Merope Gaunt は覚悟している。

有り得ねえ、そう思った。
父親は煙草みたいな名前だし兄は薬物の名前だし、私の名前はギリシャ神話のメロぺーと同じ。挙げ句、ファミリーネームは荒れ果てたとか窶れたって意味じゃないか。それだけならまあ、そんな文化の場所か?と思うだけで済んだ。だが、この一家はオカシイ。蛇の言葉が聞こえるし、兄も父も家じゃあ蛇語で話す。お陰で私が最初に話したのは蛇語だった。普通にイギリス英語圏だと分かるが、それをわざわざ蛇語で話している変人しか居ない。私が生まれてしばらくは実母が居たから未だマシだった。私の面倒は母が見てくれるから。その母は体が丈夫じゃ無いらしいのは分かっていた。けれど母の死因は父と兄だった。父と母は従兄妹だったらしいが、その両親同士もまた同じ様に親族だったらしい。ああ、何て近親婚の連続。凄まじい感情の起伏−−−特に怒りが抑えられない−−−を見せる兄と父。母を死に追いやったのは父と兄の非常に激しい癇癪だった。この世界には魔法が有る。それは感情に左右されるらしいのだ。
このままでは私も殺される。そう確信した。時代を見ても女の地位は低そうで、私は美人とは言えない。
中々、魔法を使えない私を父は「汚らしいスクイブめ!」と罵った。魔法が殆ど発動しないのはスクイブと言うらしい。ほぼ手作業で家事をした。しなければ魔法で折檻される。4歳くらいで母が死んでから、ずっとそう過ごして来た。
父が言うには、純血を保つ事が大切で、サラザール・スリザリンの血を絶やさぬ様に薄めぬ様にして来たらしい。それは失敗だと思うけど、言わない方が私の身の安全に繋がる。家には誰も読んでいないらしい魔術書が埃まみれで棚の奥に、幾つか積まれていた。家事の合間をぬってこっそりと読んでは、調子の良い時に魔法の練習も繰り返した。ほんの少しの魔力でも行えるポーション調合もこっそり行った。

そうやって過ごしていた私の楽しみは、同じ村に住む金持ちな一家の一人息子トム・リドルと言うイケメンを、こっそり鑑賞する事だった。
こんな見窄らしいなりで、イケメンの前に行くには勇気が要る。余程、あの本で読んだアモルテンシアが有れば別だけれどね。アッシュワインダーの卵は凍らせて隠してあるけれど、これは隙を見て逃げ出せた時に売り払えば少しは生活費の足しになるだろうと取ってあるだけだ。
そうだったのに何とまあ、凄い勘違いを働かせて兄がトム・リドルを呪って蕁麻疹だらけにしてしまった。どうしたものかと思っていたら、魔法省から調査が入った。そこで兄の発言が父をガチギレさせて私に攻撃の矛先が向かって来て、逃げようとしたら、そこはさすがの魔法省の役人。ちゃんと阻んでくれた。
何だかんだと兄と父は捕まってアズカバンと言う監獄に入るらしい。魔法省からの役人さん達に、心からのお礼を言ってサッサと出て行こうと思い、急いで計画を練った。
結婚するから出ていくことにしよう。直ぐに別れたって構わない。どうせなら自分の子供が欲しい。良し決めた。
先ずはアモルテンシアを調合する。そしたらインペリオで、この辺り一のイケメンくんであるトム・リドルに飲ませて、結婚する。ロンドンあたりで暮らし、子供が出来たら、解放してあげれば良い。そしたらちょっと寂れた土地で安いボロ屋を購入出来るように、アッシュワインダーの卵や魔法薬の材料を売り捌いて、貯金しておく。子供が生まれる少し前には引っ越して置きたい。それから、家を魔法で改築してしまえば良い。ハーブ等を育てながら細々と子供と暮らすのだ。大変だろうけれど、今よりずっと良いに決まっている。

***

計画はとても上手く行った。
私はマグルの多い町で−−−この方が兄も父も寄り付かないだろう−−−土地はまあまあ広めだけれど、建っているのはボロ屋と言う理想の土地に住み、息子はスクスク育ってくれている。