戻れやしないから 6

新しいバイトの安室さんが入ってから、バイトで何時も以上に疲れる日が増えていた。
探る様な目線は、振り返れば飛散するけれど、誰が私を見ているのかくらい分かる。気配を感じ取るのは得意な方だった上に、私にはスタンドディープ・パープルが居る。スタンドが見る景色は私も共有可能なのだ。
だから、安室さんが私の方を横目で眼球すら動かさずに見ているのを確信して、とあるインタビュー記事を思い出し、確信した。

この男は、なんらかの探り屋だ。日本なら公安の作業班ってやつで、他ならCIAとかのスパイ。私が読んだインタビューでは、公安警察は横目で眼球を動かさずに真横位までは見る事が可能な様に、訓練を積む!そうあった。他でも同様の技術は有るだろうが、ハッキリ知っているのは公安警察の事だけだった。
何故自分が探られているのか?恐らくは、私の経歴だろう。今26歳と言う事になっているのに一切、知り合いも家族も存在しない無国籍の人間など、怪しいに決まっている。だから、無国籍だったと知った途端にコナンくんも、あんな風に私に言う様になったのだろう。
昴さんにも、有希子さんにも、みんな、知ったら同じ様に成るんだろうか?
其れだけは嫌だった。本当の事を言っても信じては貰えないだろう。だったら、無国籍だった事も、別の世界から来たとしか私には考えられない現在も、全て隠し通す。其れしか無い。



「名前さんは恋人とか居ないんですか?」
そう聞いて来たのは園子さんだ。今日も蘭さんと一緒だ。其れから最近引っ越して来たらしい世良真純さんも来ていた。
「え?アタシ?うーん、今は学校とバイトで精一杯なんですよねえ。」
「大学生なんですよね?そんなに大変なんですか?」
「いやあ、さすがに東都大学だもの!勉強だって難しいに決まってんじゃないのよ!」
「それは何とかなってるんですけど、お恥ずかしながら生活費を稼ぐのが一番大変で……此間こないだはバイト先が爆破されて一か月まるっとバイト代が入らなくて、大変でしたよ。」
「爆破?!大丈夫だったのか?」
「犯人は捕まったから、もう大丈夫だと思いますよ。」