タバサキ・ボタン/01/本編/リトルガーデン

 モンキー・D・ルフィを船長とする麦わらの一味は“偉大なる航路”二つ目の島となるリトルガーデンにそれぞれ上陸していた。
 当のルフィは好奇心の赴くままに、同じく好奇心と度胸のあるビビとビビに連れられたカルーと共に。ゾロとサンジはそれぞれ狩勝負に繰り出していた。ウソップとナミは恐怖心からの船番だったが流れでしょうがなくと言う形ではあったが。

 首長竜に登ってはしゃいでいたルフィは首長竜にパクリと一飲みされ、巨人のドリーに助けられて持ち前の明るさで仲良くなり、ビビとカルーと共に家としている場所へ案内されていた。
「おかえりなさい、ドリー!あら、珍しいじゃあないの、お客さんだなんて。いらっしゃい」
 巨人の住処からルフィ達を出迎えたのは、年若い女だった。それもルフィ達よりは長身とは言え、せいぜい二メートル程の普通の人間だった。しかし彼女は背中に赤子を背負い紐で背負っていた。
「おじゃまします」
「あ、お、おじゃまします!」
 軽く挨拶するルフィの声を聞きビビは慌てて挨拶をする。だが、巨人の家だと言う場所に普通の女がなぜ赤ん坊を連れて居るのかがビビには疑問だった。
「ああ、戻ったぞボタン。お前が来てからの客人は初めてだな。折角だ皆で食おう」
「良いわね。火を起こしましょうか?」
「ああ、おれはコイツを捌いておこう。お前達は、その辺りで寛いでくれ」
「うん、分かった」
 当たり前のように巨人と子連れのボタンと呼ばれた女は挨拶を交わして、ルフィ達をもてなそうと支度を進めていく。これが巨人と普通の人間でなければ、ただの夫婦のやりとりにしか見えない。ルフィは気にしていなかったが。
「んー、いいにおいだなー」
 捌かれた肉が起こされた火でこんがりと焼かれる匂いが漂う。恐竜の肉をもらえると言うことで、麦わらの一味のコックであるサンジにリクエストして作ってもらった野菜抜きの肉ばかり入った“海賊弁当”をドリーと交換したルフィがニコニコ笑顔で焼き上がりを待っていた。

「はい、焼けたわ。どうぞ」
 大きな葉っぱを皿代わりにドリーが用意して、ボタンはルフィが十人は隠れられそうな大きな肉を軽々と置いた。
「んまそー!いただきまーす!」

 肉を食べながらのルフィとドリーの談笑は盛り上がっていた。そのうちドリーの故郷の話になった。
「ところでおっさん達は、なんでここに住んでんだ?村とかねェの?」
「村ならあるさ。“エルバフ”と言う戦士の村だ“偉大なる航路”のどこかにな。だが村には掟もある。例えば村で争いをおっ始めて互いに引けぬ場合、俺たちはエルバフの神の審判を受ける。エルバフの神は常に正しき者に加護を与え、正しいやつを生き残らせる」
「ふーん、エルバフの神……」
「それで、おれもひと騒動起こしちまって、今この島はおれと、ある男との決闘場ってわけだ。正しいほうが勝負に勝ち生き残る。ゲギャギャギャギャギャ!だがかれこれ百年!てんでケリがつかねえ!」
 巨人族の村エルバフの掟と自身の状況をルフィたちに説明し、豪快に笑うドリーに目を見開き口をあんぐり開けて「百年も戦ってんのか!?」とルフィは驚いた。最初は驚くのも無理はない。ボタンも初めて聞いた時に同じ反応をした過去がある。
 ドリーが巨人の寿命はルフィたちの三倍、約三百年はあると説明しても、普通の人間なら三十年決闘を続けている事になる。スケールの大きな話だった。
「いくら三倍あったって、百年も経てば喧嘩の熱も冷めるでしょう?まだ戦い続ける意味はあるの?」
 ビビの疑問も彼女にとっては尤もだった。彼女は国の争いを止めるために命をかけた潜入捜査までしている。
「殺し合いでしょう!?」
 それを聞いてもドリーは大きく口を開けて笑い声を上げた。その時、真ん中にある火山が噴火する。その噴火に「でっけー山の噴火だー」とルフィは今まで実際には見たことのない風景に顔を向けて感嘆した。
「さて、じゃあ行くかね」
「いってらっしゃい」
 ボタンは知っている、この噴火が決闘開始の合図だと。
「ん?」
 来たばかりの事情を知らないルフィたちにドリーは立ち上がり火山を見つめて表情を引き締め言った。
「いつしかお決まりになっちまった。真ん中山の噴火は決闘の合図……」
「そんな!百年も殺し合いを続ける憎しみなんて……争いの理由は、一体?!」
「やめろ!そんなんじゃねェよ」
 この闘いは分かる者には分かるのだ。
「そう、誇りだ」
 計り知れないほどの回数、幾度目かの決闘が始まる。
「理由など!!とうに忘れた!!!」
 巨体が武器と盾を構えてぶつかり合う。初めて見るもの、何度も見たもの、それぞれにとって圧巻の姿だった。衝撃波は島中に響き、海をも揺らした。