漆黒の檻

小説等でループものって有るじゃない?アタシの現状が其れなのよね。けど、条件はアタシが殺されるか自殺するかで幼少期に戻っちゃう。
そうだと気付いた時には、どう頑張っても黒の組織側に関わる羽目になって死ぬのがお決まりになってしまっていた。
せめて、哀ちゃんのお姉さんとか、降谷さんのご友人とかを助ける方向に行きたかったんだけど、アタシの周りには妙に組織のセーフハウスが点在している。
偶然飲みに入ったバーでベルモットに出会でくわした回もあった。そう言う所では時にはジンだの何だのに出会した。そう言う所に行かない様にしても、毎回どこかしらで誰かしらに会ってしまう。
殺しの現場に居合わせてしまう事も多々あった。当然、その場で射殺である。
そんなつもり無かったのに、組織の平メンバーになってた事も多々ある。その半分は平で死んだが、残りはコードネームを得ていた。

最近のループでは殆ど、ジンのセーフハウスで家政婦みたいな事をしている。セーフハウスは東京に幾つか有る。外国へ行く場合はホテルがメインのようだ。そう言うのが把握出来る程度に、あちこちのセーフハウスに動く度に連れて行かれている。
殆どはジンに使われているが、偶に別の幹部に貸し出される。大抵はセーフハウスを引き払う時と新しく設置する時だった。清掃には盗聴器等を探し出す事も含まれていた。
このループが何度目だったかなんて覚えて居ないけど、一度覚えた技術なんてのは次回以降のループで、もう一度か二度教えられたら直ぐに思い出せる。だから、少し教えたら直ぐに使える人材に成っちゃっている。いつのループからだったか、本来ならピスコがしていた仕事は、奴が死んだ後は、私とウォッカに振り分けられていた。銃の使い方は大体ジンに、ハニートラップのやり方と、そう言う時のベッドでの振る舞い方はベルモットに教えられた。
化粧のやり方もベルモットに教えられたお陰で、化粧だけで少しの変装は出来るのは有り難い。けれど、それらの技術を会得したと思わせる為には、教えられるまで、知らない振りか拙い振りをする必要が有ったから、演技力は鍛えられた。演技しなければ怪しまれて、ズドン!を既に経験済みなのである。演技が下手でもダメなのも数回。
これだけのループの間に得た技術が有れば、組織に関わらないと言う事も可能だと思う。けれど、これだけ共に過ごした事で情がわいてしまったのだろう。私はもう組織に関わらずに生きるのは無理だ。

あるループで初めて、ジンに抱かれた。
もっと乱暴に犯されるものだと思っていたのに、湛然にキスして、体中を愛撫して、それだけでイかせてからの挿入だった。こんな風に抱かれる何て思ってなかった。何度だってハニートラップで男と寝たのに、ジンが一番優しかった。なのに、こう言う時に限って、アタシは公安の作業班だった。結局はバレてジンに撃たれて、忘れられないループになってしまっている。

次のループからアタシは、ジンにだけ従うようになった。ループによって、ジンとの関係が違う時も有った。極稀に手酷く犯され続けるループだって有る。けれど、それでもジンとの初めての記憶が有ったから、何ともなかった。何がループの終わりの条件なのかは分からない。ただ、アタシはどのループでもジンの為にだけに生きていた。

***

「アマレット、悪いな。」
何が起きているのか、困惑した。こんな事は今まで一度も無かった。ジンの為に生きていても、使える人材としてRAMからの指令が貰えるようになっていた。
けれど、ジンが一番大切なのは変わらない。其れなのに、今回はジンがNOCでアタシにベレッタを突きつけている。
「なんだ、そう言う事ね……変だと思ってはいたの。リースリング、スタウト、アクアビット、キール、ライ、スコッチ、バーボン……みんなNOCなのに誰も死んでないんだもの。」
構えていたベレッタ92の銃口は既に地面に向いていた。
「それだけのNOCを知っていて、何故……?」
バーボンの疑問に答えてやる必要性を普段なら感じないが、もうどうでも良くなって来ていた。
「RAMに言わなかったのか?って?」
「ええ、あなた程に信頼されている幹部は他に居なかった。」
「はは、あんな奴が信頼している?誰も信じちゃ居ないでしょうよ……でも、ジンの為になるって知ってたら、探っておいたのに。」
「テメエ、そんなそぶり何ざ見せなかったじゃねえか。」
「だって、ずうっと前の時、其れ言ったら殺されたんだもの。」
「は?殺された……?」
「今は何ループ目か分かんないけど、いつも殺されたり自殺したら、時間が巻き戻ってんの……最初の頃は訳も分からず殺されてたけど、慣れて来たら前に仲良くなった人を助けようとして、殺されてを繰り返してた。でも今回は助けたかった人は皆、生きてる。だから、もう繰り返したく無いなあ……。」
「今までに誰を助けようとした?」
「イヤね、言う必要がないでしょう?みんな生きていられたんだもの……。」
「吐け。」
「自分が死んでたらイヤでしょ?」
「待って、アマレット、あなた……任務でバージン散らしたんじゃ……」
「そんなの、些細な事でしょ?経験する機会があった時は全部、そうだっただけよ。不安なんて最初の頃だけ。そう助言をくれたのも、泣いてたのを慰めてくれたのもベルモットだった。」
「それって、NOCじゃあ無い時のワタシでしょ?何で……」
「いつも、ベルモットは余計な犠牲者を嫌がったわ。子供には手を出したく無い人だって知ってたから、たまに代わってたよ。」
「な?!」
「いつも優しくて綺麗で、生き方を教えてくれた。大好きだったわ、ベルモット。」
「生き方……」
「ジンにも生き方を叩き込まれたわね……撃ち方、戦い方。ああ、私が壊れ切って終わなかったのは貴方のお陰だった。ずうっと前に、私が公安の作業班だった時……初めてマトモに抱かれたんだもの。あんなに幸せなセックス知らなかったから……バレて殺されても、幸せな記憶よ。」
もう会えないループでのジンを思い出に生きている哀れな女が、そこには居た。