イギリスでの生活は、其れなりにスキルアップになった。私に危険を回避する術を少しでも持っていさせたい、そう言う意図があるらしく、私はとても厳しく母さんの本職の技術を教えられ、截拳道の組み手も更に激しくなった。
お陰で身長も女の割に伸びて、筋力もついた。見かけの割に体重が有る。だけど、胸がBカップしか無い。母さんはもっとあるのに。
だから髪はロングにして、女の子に見えるように、と願いを込めてある。それでも、男に間違われるのは、秀一兄さんの真似をした様な格好が多いから、なのかもしれない。でも、それだけは止める気は無い。いつもボーイッシュな格好をしていたから、秀一兄さんと再会した時には、似た様な格好をしておきたい。変わらず待ってるって伝えたいから。
*
イギリスでの日常は唐突に終わった。
母さんが、子供の姿になって帰って来たんだ。父さんを名乗る呼び出しは、やっぱり罠だったんだ。日本へ逃げる様に渡ったけれど、今の母さんではパスポートなんて取れない。だから不法入国・密入国になってしまう。私は反対した。けれど、私の忠告や提案が聞き入れられた試しなど、無い。母さんの事は必要な場合は、妹として説明する事になった。
だったら、私は私なりに勝手に動かせてもらうまでだ。私は母さんと同じ場所に属している訳じゃあないんだ。其れに、私はいずれは日本に帰化したい。生まれた時から、いや、前世からずっとアイデンティティは日本人なんだ。
私を鍛えたのは母さんだけれど、それを使うのは私だ。従う気は既に無い。
(私、母さんにとって、悪い子だな。)
母さんが、私を鍛えたのは、私が自衛出来る様にと言う親心何だと思う。
ああ、許して何て言う気は無いけど、もう「私」何て言わない。これから「僕」として生きる。僕が女だって事も、母さんが関わらせない理由の一つだって知っているから。私を封印する。少ないなりに持っていたスカートも、ブラウスも下着だって全部、可愛いやつは引越しの時に処分した。
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引越した先は東都と言う場所。小学生の頃に東京じゃあないのか、と不思議に思って一人で調べた事があった。その時に知ったのは、いくつかの地名が知らないものに置換されている事。だからきっと前世とは何かが違う場所なんだろうと、思ってはいた。
だけど、編入した帝丹高校と言う名の学校に、工藤新一と毛利蘭に鈴木園子と言うトリオが居るのは、どう言う事なのか分からない。有り得ない事でも可能性として真面目に考えた場合、ここは名探偵コナンと言う作品の作品開始前の時間軸なのかもしれない。
(面白いじゃないか!あの時のボウヤが後の江戸川コナンだったんだな……あの時に分からなかった何て、僕って抜けてるよ。出来たら幼児化なんて防ぎたいところだな。)
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高校一年のほとんど終わりに、転校生として帝丹高校に編入して来た世良真純は頭も良いが運動神経も良く、その上、俺がホームズの話しを振っても、理解している。当然の様に良いミステリー仲間として良く話す様になった。俺が気付かないところ、理解出来ない様な犯人の行動に対しても、色々な推測を出せるのは悔しいけど、俺に足りない領域の想像力を持っているんだろう。
それだけじゃない。俺は推理して犯人を追い詰めるスリルが、たまらなく好きだが、世良は違うらしく、犠牲者・被害者の為に、次の被害を出さない為に、を信条にしているようだった。俺には理解出来ない。そう言うと「考えは人それぞれだからな。」と冷静に、しかし少し残念そうに返された。
目立つのは平気だけど、別に目立ちたいわけじゃない。むしろ誰にどう見られようが、気にしていないんだろう。世良はそう言う奴だ。
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転校生の世良真純。あっと言う間に新一と仲が良くなっちゃったから、どう言う事かと警戒しちゃったけど、何の事はなかったわ。世良さんが、新一について行ける程の推理オタクだったってだけだったと言う訳。いつも身近に、同じ趣味の奴が居ないから、一気に距離が近付いたってカンジね。
そして、何より女の子にしておくのが勿体無いくらいに、カッコいいの!
真剣な時に見せるクールな表情に態度、ニヒルな笑み、たまにしている物憂げな表情、クラスメイトの男子と並んでも遜色ない程に高い身長は、新一と同じくらいだし、モデルみたいに細いけどヒョロいんじゃなくて、鍛えてるって分かる背筋の伸び方。落ち着いた色のグリーンアイ、ウェーブした黒いロングヘア。健康的な肌の色。其れなのに目に下には濃い隈がある。全てを合わせたらミステリアスに思えて、女子人気は高いの!ま、男子は女の子って見てないんじゃない?
聞けば、イギリスの血が入ったクォーターだって言うじゃない!あのミステリアスなグリーンアイも、高身長なのも納得よねえ。
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新一に新しく推理仲間が出来た。女の子なんだけどボーイッシュで、むしろカッコいいタイプの転校生。いつの間にか、新一と双璧の高校生探偵ってクラスメイトに呼ばれる様になっていた。
けど、新一みたいに目立ちたいって風じゃ無いらしくって、コレは目立ちそうだなって時には、後ろに下がっている事が多いみたい。それでも気づいた事があれば新一に耳打ちしたりして教えてるんだって。
笑うと可愛いって男子には見えて無いみたいで、勿体無いなって思った。でも、新一が世良さんに対して、そう言う意味では意識して無いって事には、安心してしまう。それくらい、世良さんは魅力的な人だと私は感じてる。
世良さんは、新一と一緒に推理している事が多いから、私や園子とも一緒にいる事が増えて、私達は仲良くなった。
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僕は生まれた時から世良真純と名乗っているけれど、書類上は赤井真純だ。母さんだって赤井メアリーが本来の名前。
世良は母さんの旧姓で、日本にはその妹である世良エレーナが居るはずなのだと言う。
宮野と言う日本人と結婚し、宮野エレーナとなって居るはずの、僕の叔母の所在は、母さんは巻き込みたく無いからなのかも知れないが、探す様子が無い。
僕はひっそりと調べていた。叔母一家の事、兄の事、あの組織の事も。
その一環として、両親を亡くし、日本に居るはずの連絡のつかない兄を探しつつ、病弱な妹の世話をしている、と言う風を装い、おそらく組織の人間が使う率の高いらしい、個室有りの喫茶店のバイトを始めていた。
僕の外見は秀一兄さんに良く似ている。其れを利用出来るのなら、悪くは無い選択だと思った。
そして、それは予想よりも上手く行ったのだと思う。目当ての組織の探り屋が接触して来たのだから。
そして、その探り屋が僕を見て、連れ出した所までは良かったが、彼にとっての安全らしい場所に連れられて、日本警察として保護しようとするものだから、僕が日本人じゃない事、調べたい事が有り、従姉妹が組織に居ざるを得ない状況の筈で、彼女たちを助けたい事、母の事までをも白状した。
「やはり、君はあの時の赤井の妹なんだな。アイツと言い、君の血筋は我が強いんじゃないか?」
「まあ、母譲りじゃないかと……あの人、激情家で頑固だもの。僕もそんな時が有るって自覚してますし。」
そこで言葉は途切れ、ちょっと自嘲してしまう。僕には覚悟が有るんじゃないのか。
「でも、兄さんは逆に、あんまり会った事が無いから、分からないんです。でも、僕って似てるんだな……貴方って兄さんの事、嫌いでしょう?」
「ふん、お前、僕の事を覚えてるなら、あの時に一緒にいた奴も、覚えてるんだろう?」
当然だと頷いた。私にとって忘れられない人だから。
「ああ!あのお兄さん、覚えてるも何も僕の初恋ですから。あれからベースだって始めて……何で、そんな顔するんですか。まさか、死んだとか言わないでしょう?」
私の初恋だと言う言葉のタイミングで、彼は何か悲痛なモノを見る目で、私を見た。嫌な予感に、彼に縋って聞いた。
「……アイツは状況的に赤井秀一の手で死んだ。」
「っ!そんな、兄さんが?」
力が抜けた。別に思っていられるだけで良いと思っていた。何処かに居る彼の事を、遠くから。
それが既に叶わないのなら僕は、せめて組織を無くす為に動こう。今まではただ、自分の大切な存在を引き離す組織について、知りたいだけだったけれど、もう、そんな理由じゃ居られない。
「忌々しい程に同じ目をするんだな、ライ、いや、赤井と……だが、未成年の君を関わらせる事は出来ない。」
「本当は嫌だったのですが、僕ってMI6の訓練を当時現役だった母親に仕込まれてるんですよ。ある程度は使える駒、母は僕を、しっかりそう使っているつもりですよ?」
そう笑えば、安室さんは更に不機嫌な雰囲気になった。僕と居る間、ずっと機嫌が悪い。おそらくは、スコッチと呼ばれていた彼は、彼と同じか、ほぼ同じ所属だったんだろう。それで兄さんを恨んでいるのかも知れない。僕は、出来るなら敵対はしたくない。けれど兄さんはどう思っているかは分からない。その必要が有る時が来るのなら、覚悟をしよう。
***
赤井秀一を兄だと言う女子高校生、世良真純。彼女が純粋に家族を探しているんだとしても、一人で組織に近付こうとするのは危険過ぎる。場合によっては保護も観点に入れて接触して、一目で分かる程に赤井に似た容姿に立ち振る舞い。保護すべきだと、そう行動したが、本人に「残念ながら日本人じゃないんです。ですから受けられません。折角の申し出ですが、すみません。」と断られた。
その上、年齢は不明だが従姉妹が組織に居ざるを得ない状況で、助け出したいと言う事。
従姉妹の両親が既に故人であろう事と其の死に繋がった様に、親族が関わり不幸になり続ける組織の壊滅の為に動くのだと言う意思。
そして、ヒロが初恋だと言う。僕の友であり、よりによって彼女の兄が殺しただろう男。皮肉なものだ……僕の気持ちを一番分かる可能性の有る人間が、奴の実妹だとは。
しかし、MI6は実子に何をしているんだか。さすがに個人の判断だろう。そして本人が望み、MI6の親が教育したのなら、協力させる実力は有るだろう。
気になるのは、日本人じゃないと本人の口から語った時の、物憂げな雰囲気だ。何も問題にならないので有れば良い。
彼女はひっそりと、僕らの協力者となり、バーでは未だ僕以外に彼女の情報を捕まれていなかった為、バーボンの子飼いとして振る舞える様に設定を教えた。
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2020/03/31