流桜を纏い、白縫と帰蝶を抜いて白ひげに切り掛かる。覇気のぶつかり合いは、やはり白ひげに優勢だった。分かっていた……四皇は強い。吹き飛ばされて跳ねるように立ち上がり、再び斬り込む。
ボタンの戦いは二刀流だ。今までの海では、師のレイリーと幼い頃に剣を少し教えてくれた伯父の2人以外には負けた事がなかった。しかし白ひげには、何太刀浴びせても届かない感覚がした。
ーーーこうなったら!
覇気の余波と、激しい剣戟の衝撃で吹き飛ばされ、額も腕も脚も流血しているが、肋骨にヒビも入っていた。その状態でもボタンは腰を低く構え、二振りを勢いよく一文字に振るった。斬撃が飛ぶ!一閃!
ーーー桃源白滝ィ!!! これが、今の最大値!!!
脳裏に浮かぶは伯父の教え。まだ己れでは力不足と思い、封じてきた技の一つだった。しかし、難なく白ひげの薙刀に受け止められて斬撃も刃も届かず、ボタンは吹き飛ばされる。
「ーーーっく!! 次ィーーー!」
体勢を整え、叫び、ボタンは再び構える。
ーーー桃源十拳ァァァ!!!
十文字に斬り付けるも、それは目標を外れて白ひげの腕に一筋の切り傷を刻むのみ。
「ーーー遠いなァ、四皇……っぐ……エース、あとは頼んだ、わ……」
「ボタンーーー!!」
崩れ落ちる百合にエースは叫び、白ひげと対峙した。
目を覚ますと、拘束されていた。
ーーー当然ね。あれだけ暴れたんだ。
「よお、お目覚めか。一番重症だと思ったんだが……あんたが一番最初だよい。」
ーーーまさか不死鳥マルコが最初に見る顔だとは。
「そうですか。エースはどうなりましたか?」
拘束されたまま、上体を起こして正座してボタンは尋ねた。
「しばらくは起きないだろうよい。」
「そうですか。エース共々……我々の処遇はどうなりますか?」
処刑するとか奴隷にするとか言われても、この状態では皆を連れて逃げられない。しかし敗者は、現状を受け入れるしかない。自分達で戦った結果だ。
「男連中は船で、それぞれに向いてそうな仕事を振り分けさせてもらうんだが……ウチは女の戦闘員は乗せない方針なんだよい。選択肢は二つ、一つ目は傘下の船に乗るってんなら、女が船長やってる所もあるから、そこに乗ってもらう。二つ目は船を降りる。単純だよい。」
ボタンも良く思い返せば、この船で女を見ていない。戦闘員は、と言うことは医者とか料理人と言った技術者は居るのかもしれない。しかし、ここではボタンのレベルはお呼びでは無いだろう。それにボタンは、もっと強くなりたいと、今回の件で思い至った。
ーーーそれに、エース達と一緒に航海出来ないんじゃあ傘下に居たって意味はないわ。
「すぐに結論を出せとは言わねえよい。全員回復してからよく話し合ってから決めると良い。」
「いいえ、もう決めました。船を降ります……ですが別れを言いたいので皆が回復するまでは、猶予を下さいませんか。」
次の日には、エース以外のクルーは目を覚まし、すぐに回復し、各自のポジションを与えられていた。それからエースが目覚めるまで、ボタンはエースの側を離れずにボタンなりの手当てを続けていた。