side.アーシェ
予想より順調な旅ではあったけれど、知らなかった野営や実戦の知識等を、実地でウォースラやバッシュに教わると言う経験は、辛い時も有ったけれど今後の糧となっただろう。
とった宿をひっそりと出て、宿の裏の誰もいないだろう木の影にある石に座って空を見上げた。息が白くなって拡散して消える。黒魔法の応用で、衣服の隙間に暖かな空気の層を作って見ると、案外快適である。ルールーが熱い時に衣服の下を黒魔法で涼しくしていたと読んだ事が有るから、それの真似だ。これまた上手くいって助かった。
ぬくぬく、あったかいのは幸せだ。
「そんな所で寒くはないのか?」
声変わり前の少年の声がして、振り返ると、緩い癖毛の黒い髪を肩で切り揃えた身なりの良い少年が立っていた。
「ふふ、こちらに来てみて下さい。」
初対面のお兄さんだけど、このあったかい幸せのお裾分けくらい許されるでしょう。
「?では、失礼する。お、君が暖かいのか、これは?」
「黒魔法の応用で服の下を温めているんです。先程、思い付いてしてみたのですけれど、中々に快適です。理論的には触れていれば貴方にも出来ますよ。」
隣に座り不思議そうにするお兄さんに、何となくの魔法で有ると説明して、手を差し出した。
「黒魔法で?ほお、面白い事を思い付くのだな。お願いしてみようか。」
「其れでは、御手を拝借して……ふふ、ほら、お兄さん、出来たと思います。どうでしょう?」
高い位置にあるお兄さんの顔を見上げて尋ねれば、驚いた様に目を見開き、破顔した。
「凄いな!暖かい……これは夏にも涼しく出来るんじゃあ無いか?」
同じ発想に、嬉しくなって頷いた。
「同じ事考えていました!私の国は普段暑いので、涼しく出来たら快適だなあ、って思っていたんです。」