戻れやしないから

アタシの割には頑張ってたと思うのよ。何度も何度も、あの一か月ちょっとを繰り返してさ。もう面倒だな、嫌だなって何度も思って、偶に真逆へ走って見た事だって有るけど……何だかんだで、アイツらの事は嫌いじゃあ無かった。だからその時は、やり直せてホッとしてしまった。きっと、このループは皆が生存していれば良いんじゃないのかと思って、自分が犠牲になる事だってした。けれどまた、あの朝だった。其れだから、アタシも生存したら良いのか?何て思い至って、笑っちゃった。そんな今までのアタシの選択を馬鹿にしてるのかって力が抜けちゃって、その頃には本来のアタシよりやる気の無い女になってたと思う。そんなアタシでも承太郎達は、やっぱり仲間にしてくれるんだから。そんな皆だから大切だったのよ。
いつ覚えたのか忘れてしまったけれど、しっかり覚えた波紋の技も使って、戦って戦って……今度は皆、生きている!久々に嬉しくて、アタシは本気で笑えたと言うのに、其れなのに何なのコレは?

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目を開くと白っぽい天井が見えた。ぶっ倒れてSWスピードワゴン財団関係の病院にでも収容されたのだろうと予想し、刺された点滴の針を若干手荒く引き抜いた。
戦った時から、そう経っていないらしいと怪我の具合から予測して、素足のままでリノリウムの床に足をつけた。
両足で冷んやりする床を踏み、身体の様子を確かめようと着せられていた病院の服をめくる。下着は違うものだった。まあ血みどろだったのだから、当然だよね。取り敢えずは、と知った気配を探すけれど見付けられなかった。波紋の呼吸が出来ているアタシやジョースターさんの回復が一番早いのは当然だ。其れなのに、承太郎達の気配が近場に無いのはオカシイ。ずっと彼らの気配の無い日何て無かったから、さすがに困惑した。
「あ!ダメですよ!ベッドに戻って!」
見回りに来たらしい看護師に声を掛けられるまで、アタシはぼんやりと立ち尽くしていたらしい。促されるままにベッドへ戻った。
「ああ!点滴!」
アタシが外したせいで殆どが床に溢れたらしい。どうだって良いが、現状を知りたい。日付だけでも聞こうと思ったが、看護師は大慌てで誰かを呼びに行った。
医者と共に看護師は戻って来て、名前に生年月日に年齢を聞かれた。記憶障害とか言われたが、そんな筈はない。
名前は煙崎タバサキ名前ナマエで、誕生日は1970年1月13日(*)。今は1989年1月上旬か中旬くらいだから、19歳になったばかり。承太郎の一つ下なのだから。其れなのに、今は1995年なのだと言う。6年も眠っていたにしては筋肉も落ちていないし、怪我だって治っていない何て変な話、信じられないと思った。
明日には警察が話しを聞きに来ると言われて、困惑した。SW財団関係の病院なら、そんな事にはならない筈だから。

次の日、本当に警察が事情聴取に来た。本当の事を丸っと話しても信じては貰えないだろうから、スタンドや波紋、承太郎達の事やDIOの事は話さなかった。もしかしたら会えるかも知れないと思ったから、家族の事は話した。
アタシは、煙崎名前で25歳。何らかの事件に巻き込まれて記憶障害になった。そう言う事になったらしい。家族についても年齢についても記憶障害。つまりコレは、アタシの姉や両親は、居なかったと言う事なのよね。アタシのスタンドはちゃんと居るのに誰もアタシのスタンドディープ・パープルを認識できないと言うのは確認済み。
−−−折角、皆と生き延びたのに……アタシには、承太郎達と普通に過ごす何て許されないって言うの?ずっとずっと、あのループを生きていなくては、共に過ごせなかった、と……そう言う事なの?だとしたら……何て馬鹿らしい。

***

新たな戸籍を得て、アタシはアルバイターになった。高校卒業出来てた筈だったのに、其れは無くなった。だから当然まともな職業には就けないのよね。何とか得た喫茶店のバイト、何とか得た住処であるアパート。そこでただ静かに生きて居た。友にも家族にも会えない日々をただ、生きているだけだった。

少しずつ、何かがずれ始めたのは何が切欠きっかけだったのだろうか。アルバイト先の喫茶店ポアロのビルオーナーである毛利さんの所に小学生が居候を始めた時?借りているアパート木馬荘に沖矢昴という男性が入居し始めた時?喫茶店ポアロに新たなアルバイトが入った時?アパートが火事で全焼した時?全てだよねって後からなら言えるだろうけれど、この時のそれぞれのアタシには分かるはずも無かった。


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2020/01/16
*1月13日:煙草の日
煙崎は7thJOJOのプレイヤーのスタンドがディープ・パープルだった場合のデフォルト名字。
私がプレイした時はコレばっかり出たのよ……次点でオーシャン・ブルーね。