あれから数日イギリスに滞在し、日本へ戻った私はセブルスからの手紙を心待ちにして過ごした。あれから1か月が経ち、鬱々とした天気が続いている。そう簡単には手紙も送れないだろうから、気長に待とうと思っていた。
けれどさすがに夏休みに入って、3分の1が過ぎた頃、8月の上旬。もう諦めつつあった。宿題はとっくに終えて、そろそろ次のフィールドワークへ向かう予定だ。今度もイギリスなのは、会えるかも知れないと思っての決定だった。
「名前さん、お手紙が届いておりますよ。」
家政婦の春子さんがエアメールを持ってきてくれた。夏休みに入ってこれで3通目。今までに各地で出会い文通友達となった人たちからのエアメールだろう。
「有り難う、春子さん。」
受け取り裏返して息をのんだ。
Severus Snapeと綺麗なスラリとした筆記体が並んでいた。待ちに待ったエアメールだった。
−−−やった!本当に送ってくれた!
はやる気持ちを抑えて自室へ戻り、ペーパーナイフで封筒を丁寧に開け、便箋のディアー ナマエ・ミョウジから始まる宛名を指で撫でた。自然と笑みが浮かぶのが自分でも分かった。
−−−Dear ですって。親愛なる、なんて、ふふ…嬉しい。
宛名だけでベッドの上でジタバタしたくなる衝動を抑え、ゆっくり読み進めた。
手紙を出すのが遅くなってすまないと言う謝罪、色んなハーブの事、次のフィールドワークが夏休み(8月中)ならば案内したい森が有る事、夏休みに次期学年の買い物に行くタイミングに切手を買った事、追伸には確かに切手代はそれなりにする事、そういう内容だった。返事を書こう。次のフィールドワークは10日後から1週間なのだから。
手紙を書いて、宛名を封筒に記す。
Spinner's End, Cokeworth, Midlands, England, Great Britain
Severus Snape
自分の癖のある文字が書いた彼の名前と彼の生家の住所。綴りに間違いが無いか何度も確かめて便箋を封筒に入れて封をする。
「春子さん、ちょっと郵便局へ行って来ます!」
「お気をつけて、昼食までにはお戻り下さいね!」
「もちろんよ。」
郵便局へ歩く事すら楽しかった。
封筒を計ってもらって、その分の切手代を払って、送ってもらう。一つ一つが宝物のように感じた。
当然、イギリスへ向かうまでの10日間は待ち遠しくて長く感じた。そのフィールドワークに付き合ってくれる母(ついて来てくれるだけ、有り難い。一人きりでは送り出してもらえないから。)にも、いつもの様に報告しておけば、一緒に居られる。
毎日が楽しみで、今までに集めていたイギリスでのハーブ等の写真やスケッチ、専門書や洋書を開いたり、現地の年配者に直接聞いて調べたレポートをファイルに入れていった。
前日には既に旅の準備を済ませて、後は向かうだけになり、興奮醒めぬままにベッドに入り何とか眠りについた。