別に望んだ訳じゃない。2

キャラクター
黒澤麗奈(レナ):特撮や警察もの特化の女性
妃理津子(リツコ):アメコミ特化の女性
降谷一美(カズミ):漫画特化の女性


それぞれに前世の記憶があるのだと、作品群を見た時には互いに確信していた。
それを互いに言う必要を麗奈は感じていなかったが、理津子と一美は違ったらしい。麗奈の家である、セキュリティのちゃんとしたマンションで情報共有は勝手に行われていた。
「まさかコナンの世界とは思わないじゃない。でも思いの外、治安は良いのにビックリしちゃったなあ。」
とは理津子の感想である。
「待って……私は、前世の記憶について話すつもりは、」
「ダメです!私の弟の友人や幼馴染みが尽く死んでしまうのは避けたいんです!協力して下さい!」
「一美ちゃんの弟って、まさか!100億の男、安室透こと降谷零?!」
盛り上がる二人に麗奈は首を傾げていた。
「まさか知らないって言うの?」
「悪いけど、ほんの触りしか知らないのよ……人気なキャラクターが居るってのは薄ぼんやりと聞いた事が有るんだけどね、その程度よ。」
そう言った麗奈に二人は本名は降谷零で偽名が安室透、組織でのコードネームがバーボンだと言うトリプルフェイスの話しを事細かに教え込むのだった。

「ふむ、警察庁警備局警備企画課のゼロって普通は前線に出ないものだとばかり思っていたのだけれど。特殊な事情が有ると見て良いのだろうねえ。」
「詳しいの?」
きょとんとしたのは当の姉であった。
「はは、私のジャンルには多少は警察ものだって入っているからね、少しだが詳しくもなろうと言うものだわ。だが、そうなれば急ぐ必要が有りそうね。」
原作開始の七年前となれば、既に三年程しか無い。
時期や死因等から、自分達に出来る事をほんの些細な事でも挙げて、其れをする為には何が必要なのかをも見据えなければならない。

打ち合わせは始めだけは麗奈のマンションで行われたが、次第にそれぞれの家で交代で行われる様になった。
麗奈の兄が、作中の組織の幹部であるジンだと確定した時は、兄が警察官である事を以前から言っていたにも関わらず、驚いている麗奈までもが組織の人間かと勘違いされそうになったりもした。その時の一美が「ジンの情操教育に成功したのかしらねえ。」何て言うものだから、麗奈も理津子も爆笑してしまった事もある。
そんなハプニングもあったけれど、毎日の原稿書きの合間に行う今後の対策についての話し合い中は大真面目だった。数年内に死ぬ可能性がある人間や、その親友に鉢合わせする可能性も大いに有ったが、その時はその時で、知り合いになれたら対策もしやすく成るかも知れない、と思うことにしていた。

***

「ただいまー。」
「お邪魔しまーす。」
東都大に通う一美の弟と弟の友人の声がした時、三人は思いの外落ち着いていた。
「おかえりなさーい。」
迎える声はいつも通りだった。
「あれ?お客さん来てるなら外行ったほうが良い?」
「気にしないで良いよ、ヒロくん。今から麗奈ちゃんが紅茶淹れてくれるから、零くんもヒロくんも一緒にどう?」
「姉さん……客にお茶を淹れさせてるのか?」
「良いじゃないの。麗奈ちゃんが一番上手いのよ。」
テーブルを片付け紅茶を出して、今回は理津子が持って来た御茶菓子五人分を出せば、黒い髪の人間が一人しか居ないお茶会の始まりだった。

「えっとねえ、作家仲間の黒澤麗奈さんと妃理津子さんだよ。」
「黒澤麗奈。一美さんとは違うジャンルですが、仲良くさせて頂いてます。どうぞお見知り置きを。」
「妃理津子よ。私もジャンル結構違うけど、仲良くさせて貰ってます。よろしくね。」
「降谷零です。姉がお世話になっている様で。」
「諸伏景光です。コイツの友達です!」
「麗奈ちゃんは東都大の法学部卒なのよー、君たちの先輩!元お巡りさん!」
「え!何で辞めちゃったんですか?」
「こら、失礼だろ。」
「良いのよ。そうね、敢えて言うなら、自分の作品が犯罪の抑止力になったら良いなって思ったのが大きいかな……グレかかってた兄が、私が子どもの頃に書いた話を読んで警察官になったみたいに、ね。これ言ったらミョウジには兄の情操教育に成功したのねって言われちゃって、爆笑したわー。家事は私がしてたけど育てたは無いわよね。」
「え!それ育ててますよ!」
「ヒロ!お前、」
「あはは!もう、あの兄を!あー、会いたくなっちゃったわ。」
「会えてないの?」
「ん、まあ……理由は分かってるから良いのよ。」
「その理由は?」
「NEED NOT TO KNOW……言えるのはそれだけね。」