魔法処に通う名前の話。1

名字ミョウジ名前ナマエは今年で七歳になる。一度目の生、何て物の記憶が有ってしまう以外は極普通の少女だ。極普通と言っても、その前に「魔法族として」が付く。文字通り名前や、その家族、親族達は魔法が使える。
初めは名前も困惑した。けれど今世では当然の様に有る魔力は幼い名前の感情によって、顕現されていた。嬉しくてたまらない時には桜の花弁や梅の花などがパラパラと空中に現れたし、悲しい時などは花瓶や湯呑みに触れずに割ってしまう。
それも良くある事として、大人達は手のひらをかざして握る様に振ったり、扇子を振ったり、印を結んだり、杖を振ったりして片付けてくれた。
その時「名前は魔力の顕現が早いね」と良く言われた。初めて花弁を舞わせたのは一歳半だった。一般的な年齢より一年程早いのだとか。こういうものが早くても能力が突出してたりはしないだろうと名前は思っていたが、魔法に関しては魔力の多さに関係が有るらしく、予定よりも早く魔力コントロールの為の教育を受ける様になった。家庭教師としてついてくれたのは、賀茂雷厳かものらいげんと言う古くからの陰陽道に通ずる家系のお爺ちゃん先生だった。母の実家である為、両親共に賀茂かもの本家とは懇意らしい。
賀茂家と言えば、七歳になった名前が入学する魔法処まほうところの創設者の一人である賀茂忠行ただゆきを祖に持つ、非常に古くからの名家であり、雷厳の長男は陰陽寮の職員、次男は魔法処の教師、長女はプロクディッチ選手と来ている。既に長男に家長の座を譲っていて、魔法処の元教師であった雷厳は、親戚の子ども達の家庭教師を引き受けていると言う訳だった。
「もう入学か、早いものだな……」
らい先生、其れいつも言ってらっしゃるわ。」
「子供の成長とは得てして早いものだからね。さあ、しっかりと学べよ。」
「はい。勿論です。」
名字名前は雷厳の亡き兄の孫だ。雷厳の兄は娘が一人だった。そして孫も名前一人きり。名前の母は体が弱く、子を産んで直ぐに他界してしまった。当の名前は体も丈夫で、魔力も濃い目だが濃過ぎず薄過ぎず、質も良く、量も多い。優秀に育つと、今まで家庭教師をしてきた雷厳は確信している。

魔法処のカリキュラムは空手や剣道などの体術・ちょっとしたおまじないに遠くからの呪殺まで行える呪術・星を読む占星術や透視と言った占術・薬草などの薬の材料の見分け方から調合まで行う薬学・料理を通した食育や日常的に役立つ家事について学ぶ家政・国語・歴史や地理と言った社会・算術・理科・音楽や美術と言った芸術・各界のマナーや常識を学ぶ社交、などなど様々有る。其れを少しずつ学び経験する。

巫、神官、僧と言った職に着く者たちの殆どが術者だが、一部外国人がいつの間にか乗っ取っている場所だけは術者が居ない状態に成ってしまっている。
今まで通りに祀っていれば問題無いレベルである故に放って置かれているが、これ以上の流入による祀り損なっての祟りを防ぐために、術者であれ養成学校を出なければ寺社に就職出来ない事に最近変わった。その上、術者でなければ養成学校に入学すら出来ない様に締め付けてある。
日本における術者(魔法使いや魔女)の割合は其れなりに高い。術者で無くとも、ほんの少しの力が有る者も多いが、其れは単に霊感、感の良さ、と思われて居る。所謂、精霊の加護、神の加護と言ったものは術者、全く能力の無い者(世界的にはマグルと言われる人たち)問わずに有る者には有る。代々続く血筋についた加護と個人を気に入りついている場合と、別れている。
其れと同様に、マグル生まれの能力は遺伝する為、マグル生まれ同士の婚姻で生まれた3代目を純血の初代と扱う。その結果、国内では、じわじわと術者の家系は増えている。
其れに、純血初代扱いの者が女性であった場合の純血旧家からの求婚の多さは、怖い程である為に、純血初代の女性は陰陽寮での保護のもと本人の意思によってのみ結婚するか否かを決定される。陰陽寮の進める結婚を受ける場合、基本はお見合いだが、血を薄める緊急性の高い家がある場合は、其処に嫁入りする事になる。其処までして管理しなければ、攫われる事も、無体を働かれ既成事実からの結婚と言う事も大昔には有ったのだ。

入学して、6年間は一人一人の一時的な相棒となる黒海燕で通学し、その後は寮生活が始まる。
飛行機との遭遇を避け、レーダーの範囲に入らない様に気を付ける。其れは大人も子供も気を付けて来た事だ。幼い頃よりそうする事で、注意深くなる。けれど、それだけでは科学の進歩に伴い危険が増すだろうと、各地の小学校へ集まり、引率の教師によって、クラスごとに魔法処城へ術で移動する。名前が入学した時には既に、そうなっていた。

2019年12月17日