元煙崎の転生/01-4

「こんなとこで、終わるわけにはいかねェよな……ボタン」
「そうね……あんたはここで終わるような男じゃあ、ないわよ……エース」
 海から上がりずぶ濡れのまま、浜を歩いていた。
「あ!木の実があるぞ、ボタン!」
「え!?どこォ?……これ?」
 なんというか、バレーボールくらいの大きさでオレンジ色のトゲトゲしい変わった木の実だった。パイナップルみたいなものかな、と思っていた。
「大きいわね、食べられるのならありがたいわ」
「食えるだろ」
 ところで、力なく歩いてくるデュースの気配がそれなりに近くまで来ている。木陰に隠れているが、少しばかりの敵意が隠し切れていない。エースは気づいてないらしい。様子見するしかないだろう。
 オレンジ色の実を2人で見聞していると、この実に気がついたのだろう。意識が実に集まっている。直ぐ近くまで忍び足で寄ってきた。木の棒を振り上げ、敵意が高まった瞬間に、ヤツの腹の虫が盛大に鳴いた。
「ああ……」
 諦めの声がした。
「ん?おおっ、この木いいな!」
 デュースが振り上げた武器であるはずの木の棒を、ただの“いい感じの木の棒”としてエースは掴んだのだ。
 棒を掴まれたデュースは手を離して、尻餅をつく。顔面蒼白で息も荒い。私だけなら返り討ちにしていたところだ。だがエースにはその気はない。だから私は見逃そう。
「船、手伝いに来てくれたんだろ?」
 そう微笑むエースに、私は誇らしさで胸が熱くなった。エースは最高だ!
 こんな対応をされてデュースは力なく呻めき泣いていた。泣きながら腹の虫も鳴いた。苦笑まじりにエースが、オレンジ色の実を差し出す。
「ほら、食えよ」
 しかしその瞬間に、エースの腹の虫も盛大に鳴いた。
「あっ」
 そう声を上げて、それでもエースはなんで食わんのだ?と言いたげに実を差し出したまま立っている。まだ沢山あるのだろうと問うデュースに、エースが正直に答えているのを私は黙って聞いていた。この果物は1個だけしかない。
 その答えを聞いて、座り込んでいる男は考えを巡らせている。ようやく分かったらしい。自分がエースを偏見の目でしか、見ていなかった事実に。
 そのあとは、食え、食えねえ、と2人の半ば意地の張り合いの応酬が続いて……エースがその果物をナイフで3つに切り分けて、それぞれに渡して言った。
「よし、じゃあ皆で分けようぜ。それならいいだろ?」
 まずはエースがひとくち齧って咀嚼し、飲み込んだ。
「うん、毒はねェぞ……うん。まずいけどな」
 まずいんだ、そう思いつつも口に入れてみると確かにまずい。こんなにまずい食べ物は初めて食べたというレベルのまずさだった。
「こんなまずい物は初めて食べるわ」
 まさか悪魔の実だろうか?悪魔の実というのは、分けて食べても大丈夫なのかは知らないが……この状況で食べられる物は無駄にできない。思っていたよりも果汁がたっぷりで過食部の量もあって喉も潤う。デュースはうめェ、と言いながら謝りながら泣きながら……このまずい実を食べていた。
 今までのデュースとの悪い空気感を連れていくかのように……今日の夕日が沈んでいく。綺麗な夕日だった。