魔法処に通う名前の話。2

入学して4年目の夏休み前の事だった。教師に呼び出され、職員室へ行けば同学年の生徒が自分を含めて3人呼び出されていた。
諸星光太郎、北斗英二と言う名前と成績の上位争いを一年生の頃から続ける2人だ。
「揃ったね。君たちを呼んだのは、イギリスの魔法学校への留学について話さねばならなくてね。」
3人が揃うと呼び出した教師が早速本題に入った。
「イギリスの魔法省から交換留学の誘いが来ているのだが、区切りとして六年目が修了した生徒を、先方の11歳からの入学である一年生にと陰陽寮では話がついている。そして、ホグワーツでの学習と魔法処での本来の学習を、どちらもして貰わねばならない。それが出来るのは君たちくらいだろうと、教師一同で話し合ってね。まあ、あちらの教育水準というものも知りたい。帰省の折には記憶の提出をして貰う事になる。大変だろうが、お願いしたい。」
正直なところ、行きたくは無いが、決定事項の様だ。断れないだろう。
「イギリスの魔法学校と言えばホグワーツですね。マグル側でも付き合いのある純血家系の御子息方の出身校ですので楽しみですわ。」
そう微笑む名前に教師は安堵感を薄ら滲ませて笑んだ。
「名字さんとお付き合いの有る方と言えばマルフォイ家でしょうか?爵位も有る家系ですし、御親族でしたよね?」
諸星くんの言う通りだ。結構有名なのかもしれない。
「まあ、他の方々とのお付き合いも有りますけれど、マルフォイ家の場合、アブラクサス様の姉君が名字家に嫁いでみえたの。だからでしょうね、私も含めた幾人かの親族はグリーンやブルーグレイの虹彩をしているわ。」
アブラクサス様の姉君で次期当主であるルシウス・マルフォイの叔母ソフィアは名前の父方の祖母であり、ルシウス様は私にとって従兄弟違いであり、ルシウス様にとっての私は従姪いとこめいとなる。
とは言え、年齢差も有ってルシウス様と私の両親では、私の方がルシウス様との年齢差が少ない。
まあ、母の父、つまりは私の祖父もイギリスから来た混血だ。混血との結婚は反対される事が多いのだが、彼の魔法使いとしての血筋が古いものだった故に許可された様なものだ。
「へえ、確かに淡い色の目をしてるとは思ってたよ。」
北斗くんの言う通り、灰色がかった薄い青色の虹彩に髪は濡羽色ぬればいろ。自分でも中々の良いとこ取りだと思う。
「まあ、ともかく、君たちへの説明会と御両親への説明会も追々開いていく予定になっている。今日は一先ず知らせておこうと言う事になってね。後日文書を送ろう。話は以上だ。」

***

「名字さんって、魔法処を創設した賀茂家の血も継いでいるんだろ。その上、イギリスの名門マルフォイ家とも繋がりがあるんだな。さすがに知らなかったな。」
「いやだな、北斗くん。名字さんとしては言いふらす様な事じゃあないのですよ。どちらも素晴らしい家系ですが、名字家と言えば長く続く純血家系は皆、彼女と親族。彼女のお祖母様がマルフォイ家からの方だと言うのは、遠い血を入れる事で、濃くなった血を薄める目的でしょう?」
「ええ、そうね。血が近いままに魔が蓄積された場合、親族皆に迷惑を掛けるわ。当主は厄災を沈める為に在る存在であり、名字家はその血に禍を溜める事で厄災が溢れぬ様に存在する。其れに対してマルフォイ家は、浄化をする清らなる血よ。戦後に嫁いで下さったソフィア様のお陰で、今の私たちはとても良い状態なの。まあ、マグル側で余程の事が起きない限り、この浄化作用はあと百年程は保つわ。」
「マグル側で、何が起きたらダメなんだ?」
「簡単に言えば戦争ですよ。先の大戦では僕のところも大変でしたからね……我々の祖父母世代の純血は負担の多さによって世界規模で早死にして行くでしょう。既に影響は出ていますよ。」
「世界規模!?マジか。どおりで良いとこの爺様も婆様も亡くなってる家が多いんだな。」
「基本的に、マグルを排そうと言う機運が高まりやすいのは、戦争中盤から戦後直ぐまで、理由は地脈の乱れや神聖なる地への穢れを引き起こしたマグルへの危機感とでも言えば分かりやすいかしら。」
「地脈、龍脈、の乱れに穢れ、其れはどうしても災害を引き寄せるんですよ。其の綻びを治す事、我々が隠れ住む為の結界の維持が必要です。その術は純血の遺伝子そのもので有ったり、各々の家系で伝承されるもので有ったりしますねえ。ほら、蛇を祀る家系は蛇語を解す者が多いでしょう?」
「ああ、俺の家系も代々マグルの頃から蛇を祀ってた家だから、俺も蛇語が分かるんだろうって先生に言われたな。」
「ええ、貴方には家系に蛇神様の加護が有るわね。そしてそちらは火の神様でしょう。」
「そう言う貴女の家系は水神様だ。僕らは案外バランスが良いと思いません?どの家も強い加護の有る家です。」
「まあ、そうね。協力したら隙が少ないのは確かだわ。」
「そこで隙なしと言わないのが、流石だなあ。これから宜しくな!」
しばらくの雑談の後、3人は帰路についた。

2020/04/29