プッチにより加速された世界の中で死んだはずだった煙崎達は、見知らぬ島で既に健康体である。
何せみんな酷い“出血”だった。そう、加速の中での大怪我に止血が間に合わなかったのだ。あの場に居た中で、煙崎と承太郎は波紋での治療が可能。その上、“原作”では居なかったジョルノと仗助も居たのだから、余計に治療要員は存在した。しかし加速されて仕舞えばその強力なスタンド能力も使う“時間”すら存在しなかった。
そして“ここ”でもスタンド能力はしっかり使えたおかげで、なんとも無い。この島は結構広いが、人間も動物も生息していない、という事が花京院のハイエロファント・グリーンによる偵察で判明した。その上、この島の近くの海域は天候が変わりやすいらしいが、100メートルも離れると非常に凪いでいる海域があり、ソチラにはやけに巨大な海獣の様な魚の様な生物が生息しているのだと言う。
遠距離操作型の中でも最も射程距離が長く、花京院本人は幼い頃にスタンドを発現させているのだ。使い手としても非常に熟練度は高い。こう言った偵察に非常に向いている。
「しかし本当に何もありませんね。こんな場所で今は無事でも、このままでは危ない」
ジョルノの言う通りだった。
「だが、この砂浜にはそれなりに新しい漂着物がある。海底にも何かあるかもしれない…おい、花京院」
「なんですか、承太郎」
「俺と煙崎の胴体をハイエロファントでしっかり繋いでおけ。行くぞ、煙崎」
「ヤレヤレ、しょうがないわね…頼んだわよ、花京院」
「ええ、2人とも気をつけて下さい」
「ああ」
承太郎のこれだけの発言で、花京院も煙崎も何か使えそうな物があればサルベージをするのだろうと理解していた。花京院はハイエロファントで2人が海流に流されないように、煙崎はディープ・パープルで酸素ボンベ代わりの空気の層を承太郎と自身の全身に作り出し、作業の補佐をする。承太郎はスター・プラチナのパワーで使えそうな物を引き揚げる。そういう段取りが今、交わされた。
ディープ・パープルが空気の層を作り、承太郎と煙崎が離れないようにハイエロファントが緑の紐を2人の腰に、1メートル程の距離を空けて結びつけると、2人は振り返りもせず海の中へ歩いて行った。
「へえー、アレって酸素ボンベ作ってるって事っすよね…どれくらい保つンすか?」
仗助の問いに、花京院は首を傾げて笑った。
「さあ?前に敵のスタンド使いに水中に引き摺り込まれた時は、呼吸は余裕だったらしいが…まあ、あの2人だ、何も心配は無いだろう」
「承太郎さん達が心配ないのなら、僕達は漂着物を集めて来ましょうか」
「そうだな。えーっと、あっちの方だったな」
ともかくこの島にて、幾つかある海底の沈没船のガラクタを掻き集めて2人が戻って来たのは約30分後だった。その頃にはジョルノと仗助も漂着物をスタンドで持てるだけ集めて戻っていた。
「おかえり。随分と大荷物になったね」
「そうだな…だがごく最近沈没したらしい船だぜ。クレイジー・ダイヤモンドで直せるんじゃねえかと思ってな」
「風雨を凌げるとありがたいわね。救助を待つにしたって野ざらしは面倒だわ」
沈没船にガラクタを詰め込み、全体を空気で包んで少し沖にザッパァンと浮かんでの帰還に冷静に対応する花京院に対し、仗助はポカンと見上げていた。ジョルノは一瞬目を見張ったが面白いという様に少し笑っていた。
「仗助くん、アタシ達の住む家代わりの船よ。しっかり直してちょうだいね」
「あ、うっす!しかしでっけえ船っスねえ…クレイジー・ダイヤモンド!」
沈没船が一気に直っていく。その船は船としてはそう大きくはないキャラベル船と言える船だったが、そんな事は誰も知らなかった。
「へえ、しっかり直るものですね」
「ええっと、承太郎…碇を下ろさないと…あら、この船って随分と古い時代の船なのかしら…?」
煙崎の言う通り、海賊映画で見るような船だった。国旗ではなく破けたジョリー・ロジャーがついている。
「古い時代の船……そうとしか思えねェが。仗助のクレイジー・ダイヤモンドでしっかり直ったところを見れば、沈んだのは最近だ。おかしなな話だぜ」