願いは今日の平和である。2

私は、中学を一番近い帝丹中では無く、別の場所を望んだ。家から離れている為、電車通学だった。
理由は、新一の言う事も成す事も、気に食わない事が多すぎたから。トップは私の父への非難にあたる言葉を含む、デリカシーの無さ。犯人を追い詰めるのが快感だと言う、有り得ない程に軽々しい理由で繰り広げられる推理ショーと言う名の名誉毀損。本当の事でも名誉毀損になり得ると知らない筈が無いのに、と不思議だったから、私にとっては下らない自己顕示欲に驚いた。
私にとって、工藤新一との時間は小学2年くらいの頃には苦痛だった。気を引きたいが故の言動だろうと分かっているからこそ、逆効果な其れに居た堪れない気持ちにも成った。其れで絆される程、私の脳は女性的な母性本能が強くは無い。
ぐだぐだとされるより、結論をズバッと言って貰えた方が、靡くタイプだと過去から自覚しているのだ。
だから、私は目立ちたがりの探偵少年から離れて、その為に、もう一人の幼馴染みとも離れた。
そこで出会った友人は、ボーイッシュな女の子で、あの時の旅行が初対面であった一家の子だった。私達は必然的に仲良くなった。

新たな友人、世良真純とは、一緒に映画を観に行くとか、新しく出たミステリー小説について語り合ったり、服を買いにショッピングに行っては、アレが似合うだの似合わないだの、サイズが合わないとか、歳相応の事を一緒に楽しんでいた。私は中学から始めた柔道の練習をしていたけれど、彼女は截拳道と言う武道をしている。初めて聞いた其れは、日本では道場が少なくて、お母さんに習っているんだと言っていた。真純ちゃんのお母さんと言えば、あの金髪のカッコいい人だ。教えられるくらいに強いのかと驚いたけれど、真純ちゃんのお兄さんも強い人だったから、これはもう血筋なのだろう。私だって父と同じ柔道をしているのだから。

「蘭ちゃん、明日は新作のアクション映画を観に行かないか?」
「良いよ。丁度、部活休みの日だから、私も真純ちゃん誘って遊びに行きたかったの。」
「そうだったのか?へへ、誘って良かったよ!じゃあ、明日の9時に駅前で良いか?」
「うん。楽しみにしてるね!」
「ああ!じゃあ、また明日な。」
「はーい、また明日ね。」

中学2年の半ばの出来事だった。誘われるがままに次の日、電車に乗って映画を観に行ってランチして、その帰りの事だった。

「あれ?秀兄だ。」
「ああ、あの時のお兄さんよね?」
「そうだよ。でも、日本に来てた何て知らなかったな。」
「家族に連絡する間も無い何て忙しいのかしら?」
「だったら余計に声掛けて置かないと!次、いつ会えるか分かんないよな。」
そう駆けて行く真純ちゃんの背を、慌てて追えば、お兄さんの方が凄く焦っていた。やっぱり忙しいのだろう。
「もう、お邪魔して済みません。真純ちゃん!お兄さんビックリしてたじゃない。歩いて帰れない距離じゃあ無いんだから、それくらい付き合うのに。」
「でも2時間歩くのはしんどいだろ?」
「部活の走り込みに比べたら、徒歩なんて何とかなるわよ。」
「はは、仲良いんだ?」
「中学からの親友さ、そうだろ?」
「そうね。未だ一年半の付き合いとは思えないくらい、信頼してます。」
「へへ、未来の警察官に信頼されてるのか?照れるなあ。」
「もう、なれるか何て未だ分からないのに、何言ってるのよ。」
「へえ、警察官目指してるんだ?」
「はい、小さな頃からの夢なんです。」
「刑事ってやつ?」
「えっと、父は刑事でしたけど、別に拘りは無いんです。この国を、色んな人達を護る事に少しでも良いから、貢献したいんです。」
「偉いなあ。よし、まだ戻って来ないな。ちょっと、コレ教えてやるよ。」
「ギターか?」
「ベースって言うんだ。コレがあった方がバンドってのは良い感じになる。」
そう言って、そのお兄さんはベースをちょっとだけ教えてくれた。