私の世界は… 4
オクタヴィネルの寮長と、その幼馴染み達も色褪せた黄色いベストを着た監督生の歌声に柱の影から聞き入っていた。

彼等も海の中では、陸上よりも鼻が利く。リーチ兄弟の話をアズールは聞いて観察し、女の子だと確信していた。だから、住処を奪う何て事を画作し、実際に一時的とは言えど宿無しに追い込んだせめてもの償いにとバイト代は上げたし、少し優しくしていた。アキが良く働く為に、元からバイト代は高めではあったのだけれど。
海の中は女も強い。だから、身体が小さくても果敢にオーバーブロットしたアズールやジャミルに挑む姿も、レオナ達をを作戦に引き摺り込んだ手腕からも、大した人間だと認めていた。アキが女性だと言うことも、オクタヴィネルの寮生には共有されていた。
人魚にとって、海で靡く髪と美しい歌声は、とても魅力的だけれど、何より母と言う存在は、命を生み出せる母となり得る女性は特別だった。

そんな美しい歌声の女の子が、その身を担保に身売りを覚悟している事に彼等はショックを受けていた。
今は未だモストロ・ラウンジでのバイトがあるけれど、もし卒業後は?


ーーーいっそ海の底で、ずっと……。


***


隠れて聞いていた彼らは、歪んだツイステッド御伽の世界ワンダーランドのヴィランズの性質が強い男達ではあったが、やはり御伽の世界ワンダーランドに生まれ育った男でも在った。それ故に、女の子を大切にするのは当然だと思っている。そう言う教育をされ、そう言うお話しで育っているから。
愛は何ものにも打ち勝つ、最強の魔法で、愛する者同士のキスは奇跡を起こして当然な世界で、女の子は皆、誰かのプリンセスで、男の子は皆、誰かのプリンス。そう男女共に躾けられている。

だから、此処で女の子として自由に、ありのままに振る舞うのだと、輝くのだと歌い上げたアキは、この世界のことわりに組み込まれ、本人の知らぬ内に、誰かのプリンセスに成る素地が出来ていた。


***


「おはよう、ジャック」
「ああ、おはようアキ。鞄持つから」
「え?良いの?ありがとう、ジャック」
「気にするな。やっぱりお前、昨日より綺麗にしてるな」
「ふふ、ありがとう!エースもデュースも気付かないからジャックが気付いてくれて良かった!」
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