レベルもたいしたことないし、忘れた技とかどうせ"すなかけ"ぐらいでしょ」
「うっ!お、俺だってまだまだ可能性あるもんね!」
「まぁそれはそうだね」
「!」

元々大きい目がさらに見開かれる。そのまま固まったルルに対して「何」とだけ声をかけた。なんなんだその反応。
言いにくそうに口を閉じたり開いたり。しばらくしてから意を決したように、小さな、聞き取りづらい声でルルはやっと話し出す。

「使えないとか、言われるかと……」
「ふぅん……」
「ご、ごめんなさい」
「何で謝るの」
「ご、ご気分を害されたかと思っ、思いまして…」
「何で敬語」
「うぅ…」

ばつが悪そうに目をそらすルルに思わず笑ってしまう。メアに怒られてるときのオッサンみたいな反応だ。
それにしても、使えないとか言いそうだと思われてるのか僕は。道具でもポケモンでもなんでも、使えないのは本人の力量次第だろう。まあ相性とかもなくはないけど。

「可能性を引き出すのはトレーナーの仕事だけど、ルルにも頑張ってもらうから」
「!が、頑張ります!」
「だから何で敬語」
「正直まだちょっと怖い」
「怖がらせてるつもりはないんだけど……」

怖いだなんて心外だ。僕は普通にポケモンに好かれるタイプだと思ってたのに、やっぱりあのミネズミの距離感がおかしかったのかもしれない。あとイルちゃんの距離感もおかしいのかもしれない。普通はルルくらいの警戒心があるのかもしれない。ちょっと認識を改めよう。

「シウン……くん?いつも無表情だし……」
「さっき笑ってたのに……」
「うそだ!!!」

僕の表情筋はあまり仕事をしないらしい。

「あと一応、生物学上はちゃんでいいよ」
「じゃあシウンちゃん!!」
「まぁ呼び方なんてどうでもいいけど」

話はまとまったし、ジムに金を稼ぎに行こう。

「朝飯の残りはパックに詰めたぞ」
「でかしたイルちゃん」

昼飯もオッケー!


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