02



分からない。
渇く喉から無理矢理酸素を吸い込んで、痛む足を無視して走る。
分からない。
ここが何処なのか、自分がどう生きてきたのか。

『はっ、クソッ!…なんで、』

こんなことになったのか。
そう言葉にしてみても、誰も答えてはくれない。
耳に入る雑音を気にもせず、ただひたすらに走り続けた。
威嚇のためなのか時折耳に入る銃声。耳を立て、その音だけを拾い上げ、音とは反対の方へ走る。
奴の使う妙な道具のせいで、得意のイリュージョンも効果がない。
隠れるところでもあればしのげるだろうと思っていたが、どこもかしこも他のポケモンの住みかだったりと、運が無い。

『っ!』

銃声にばかり気をとられ足元が疎かになっていたのか、木の根につまづき体勢を崩す。ドン、と背中を木の幹にぶつけ、そのまま地面に伏せてしまった。
打った背中から痛みが鈍く広がり、肺にたまっていた空気を一気に吐きだす。こんなところで寝てる場合じゃない。早く、はやくにげないと…。
震える足に力を入れて立ち上がる。

『こんなところで、俺は、まだ』

まだ、何をしたかったのか。それすらも分からなくて、固い地面に倒れ込む。

『まだ、…弱いな、俺は』

傷だらけな小さな手を見つめ、どこから湧いているのかも分からない無力感に襲われる。
何かをしたかった。自分の弱さが嫌いで、嫌いで、それ以外になにも思い浮かばなくて、目から何かがこぼれた。


「うわ、ぼろぼろ」

声が、降って来た。どこかで聞いたことのあるような、気怠げな声。
その声にビクリと体が跳ねるが、立ち上がろうとしても足は震えるだけで力が入らない。

「こいつなんだっけ、まあいいや。キミ、生きてる?」

声が少し近くなりそんな質問を投げかけられる。しかし、その問いに答える気力もなくゆっくりと目を閉じた。
終わりだ。やりたかったことも分からない。自分は弱いまま死んでいくんだ。
抵抗する力ももう無い。体中が痛んで意識がどんどん離れていく感覚がする。

「…寝た?」

少し低めの声が鼓膜を揺する。
そっと背を撫でられ、体が宙に浮く感覚。傷に触れないようにしているのか、痛みはほとんどない。

「おも…」

場違いとも言える台詞にうっすら目を開くと、ぼやけた視界にふわりと暗い髪が揺れた。
優しく頭を撫でる手のひらに、どこか懐かしさを感じたのは、なにも思い出せない自分が見た夢だったのか。それ知ることなく、俺の意識は途切れた。



-3-

prev / next




ALICE+